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「グリーンさん、鼻が真っ赤ですよ。こっちの、やわらかいティッシュを使うことをお勧めします」
「何だ柔らかいティッシュって?そんなのがあるのかはくしょーい」
「ティッシュがどうのこうの問題ではないのです。ワタクシが求めるのは地球上からの花粉完全抹殺です。国のお偉い方々はリゾート開発だの調査と称した観光だのに使っているお金を今すぐ花粉完全抹殺装置開発の予算に回すべきですわ。いいえ回させましょう。デモでも起こそうかしら」
「それより、サングラスとマスクを同時に装備するのは少し考えたほうがよろしいと思いますよピンクさん。怪しさ満点ですよ。銀行強盗にでも間違われそうです」
「大体いまさら入ってくるのを防いだってしょうがねーだろうが。俺は中の奴を退治したいんだはくしょーい」
「五月蝿いですわねはくしょいはくしょいと。汚いですからコチラを向かないでください」
「そんなこと言われてもはくしょーい」
「いいじゃないですか、新しい語尾ということで。新たなキャラクターを発掘できるかもしれません」
「バカな事言ってんじゃはくしょーい」
花粉談義の真っ最中だった。
「皆の衆!何をしておる!そんなところに突っ立ってないでさっさとついてきたまえ!えぇい、こんなものは正義の集団としては非常に相応しくない!さっさとはずしたまえ!」
「あっ、テメ何しやがるはくしょーい」
レッドはグリーン隊員達が身に着けていたマスクやサングラスをすべて剥ぎ取り、懐から小瓶を取り出した。
「君たちがそこまで花粉をどーにかしてほしいというのなら、私が何とかしてやろうではないか!」
そういいながら小瓶をずい、と見せ付けるリーダー。
どうにかしてやるといいながらそんな怪しい小瓶見せ付けられたら少なくともいい予感はしないわけで。
ノーベル賞受賞の凄い学者が同じことを言うのであれば言うんだったら「花粉症即効治療薬」でも入っているのかもしれない、と期待も持てるが。何せリーダーである。
聞いても得をすることは何もないと思ったが、とりあえずブルーは聞いてみた。
「で、何なんですかそれは?」
「ぃよくぞ聞いてくれた!いいか皆の衆!花粉の原因とは!木である!なら木を無くせばいいのだよ!私の発明『ショウドサクセン』にかかれば、半径…う~ん、まぁそこら辺は一瞬にして火の海だ!火炎瓶と思って侮るなかれ!この瓶の中には私の熱く燃える情熱が詰まっておるのだ!」
「そうですか。では今すぐ捨ててくださいお願いします」
「バカモン!君は何も聞いていなかったのか!この中には私の燃える情熱が詰まっておるのだよ!コイツは必ず、君たちの軟弱な気持ちとともに花粉を吹き飛ばしてくれるはずだ!」
「この森をも吹き飛ばす恐れがあるので今すぐその危険物を排除してくださいといっているのです」
「えぇい、どこまでも逃げ腰な奴らめ!とにかく行動あるのみだ!行くぞ皆の衆!」
レッドは完全無欠100%余す所なく嫌悪の色を浮かべる隊員達を無理やりトロッコに乗せ、外界に向かって走り出した。
「夢と希望とロマンス求め!いざ行かん冒険の世界!ハイヨー、シルバー!」
「リーダー、ゲーム脳という言葉を知っていますか?」
洞窟内に我らがリーダーの叫び声はこだまとして残り、数秒後に消え失せた。
…
―ミスティックルーイン―
ミスティックルーインの駅の下で休憩をしていた若い新米探険家は驚いた。ビックリ箱を開けたわけでも、後ろからヒザカックンされたわけでも、予告なしにいきなりブレーンバスターかまされたわけでもない。
前方から、謎の高速移動物体が近づいてきたからだ。
「うわっ!」
ズギャギャギャ!と派手に煙を巻き上げながら目の前にドリフト駐車してきたその物体は、この近くにいくつか置いてあるモノ同じタイプのトロッコだった。
違うのは、そのトロッコには5匹のチャオが乗っていたということだった。
「いや、なかなか気分爽快な一時だったな!このじゃじゃ馬加減、大変気に入ったぞ!」
「トロッコとは本来レールの上を走るものです。それを無理やり脱線させてしまって…。このトロッコも線路が恋しいでしょうに」
「何を言うかブルー君!予め引かれたレールの上のみを走る人生などまったく持って無意味だとは思わんかね!?このトロッコも、理不尽な戒めから開放されて喜んでいるに違いない!うんうん、そんなに感謝せずともよいぞ!お礼は年中無休で受け付けている!安心して持ってきてくれたまえ!」
「あ、あの~…」
おどおどした態度で話しかけてきたのは、何もしてないのにいきなり土埃の洗礼を食らった新米探険家だった。
「ん?何だね君は?」
自分から勝手に現れて、なおかつ相手に多大な迷惑をかけておきながらなんとも失礼な態度だが、新米探検家はそんなレッドに怒る様子もなく。
「僕?僕の名前はピロシ。フジオカ・ピロシさ。ミスティックルーイン周辺を調査してる探検隊のメンバーなんだ。…とはいっても、まだ新米だからココで留守番してるんだ」