ページ5

ブルー、いやレッド以外の隊員の願い空しく(一人はどうだか知らんが)ピロシはレッドを後押ししてしまうのだった。

「任せておきたまえ!チビッコ戦隊チャオレンジャー、ミスティックルーインでの初任務である!」
「あぁ、でも行くのなら気をつけたほうがいいよ。森はとても深いから。――遭難した人もいるらしい」

今のピロシの一言を受けて、一瞬ブルーが怪訝な表情を浮かべる。
今一瞬、ピロシの目がどこか遠くを見ていたような…。気のせいだろうか。
そんなことを考えていると、聴きたくなかった言葉が耳に入ってきた。しまった、いとも簡単に進入を許してしまった。

「大丈夫!我らチャオレンジャーに不可能はない!皆の衆!今夜早速調査に向かうぞ!」



―ミスティックルーイン・夜―

「いや素晴らしい満天の星空だ!やはり都会の濁りきった空とはワケが違うな!」
「この美しい星空がリーダーの心の汚れを全て洗い落としてくれればいいのですが。流れ星でも流れないでしょうか」

きらきらと輝く無数の星達。都会の喧騒などどこ吹く風、漆黒の空を眩く彩る彼らには全くもって関係ない。
眠れぬ夜は、そっと星を数えてみる…。彼らが放つ優しい光は、きっとあなたを安らぎの夢世界へと誘ってくれる……。
そんなロマンチックな星空の元集結したのは、ロマンチックとは縁遠い者達ばかりのチャオレンジャーの面々だった。

「さーて!昼間話したとおり、今回の我々の任務は!真夜中の森林奥深くから放たれるという謎の音、叫び声の実態を調査することにある!場合によっては戦闘に入るかもしれん!心してかかれ!」

静寂が支配していたはずの真夜中のミスティックルーイン。
寝ている虫、動物達は安眠を妨害され非常にムカムカ。

「貴方はどんな時にでも周りに迷惑をかけることを怠らないのですね」


ブルーがボソッといったが、無視。

「さーて早速出発しようじゃないか!全員トロッコに乗り込め!」
「い、や、だ、ね」
「い、や、で、す、わ」

心底うんざりした顔で、そろって抗議したのはグリーンとピンクだった。

「何で俺がそんなことをしなきゃならん。俺は眠いんだ、帰る」
「わたくしだってお断りですわ。夜更かしはお肌に悪いですし、こんなコトに何の意味もありません。きっと動物か何かが鳴いているのでしょう」
「いまさら何を言っておるんだね!今回は私だけでなく、ピロシ殿の頼みでもあるんだぞ!」

余計なことを。
ピンクは殺気にも似た眼差しをピロシに突き刺してやろうと辺りを見回すが、見つからなかった。留守番の癖に、どこに行ったのか。

「とにかく!欠員は認めん!我々チャオレンジャーは常に一心同体運命共同体連帯責任なのだ!では行くぞ皆の衆!」
「しょうがない、行ってやるか(途中でバックレよう)」
「しかたない、行ってあげますわ(途中でバックレましょう)」
「おっ、初めてみんなの意見が一致しましたね(本心が手にとるようにわかりますが)」
「Zzz・・・」

こうして、5人を乗せたトロッコはゆっくりと走り出した。
その先に待っているは、レッドに言わせれば夢と希望とロマンと。他の隊員に言わせれば何の意味も成さない活動と。
五人の思惑を抱えたトロッコは、カラカラと音を立てながら洞窟の闇に消えてゆくのだった。



トロッコが見えなくなると、再び辺りには静寂が舞い戻った。当然、辺りには誰もいない。が、しかし。
小さく、しかしはっきりとその声は聞こえた。

――よろしく頼む。

たった一言、主なき声がそう響くと、三度静寂が訪れ、今度こそその場を支配した。

―ミスティックルーイン・森林―

「い、生きてた……」

いつもの威勢のいい声は完全に鳴りを潜め、隙間風のようなひょろ長い声で呟くグリーン隊員。
ずかん、と森に衝突音が響いたのと、チャオレンジャー隊員達が死を覚悟したのは同時だった。死にゃしなかったが。

「はっはっは!いやなかなかスリリングな体験だったな!いやまさか線路が途切れているとは思わなんだ!」
「…」
「…」
「…」
「Zzz・・・」

衝突音が響いたのとチャオレンジャーが死を覚悟した理由。今リーダーが仰られたとおりでございます。
先ほどのトロッコ。洞窟を抜けると線路が、というより道が途切れるのです。その下に広がるのは、広大な森林です。とても高いです。
本来はここでトロッコから降りて、長ーい梯子を降りて森に入ることになるのですが。
しかし我らがリーダーはトロッコという乗り物を大変気に入られたご様子で、先ほどの洞窟内も物凄いスピードで走られたのです。
それだけならまだよかったのですが、残念ながら我らがリーダーは『洞窟を出たところで道が途切れている』という情報を入手していなかったのです。
そのまま止まることを知らない暴走車両と化したトロッコは、途切れた線路もなんのその。構わず突っ走られました。
そしてトロッコは、鳥になったのです。…2,3秒ほど。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第164号
ページ番号
5 / 9
この作品について
タイトル
チビッコ戦隊チャオレンジャー!~ミステリアスミスティック編~
作者
宏(hiro改,ヒロアキ)
初回掲載
週刊チャオ第164号