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「とぼけるな!私は見たのだ!キサマが一心不乱に、大木に殴る蹴るの暴行を働いていたことを!」
「…たしかにさっきまで俺は…まぁ、木を蹴ってはいたが。それがどうしたんだ?」
「ついに認めたな怪盗二面相!キサマのバリエーションの少ない変装などすべてお見通しだ!ひっ捕らえてくれる!」
「落ち着いてくださいリーダー」

油断してるとすぐに暴走してしまう。壊れた電動自転車みたいですね。
そんなことを考えながらブルーはレッドを制止し、チャクロンに説明する。

「えぇとですね…。僕たちは今回、ある方から『夜中に妙な音がするので見てきてほしい』と言われてこの森に来たんです。そしてついさっき、その妙な音と思われる音を聞いてやってきたら、チャクロンさんがいたわけです」
「…その音というのは、もしかしてこれか?」

そう言いながらチャクロンは、チャオレンジャー達に右足を見せ付けた後、後ろの巨木に向かって蹴りを放つ。

ばしん。

「あ…」

ブルーとグリーンとピンクは、はっ、と気がついたように声を漏らす。レッドはまだ何かごちゃごちゃ言ってる。イエローは寝てる。
チャクロンは無言で、もう一度木を蹴る。

ばしん。

「…どうだ?」

チャオレンジャーのほうに向きなおしたチャクロンはブルーに尋ねた。

「…えぇ、コレです。この音です。なるほど、確かにチャクロンさんが犯人に違いはありませんね」

そういってブルーは肩をすくめた。
今度はグリーンがチャクロンに問う。

「でもよぉ…お前はこんなところで何をやってたんだ?」
「…勝ちたかったんだよ」

チャクロンの答えに、今度はブルーとグリーンとピンクがポヨをハテナマークにする。レッドはまだ何かごちゃごちゃ言ってる。イエローは寝てる。

「お前らに…いや、お前らだけじゃなくライトカオスにだって。俺は、チャオレースでお前らに勝ちたかったのさ」

チャクロンは続ける。

「俺は元々、ステーションスクエアでレースをしてた。その頃俺は向かうところ敵なしだった。負けたことはほとんどない。だから、ハンデもつけさせられた。それでも負けなかった」
「…」
「…」
「…」
「つまり!コーヒー牛乳におけるコーヒーと牛乳のベストな割合は……」
「Zzz・・・」
「物足りなくなった俺は、ステーションスクエアを後にしてシティエスケープに移った。そこに…お前らがいた」
「…」
「…」
「…」
「であるからして!歩行途中に犬のフンを踏んでしまった場合真っ先にすべき行動は……」
「Zzz・・・」
「ライトカオスの野郎も速かったが、お前らに負けたのは猛烈に悔しかった。だから、いつか負かしてやると思っていたんだが…」

ふぅー、とひとつ大きな息を吐き、その場に腰を下ろすチャクロン。

「お前らがシティエスケープから去ったと聞いてな。正直残念だったんだが…。そうか。ココにいるってことは、お前らミスティックルーインのガーデンに移ったのか」
「えぇ。移ったというより、飛ばされたと言うのが正解かもしれませんが…。チャクロンさんは、毎晩ココで?」
「あぁ。ライトカオスの野郎には悔しいがまだ勝てそうにないからな…。シティエスケープを抜け出して、ココでトレーニングしてたのさ。一番になるために、な」

再び立ち上がり、巨木に蹴りを入れるチャクロン。
ばしん、と言う音が響くと同時に上から葉っぱが数枚落ちてくる。その葉っぱを拾い上げ、

「ま、これが迷惑だったのなら謝るよ」



「皆の衆!いやご苦労だった!これで今回の任務は一件落着!それでは引き上げるとしようではないかはーっはっはっは!」
「こんなやつに負けたから悔しかったのさ」
「とてもよくわかりますわ、そのお気持ち」

ようやっと帰路につくことができるチャオレンジャー。
先頭を歩くのはレッドと、それに引きずられるイエロー。その後を3人+チャクロンが、先頭を歩くモノのやかましさにうんざりしながらついていく。

「…ん?」

怪訝な表情で立ち止まり、後ろを振り向いたのは、ブルーだった。

「…いま、誰か何か言いました?」
「…いえ?誰も何も言っていないと思いますけど…?」

ピンクは何も聞いていないという。
おかしいな、と思いつつ、再び歩を進めようとする。その時。

「おうっ!」

と、間抜けな声を上げてその場で転倒したのはグリーン隊員であった。

「いてて、何だ?」

石にでも躓いたか。自分をすっ転ばせた犯人を発見、可能ならブン投げてやろうと思い、起き上がって足元周辺を調べるグリーン隊員。

「ぎゃあああああああああ………」

彼の、断末魔のような悲鳴が轟いたのは、その直後だった。

「ど、どうしましたかグリーンさん?」

突如、この世の終わりのような叫び声を上げたグリーンの元へチャオレンジャー、そしてチャクロンが駆け寄る。
そして、次から次へと悲鳴を上げることになる。イエロー隊員は寝息を立てるだけだったが。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第164号
ページ番号
7 / 9
この作品について
タイトル
チビッコ戦隊チャオレンジャー!~ミステリアスミスティック編~
作者
宏(hiro改,ヒロアキ)
初回掲載
週刊チャオ第164号