～宇宙の神秘編～ ページ6

「なんでしょう？わたくしがどのような格好で競技に挑もうとリーダーには関係ありません。誰にもわたくしの自由を拘束する権利は無いのです」
「…オモチャオさん、彼女を連れて行ってください。このままでは宇宙人さんが危険です」

犯罪のにおいがぷんぷんするピンクを、応援団権審判員のオモチャオたちが三人がかりで取り押さえる。

「なッ、何をするのです！離しなさい！離れなさい！誰にもわたくしの作戦は邪魔させません！」「
「ダメチャオ、危険チャオ～！至急増援を頼むチャオ～！」

すぐにやってきた増援部隊、ざっと二十匹ほどのオモチャオ総動員でピンクを拘束し、レース会場外へ連れて行った。

「ふぅ、コレでまたひとつ、我らチャオレンジャーの活躍により卑劣な誘拐事件が未然に防がれたわけだ！」
「そのまえにご自分の部下が危うく誘拐の現行犯で逮捕される所だった事に問題があるのでは？」
「はっはっは！正義の味方だって人の子だ！出来心というものがあるだろう！」
「出来心で誘拐なんてされてたまるかよ。正義の味方以前に人として問題があるだろうが」
「おぉグリーン隊員、君も少しは正義の味方チャオレンジャーの一員としての自覚が芽生え初めて来たようだな！うんうん、私は今部下の成長をこの身で感じる事ができ、大変嬉しく思っている！」
「オマエが常識外れなだけだ。…俺は一刻も早くこんなヘンタイ集団から抜け出して、誰か優しい人の家に飼われていきたいのに…。何で俺には誰からもオファーが来ないんだ！」
「そうですねぇ…。まぁ気長に待ちましょう。そのうちきっといい知らせが届きますよ」
「そうだな存分に待つがいい！はぁーっはっはっはっは！」

スタート直前だというのに盛大にトリオ漫才を展開する三人衆。
無表情で待ち続ける謎の生物（自称宇宙人）がコレは止めない限り終わらないと判断した。

「そこのトウガラシと青リンゴとピーマン。さっさと競技を開始させろ」
「やぁ失敬失敬。いいだろう、始めようじゃないか！」
「ちなみに、青リンゴは緑色をしてますよ」

今度こそ各々がスタートラインにつく。
レッドはライン上で腕組みをして不気味な笑顔を浮かべ、ブルーは左足を前に出し前傾姿勢でスタートの合図を待つ。
グリーンはクラウチングスタートの構えを見せ、謎の生物（自称宇宙人）は直立不動で仁王立ちしている。
イエローは、ライン上で大の字になり立派な鼻ちょうちんをしぼませたり膨らませたりする事に勤しんでいる。

「では用意はいいチャオか～？スタートするチャオよ～？よ～い…」

スパンッ。

オモチャおがオモチャの拳銃の引き金を引くと同時に、乾いた破裂音が響き渡った。
それと同時に、レッド、ブルー、グリーンの三人は一斉に駆け出す。が、謎の生物（自称宇宙人）はスタート地点を動かなかった。イエローは寝てた。
開始早々、トップに立ったのはグリーン。レッド、ブルーを約二メートルほど引き離し、快走する。

「なんだ、あいつは？走る気あんのか？」

走りながら後ろを確認する余裕もある。ビックリ箱のトラップは軽がる通過し、崖のぼりゾーンまであっという間にやってきた。
グリーンは力はあるが、飛ぶことに関しては苦手としているためどうしても崖の下、川に近い所に張り付いてしまう。
そのため、飛ぶことは得意としているレッドとブルーに簡単に追いつかれてしまった。
あくまで謎の生物（自称宇宙人）対チャオレンジャーの戦いなので、チャオレンジャー同士で競う必要は全く無いが、彼らが連係プレイなど出来るはず無く、またする気もさらさら無い。

「てめっ、邪魔だ！俺の道をふさぐな！」
「はっはっは！頭脳プレイというものだよ明智君！そらそら、私の攻撃に耐えられるかね！？」
「てんめっ、蹴るのは反則…いてっ！」

全くどうしようもありませんねぇ。ブルーは、レッドがグリーンの頭を上からゲシゲシ蹴っているのを横目で見ながら、一人離れたやしの木ゾーンに到達した。
すでに当初の目的を見失っている二人もすぐに上ってきた。

「てめー！俺の邪魔をするのもいい加減にしやがれ！」
「何を言う！ライオンは自分の子を崖に突き落とすのだという！私は君によりいっそうの精神的成長を期待するが故に…」
「突き落とす気だったのかキサマは！」

はーっ、はーっと息を荒くして怒り狂うグリーン。
そういえば「ヤツ」はどうしたんだ？ふと後ろを向いてみる。そこで彼は、見てしまった。
さっき自分が登ってきた崖に、レインボーブリッジが架かっている。

…いや違う。レインボーブリッジではない。
それは、ヤツの。謎の生物（自称宇宙人）の「足」だった。
ヤツの足が、異様に伸びている。なんと、ビックリ箱の地点から、やしの木の地点まで伸びていた。そしてその中心に、体がある。
左足がビックリ箱の手前の地面を踏みしめていて、右足がグリーンのすぐ右側の地面を踏みしめている。ちょっと触ってみた。夢じゃない。