(前編)ページ4
「まてまてまて!突然現れたと思ったら私の手柄を横取りしおって!なんなんだねキミたちは!」
そのままガーデンを出ようとする、オモレンジャーなる集団にレッドは詰め寄った。
決め台詞を遮られ、出番は奪われ、手柄も横取りされたチャオレンジャー。
レッドは今、腹立たしい気持ちでいっぱいだった。
「チャオ?さっきの紹介を聞いてなかったチャオか?仕方ないチャオ、もう一度やるチャオ。世界の平和を守るため!」
先ほどの決め台詞&ポーズを再び始めようとするオモチャオ(赤)に、レッドが待ったをかける。
「ちがーう!キミらがオモレンジャーとかいう得体の知れない集団なのはわかった!私が言いたいのは、その得体の知れない集団が我らチャオレンジャーの邪魔をするとは何事かと言うコトなのだ!」
ずんずんと歩み寄るレッドにカチンときたオモチャオ(赤)は、レッドに負けじとずんずんと前進する。
「得体の知れない集団とは何だチャオ!私たちは世界の平和を守るために結成されたスーパーオモチャオの集団、」
オモチャオ(赤)は、ビシッ、と言い放った。
「おねしょ戦隊オモレンジャーだチャオ!」
…
――翌日。
―ミスティックルーインガーデン―
「まーったく!何がオモレンジャーだ!子供向け戦隊モノじゃあるまし、レンジャーつければいいと言うものではないぞ!」
「お言葉ですがリーダー。貴方が率いる、そして不本意ながら僕らが所属している団体の名前はなんというのでしたっけね」
「我らはいいのだ!むしろ我らチャオレンジャーのみに与えられた特権なのである!」
我らがリーダーは、朝から湯気を噴出しておかんむり。その理由は、朝の新聞の一面にあった。
『オモレンジャー、またお手柄!チャオガーデン乱入男を成敗!』
そこから先を読まずして、レッドは新聞を派手な音を立てて切り裂いてしまった。レッドの足元には、切り裂かれた新聞が落ちている。
本来ならそこに写っているのは自分だったはずなのに。そう思うとまたムカムカしてきた。せめてものウサ晴らしに、レッドはオモレンジャーの写真が写っている新聞をゲシゲシと踏みつけた。
手柄を横取りされたコトに対しても怒っているのだが、何より気に食わないのは、
「正義の味方は、我々だけで十分なのである!むしろ我々以外にあってはならないのである!」
突如現れたオモレンジャーなる集団が、自分たちにモロかぶりなコト。
「まぁ、似ているのは団体名称と、メンバーの体の色ぐらいのようですが」
そういいながらブルーは、無残に真っ二つにされた新聞紙の片方を拾い上げる。
そこには『オモレンジャー、お手柄の数々』と銘打たれて、オモレンジャーが今まで解決してきた事件の数々が挙げられていた。
「泥棒を捕まえたり、麻薬取引のルートを潰したり。さらには災害被災地に赴いて人々を助けたり。すばらしいですね、正義の味方の鑑です」
「気に、食わん!」
ブルーから2分の1の大きさになった新聞をひったくり、さらにそれを引き裂き、引き裂き、もっと引き裂き。
粉々になった新聞をくしゃくしゃに丸めて地面に叩きつけて足で踏みつけた後、ぐりぐりとタバコの火を消すようにねじりこむ。
レッドが足を上げたとき、新聞は元新聞になっていた。
「世界の平和を守るのは、そう!われらチャオレンジャーだ!どこの馬の骨ともわからんヘンタイ集団に正義の味方を名乗る資格は無い!」
「比べられた場合、1億人中1億人がヘンタイ集団は俺たちの方だって指差すぜ」
大きくあくびをしながらグリーンが言った。
「いいじゃねぇか、もう世界の平和はあいつらに任せようぜ。俺たちは引退だ、隠居だ、解散だ」
むしろ平和を乱していたのは自分たちのほうで、オモレンジャーに成敗されてもおかしくないのではないかと思ったが、グリーンは声には出さなかった。
しかしレッドは納得するはずも無く。
「こうなったら決闘だ!やつらに決闘を申し込み、コテンパンにのして、どちらが本当の正義の味方なのかを教えてやるのだ!行くぞ皆の衆!」
そういってレッドはワープ装置へダッシュ。その後ろ姿に、誰もついていかなかった。
「さて。なんだか嫌な予感がしてきたのは僕だけですかね」
「厄介ごとを背負って戻ってきそうだな」
「オモレンジャーさんが軽く聞き流してくれるコトを祈るばかりですわ」
「Zzz・・・」
どうか面倒くさい展開になりませんように。ブルーとグリーンとピンクは切に願った。
が、しかし、数分後戻ってきたレッドは開口一番、三人の希望をぶち壊した。
「皆の衆!一週間後、やつらと野球の試合を行うぞ!」