(前編)ページ5
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「嫌な予感が当たってしまいました」
「まぁ、アイツ自体が厄介ごとそのものだからな」
「オモレンジャーさんを恨みますわ。えぇ、深く」
「Zzz・・・」
「なんだなんだそのローテンションは!もっとハイに行こうではないかハイに!」
調達先不明のバット、ボール、グラブをお手玉のようにジャグリングしながら、四人の周りをぐるぐる駆け回るレッド。
その光景を見てブルーは覚せい剤使用の疑惑を抱き、グリーンはシンナー吸引の疑惑を抱き、ピンクはマジックマッシュルーム摂取の疑惑を抱き、イエローは寝てた。
「リーダー。いやはや何と言いますか、いったい何を言っているんですかとしか言いようが無いので言わせて頂きます。いったい何を言っているんですか?」
「だから、一週間後やつらと決闘を行うのだよ!野球で!ルールはわかるか?単純明快だ!柵越えを放てば一点だ!」
「そのようなコトを聞いているのではありません。今の、わずか数分の間に何が起きたのか、可能な限り詳細にかつ簡潔に、僕らが納得する説明をお願いします」
「いいだろう!一度と言わず何度でも言ってやるからよく聞いておきたまえ!」
ジャグリングをやめ、腰に手を当ててふんぞり返って話し出すレッド。
空中に放り出されたバット、ボール、グラブがガツン、コツン、バスンと重力に従ってレッドの頭を強襲したが、まったく動じることは無く。
「とどのつまり、ステーションスクエアガーデンにいたオモレンジャーをとっ捕まえて決闘を申し込んだのだよ!どちらが本当の正義の味方なのかはっきりさせようじゃないか、とな!決闘の方法を問われた際、たまたま思いついた単語が野球だったから、決闘の方法が野球になったのだ!説明終わり!」
「簡潔にまとめようとしていただいた努力は認めますが、到底納得できる内容ではありません。言っておきますが、僕は参加しませんよ?」
「右に同じ」
「面倒なコトは嫌いですわ」
「Zzz・・・」
水と油みたいな見事なまでの協調性の無さをチャオレンジャーが発揮していたとき、ワープ装置の起動音が聞こえてきた。
それは、ステーションスクエアガーデンとミスティックルーインガーデンとを結ぶモノだった。
ワープ装置の光が収まったとき、出てきたのは――。
「お邪魔するチャオ。チャオレンジャーはどこにいるチャオ?」
――出てきたのは、昨日鮮やかに事件解決する様を見せ付けてくれた、おねしょ戦隊オモレンジャーの面々であった。
「でたな!正義の名を騙るおねしょ戦隊め!」
「ちゃんと最後まで言って欲しいチャオ。それじゃただのお子様集団チャオになっちゃうチャオ。そんなコトより」
トコトコと数歩歩いてきたのは、オモレンジャーのリーダー、オモレッド。
オモレッドはチャオレンジャーの面々の正面に立ち、言った。
「確認に来たチャオ。本当に勝負するチャオ?一週間後、野球で」
「あぁ、それについては…」
まだ結論が出ていません、とブルーが言おうとしたのだが、
「もちろんだ!せいぜい首を洗って待っているコトだ!一週間後、どちらが正義でどちらが悪なのか、はっきりさせてやろうではないか!」
レッドがそれを許さなかった。
「なんで野球の勝敗で善悪が決まっちゃうのかわからないチャオが、とにかくそっちがその気ならボクらも受けて立つチャオ!」
そういい残し、オモレンジャーは去っていってしまった。
「さぁコレで逃げられないぞ!我らは一週間後、天下分け目の決戦に挑むコトになったのだ!皆の衆、心を一つにしてやつらとの戦いで勝利を収めようではないか!」
その後しばらく、レッドに対する文句、非難、罵詈雑言が飛び交ったが、レッドは全て笑って聞き流した。
中編に続く!