(中編)ページ4
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「では早速練習開始だ!まずはバッティングからだ!」
レッドはまず、グリーンにバットを持たせて岩壁を背に立たせる。
「今から私がバッティングピッチャーを努めてやる。私の投げるボールを打ち返してみるがいい!まー当たればの話だがなはーっはっはっは!」
ボールを持った右手をグリーンに突きつけ、コレでもかと言うぐらい挑発。
頭にきたグリーンは、
「あァ!?上等だコノヤロー!」
と叫びながら、ぐるんぐるんとバットを振り回す。ちなみに右打者。
「全く、野球とは野蛮なスポーツなのですわね」
「いえ、あの方達だけですよ」
ピンクの抱いた誤解を、ブルーはやんわりと訂正した。
「いくぞグリーン隊員!ぬぅりゃあ!」
無駄に奇声を発しながらワインドアップからのオーバースローで投じた一球は、山なりの軌道を描いたヘロヘロ球――かと思いきや、その場の誰もが予想しなかった、意外といい球。
「おりゃっ!」
コチラも無駄に気合を入れてバットを振ったが、ボールにはかすりもせずに空を切った。その勢いで、グリーンはその場で一回転してコケた。
グリーンをあざ笑うかのようにバットの攻撃をかいくぐったボールは、後ろの岩壁にガツンと当たって跳ね返った。
そして、それを見届けたレッドは、ホントにあざ笑った。
「はっははのはーだ!情けないなグリーン君!キミの実力はその程度かね!」
その後、起き上がったグリーンは地面をバットでガツンガツン叩きながら再び構え直す。
しかし気合むなしく、再びレッドの投じたど真ん中ストレートに無残にも空振りを喫するのであった。
「くそったれー!」
ぶるるん。
「こなくそっ!」
ぶるるん。
「なんで、」
ぶるるん。
「だァー!」
るん。
「まだまだ修行が足りないな!そろそろ交代したまえ。でないとグリーン隊員がマントルまで穴を掘ってしまうからな!」
面白いように空振りの数を重ねたグリーンは、すごすごと退散し、ブルーにバットを手渡した。
先ほどまでグリーンがいた場所に出来ている小さな穴ぼこは、彼の空振りによる産物である。
「お手柔らかにお願いしますよリーダー。それにしても意外といい球投げるんですね、ミジンコの体積程度に感心しました」
一度軽く素振りをしてから、レッドに向かって構えるブルー。ちなみに右打者。
「行くぞブルー隊員!でありゃあ!」
そろそろ声かどうかも怪しくなってきた奇声(一応)を発しながら、ブルーに対して全力投球。
ブルーはボールをよく引き付けてから、コンパクトにスイング。結果、
ぼてっ。
当たりはしたが、バットはボールの上っ面を叩いてぼてぼてのピッチャーゴロ。
レッドの元へ勢い無く転がったボールは、3バウンドしてからレッドのグラブへ収まった。
「まーったく、なってないな皆の衆!こんな状態ではやつらに勝てないぞ!しゃっきりしたまえしゃっきり!」
「…全くですわ」
痺れの残る手をぶらぶらさせていたブルーは、
「え?」
と耳を疑った。
「ブルーさん、ソレをお貸しなさい」
「え?あ、はい」
つかつかとブルーの元へ歩み寄り、バットを受け取った。ブルーはそそくさと退散。
左手一本でバットを持ち、ソレをレッドに向かって突きつける。
「一球、投げてくださる?」
突きつけたバットを、右手を添えて円を描くようにして構えた。
レッドの目に映るのは――鋭い眼光でコチラを睨みつけ、威風堂々とバットを構える、ピンク隊員だった。