(中編)ページ2

「さーて!では皆の衆、練習を…」
「ちょっと待ってください」
「いい加減にしてくれたまえよブルー隊員!練習の妨げになるような不安要素はすべて排除したはずだ!」
「不安という不安を凝縮したようなチームのような気がしますが。いえ、そんなことよりですね…。ポジションを決めませんか?守備位置を決めたほうが練習もしやすいでしょう」
「それならすでに決めてある!」

そういってレッドは一枚の紙切れを取り出す。そして急いで何かを書き始めた。
数秒後、レッドが見せ付けた紙には、金魚のフンみたいな字でこう書いてあった。

『4番 ピッチャー レッド』

コレだけ。
それ以外は、空白が紙を支配していた。

「とりあえずそれだけは決めておいた!後は適当に決めておいてくれたまえ!言っておくが、私のポジション&打順は絶対固定だからな!」

そしてレッドは、決まったら教えてくれたまえ、と言い残し、少し離れた場所で無闇に素振りを始めた。

「…どうやら投打ともに肝心要となるポジションを、自己主張の塊のような方に任せるコトになってしまいましたが…。異論は?」
「不安ではあるが、まぁ誰がやっても大して変んねぇだろうし、いいんじゃねぇの?」
「打たれまくってコールド負けになればいいのですわ、そうすれば早く終わります」
「えぇと、ABCDさん達は?何か意見はありますか?」

答えたのはAだった。

「ポジションについての異論はありませんが、僕らの呼称がアルファベットというところには声を大にして異論を唱えさせていただきます」
「すみません。では名前を教えていただけますか?」

ニュートラルのみなさんは、順に自己紹介をしていった。

A「アラン・マクレガーです」
B「バレット・ウェイクフィールドです」
C「キャメロン・ベルナルドです」
D「デューク・リードウィッヒです」

「…申し訳ありません、アルファベットで呼ばせていただけないでしょうか」

「…」
「…」
「…」
「…」

呼称、ABCDに決定。



「…ふぅ、少し落ち着いたところで、とりあえずポジション、打順を決めましょう。打順に関しては、頭をひねって考えたところで無作為に選んだ場合と大差ないと思いますが。ポジションに関しても同様のコトが言えるかも知れませんね」
「ポジションって何があるんだ?ピッチャーとキャッチャーしか知らないぞ俺は」
「そもそもヤキュウとはいったいなんですの?棒と球を使用する競技だと言うコトぐらいは風のうわさで聞いたコトがありますが」
「…訂正します、まずは基本的なルールの確認から始めましょう。幸いリーダーは向こうの方で球と戯れていますから、ゆっくり講座が開けそうです」

と、いうわけで。
とりあえず基本的な野球のルールを教え始めるブルー隊員。
受講生たちが一通り理解し終えたところで、今度は役割の決定に入る。

いったい何から決めてよいかと頭を悩ませるブルーだったが、とりあえず順番に聞いていくコトにした。

「えーと、じゃあキャッチャーを希望する人、挙手をお願いします」

その問いに、挙手したものは一人もいなかった。

「ゼロですか…。じゃあ飛ばして、次は…」
「お待ちなさい」

キャッチャー希望ではなく、発言権を求めての挙手をしたのは、ピンク隊員だった。

「なんですか、ピンクさん」
「わたくしは疲れるコトや面倒なコトが大嫌いです。このような遊びに付き合う理由も義務も全く無いと断言させていただきますが、しかし先方との約束がすでに交わされている以上、ココでの参加拒否は敵前逃亡と同意であり、それが実践された場合わたくしのプライドに大きな傷跡を残すコトになります。よってわたくしは今回のお遊びにも一応手を貸すつもりでいます」
「ありがとうございます」
「ですが、先ほども言ったとおり、わたくしは疲れるコトが大嫌いです。よってわたくしは、一番疲労せずにすむポジションを強く強く希望します」
「お気持ちは理解できますし、出来る限りはその意向を汲みたいとは思いますがね、ピンクさん。前提の前提、大前提としてですね、スポーツとは総じて疲れるモノなのですよ。ですので、全く疲れないポジションは無いというコトはご理解頂きたいなと思うのですが」
「野球とは9人で守るのでしょう?わたくし以外の方が運動量を増やせばいいのですわ」
「さいですか」

盛大に嘆息しながら、ブルーは思った。野球、出来るかなぁ。

「まぁ出来るかどうかはやってみればわかるコトです。そのためには、とりあえずでも何でも決めるべきコトを決めましょう。どうせあってないようなモノです」

自分に言い聞かせるようにして、ブルーは一度深呼吸してから、いったいどのポジションが一番運動量が少ないかを考えはじめ、十数秒後に導き出した結論は、

「では、ファーストはどうです?」

だった。

「そこが一番楽なポジションですの?」
「強いて言えば、ですけど」
「ではそこにします」
「さいですか」

ブルーは、先ほどレッドがよこした紙切れの隅のほうに、小さく『ファースト ピンク』と書き込んだ。

「じゃあ次は…。うーん、順番に聞くのも面倒ですし、皆さん希望のポジションをこの紙に書いてください。名前も忘れずにお願いします」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第195号
ページ番号
9 / 12
この作品について
タイトル
チビッコ戦隊チャオレンジャー!~VSおねしょ戦隊オモレンジャー!編~
作者
宏(hiro改,ヒロアキ)
初回掲載
週刊チャオ第194号
最終掲載
週刊チャオ第195号
連載期間
約8日