~宇宙の神秘編~ ページ5

「…それもアリかもしれんが、我らは出来る限り穏便に任務を遂行したい。穏便にこの星を征服するためには、人民に理解を求めるのが一番だ。この星は我らのモノだということを。普通に交渉しても到底納得しないだろう。だから我らは、人民が必ず納得する「証」を。人民がひれ伏す権力の証を手に入れるためココへやってきた」
「すまんな、正直さすがのこの私でもついていけなかった。もう一度説明願いたい」
「いいだろう」

突然マジカルバナナ的説明を展開し始めた謎の生物(自称宇宙人)。
即座にレッドは再度の説明を要求し、謎の生物(自称宇宙人)は即座にそれに答えた。
幾度か説明を聞いているうちに、隊員達は彼らの目的をなんとなく理解した。要するに自分達の力を誇示する証が欲しいらしい。

「…で?その証とはどのようなものと考えているのかね君たちは」
「我らの欲する証…それはすなわち、この競争競技で頂点に立つことによって得られるメダルの事である」
「あーすまんな。もう一度説明求む」
「僕からもお願いします」
「俺からも頼む」
「もっと声を聞かせてください♪」

聞き返さずにはいられない。謎の生物(自称宇宙人)から出た言葉は、それはもうあっけないものだった。

「少しは一度の説明で理解するという努力をしろ、このはだけもの。…うん?なまらものだったか?」
「…『なまけもの』のことかね?」
「そうそれだ、このなまけもの。何度も説明するこっちの身にもなれ。とにかく、我らはこの競技を勝ち抜いていった者に与えられるメダルを入手するためにやってきた。貴様らに勝負を挑む。ありがたく受け取れ」

言語プログラム自体がまだ未完成なのでは。謎の生物(自称宇宙人)の言葉を聴いていてレッド以下チャオレンジャーの隊員はそう思った。

「仕方ない、受けてたってやろうでは無いか。だがその前にひとつ言っておくぞ。どこでそんなデマ情報を仕入れたのかは知らんが、チャレンジレース勝者に贈られるメダルには、恐らく君達が望むような、つまり権力誇示できるような能力は備わってはおらんぞ!」
「なに?」
「確かに最後まで勝ち抜けばその証としてメダルが贈られる!だが!そのメダルははっきり言ってただの飾りだ!希少価値も皆無!しかも一度つけると激しい苦痛を伴わないと外れないという呪いつき!そんなものが星を支配できるほどの権力を誇示するための代物になりうると思うのかね!?」
「我らの情報網は正確無比だ。間違いなど無い」
「宇宙人さん。僕らのリーダーが珍しく正論を話しているのです。コレはもう大変貴重な事ですよ?こんな時ぐらいリーダーを信じてあげてください」
「そのような虚言には惑わされない。我らはメダルを手中に収め、この星をも手中に収める」
「だぁーかぁーらー。無理だって言ってんだろ?ただのメダルなの。た・だ・の。恥かく前に帰ったほうがいいぜ?」
「だまれ緑黄色野菜」
「な、なにぃ!?」
「あぁ♪怒っている姿も可愛いですわ♪」

いつもならこの辺で、終わりなき不毛な言い争いに終止符を打つためただ一言冷徹に「その辺で終わりにしていただけないかしら?」と言い放ったかもしれない。
しかし残念ながら今の彼女には自我が欠けており、というかもはや完全崩壊してしまっており、冷静な判断を下せるいつもの彼女はどこか遠くに追いやられてしまっていた。
それからしばらく、謎の生物(自称宇宙人)とぎゃーすか騒ぎ続けた。しかし、謎の生物(自称宇宙人)は決して納得してくれる事は無かった。

「ふぅ…。しかたありません、とっととレースを終わらせましょう。レースが終わり、メダルを実際に手にとって見ればわかってくれるでしょう。自分達の情報が間違っていた事に。まぁそれだと僕らがレースに負けてしまうということになりますが、別に命をとられるわけでもありませんし、構わないでしょう。むしろ僕はさっさと負けて、余った時間を昼寝にでもまわしたいですね」
「フン、まぁいいだろう。しかし我がプライドにかけて、勝負をするからには全力を出させてもらうからな!私はたとえボテボテの確実にアウトな打球でも一塁ベースまでは全力疾走することが大事だと考える!」
「…いや、それじゃダメだろ!俺達が負けるコト前提みてーじゃねーか!」
「当然だ。我に勝つなど不可能である。貴様らは全身全霊を持ってたたき上げる」
「『叩き潰す』の間違いですか?」
「そうそれだ」

かくしてレースは行われる事になった。
各々、スタートラインにつく。みんなそれぞれのスタートの構えを見せるが、その中に明らかに不自然な者が一人いた。

「…ピンク君、君は一体どこにいく気かね?そして何をする気かね?街中だったら即座に職務質問だぞ」

そういわれたピンクは、右手には何故か虫取りアミ、左手には何故か催眠スプレーと催涙スプレーを器用に二つ持っており、いつのまにか被っていた不自然な麦わら帽子の中には、クロロフォルムを吸わせたハンカチが忍ばせてあった。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第113号
ページ番号
5 / 22
この作品について
タイトル
チビッコ戦隊チャオレンジャー!~宇宙の神秘編~
作者
宏(hiro改,ヒロアキ)
初回掲載
週刊チャオ第113号
最終掲載
週刊チャオ第118号
連載期間
約1ヵ月5日