(中編)ページ1
「さーて!まずは何からはじめるかね!」
「しかたないですね…」
「また面倒なコトになっちまったぜ…」
「この苛立ちを私はどこにぶつければよいのでしょう。あぁ、考えても考えても一人しか思い浮かびませんわ」
「Zzz・・・」
心底楽しそうに話すレッドに、ブルーはうんざりし、グリーンはげんなりし、ピンクは殺気を募らせた。イエローは寝てた。
「えーと…。とりあえずですね、リーダー」
「何だブルー隊員!」
「野球は5人では出来ませんよ?」
今この場にいるのは。当然我らがチャオレンジャーのみ。その隊員数はワンツースリーフォーファイブ。5人なのであった。
そして野球と言うスポーツは、1チーム9人いないと出来ないスポーツなのであった。
「そのコトならすでに手を打ってある!というか、コレから打つ!」
砂埃を巻き上げレッドがダッシュで向かった先は、またもやステーションスクエアガーデンへのワープ装置。
数分後レッドが戻ってきたとき、傍らには4匹のチャオを引き連れていた。
「…誰ですか、その方たちは」
「補充要員だ!ステーションスクエアガーデンで暇そうなのを4人連れてきた!」
レッドの後ろに並んでいるチャオは、左からオヨギタイプ、ヒコウタイプ、ハシリタイプ、チカラタイプのチャオで、皆ニュートラルだった。
「突然、」
「無理やりつれてきて、」
「いったい、」
「なんなんですか?」
左から順番に喋るニュートラルの皆さん。
「よくぞ聞いてくれた!キミたちはたった今から、チャオレンジャー臨時特別隊員として、一週間の間我々とともに爽やか青春の汗を流してもらう!」
天に輝く太陽でさえも跪きそうなほどに神々しく偉そうに言い放つレッド。
いきなりそんなコトを言われた4匹のチャオたちのリアクションは、もちろん。
「…はぁ?」
だった。
…
当然今の説明で4人が状況を理解できるはずも無く、理解してもらうために補足説明をする役割はブルーは背負わされた。
とはいっても、その内容は補足というよりは、お願いだった。
説明しようにも、野球の数合わせに協力してくれませんかと言うしかないのだ。
理不尽な思いに駆られながらもブルーが頭を下げた結果、
「まぁ、」
「別に、」
「いいです、」
「けど…」
なんとなーく、全員が協力してくれるコトになった。レッドが彼らを連れて来た際、『暇そうなのを選んだ』と言っていたが、それは当たっていたようだ。
「よーしきまりだ!ところでキミたちの名前はー…えぇい面倒だ、左から順にA、B、C、Dでいいな!」
ABCD「ひでぇ」
「よーぅし!コレでメンバーはそろった!後は試合までひたすら練習……」
「待ってくださいリーダー」
早速バットとボールを拾い上げ、ノックを始める構えを見せたレッドに、ブルーが待ったをかける。
「なーんだねブルー隊員!?まだ何か不安要素があるのかね?我らには1秒たりとも遊んでいる暇は無いのだぞ!」
「あの方はどうしましょう?」
そういってブルーが指差した『あの方』とは、
「Zzz・・・」
突如地球の自転が逆回転になったとしても、右に動いていた扇風機の首が左に動き出したぐらいにしか思わない、いやむしろそのコトにすら気づかずにレム睡眠状態を維持し続けるであろう、
「Zzz・・・」
イエロー隊員だった。
「たしかに数だけで言えば、9人そろいました。しかしですね、正直イエローさんを試合に出すとなりますと、僕らは負う必要の無いハンデを背負うコトになりますよ。それも相当大きな」
「何が言いたいのだブルー隊員?」
「つまり、イエローさんの替わりに誰かもう一人連れてきて頂きたいのです。ぶっちゃけ、ネコのほうが何万倍も頼りになります」
「それは許さんぞ!われらは5人そろっていてこそのチャオレンジャー!一人でも欠けてはいかんのだ!」
「その方針の変更を頑なに拒否すると言うのでしたら、一週間後の試合で全員が120%の力を出しても確実に敗北すると、とりあえず忠告はしておきます。しましたよ?」
「ならば150%ぐらい出せばいいだろう!えぇい、出血大サービスで200%ぐらい出したまえ!」
正直、200%だしてもどうなんだろう。
その思いを声に出そうとして出さなかったのは、レッドとイエローをのぞく、その場にいる全員だった。