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「なんだどしたブルー隊員!サングラスをなぞつけおって!いやまぁ確かに君ぐらいの年頃になれば少し背伸びをして大人に近づきたいという衝動に駆られることもあろう!しかし君ら程度のひよっこにはサングラスなぞ半世紀早い!サングラスが似合うのはハードボイルドな風格漂う私のような…」
「人を勝手に夢見る青少年にしないでください。僕がサングラスをつけているのは少しでも花粉に対抗するためです。対策法が、こんなちゃちな防御策しか思いつかないというのも悲しい話ですが。防御するばかりで、撃退する方法を持ち合わせていないのが非常に悔しいですね」
「君たちは最初からそんな逃げ腰でいるから花粉に舐められるのだ!私を見習え!花粉少女など皆無だぞ!違う間違えた!花粉症状なぞ皆無だぞ!いやしかし花粉少女とはなかなかいい響きではないか!我ながらすばらしい単語を世に産み落とした気がするぞ!うむ、そこらの花粉をみな可憐な少女だと思ってしまえば、ほら見ろ!みな大歓迎だろう!?コレで花粉対策もばっちりだ!これぞまさに瓢箪から駒、棚から牡丹餅、ドブから100円!新作アニメもコレで決まりだ!」
「そんな対策を実践できるのは、太陽エネルギーほどの邪な妄想力を有しているリーダーぐらいなモノですよ」
「全く情けないな君たちは!そのぐらいの想像力つけてきたまえ!その程度クリアできないようではまた花粉に舐められるぞ!それさえクリアできれば花粉だろうが馬糞だろうがドンと来いだ!まぁ後者の場合実際に投げつけられでもしたらさすがの私も退避行動をとらざるを得んと思うが…」
「それより、大いなる転機とはいったい何なのですか」
「おぉすっかり忘れてた!」
そんなこんなで漫才も終わり、レッドはまた天を見上げ大声で叫ぶ。
「我らに訪れた大いなる転機!それは我らを取り巻くこの緑豊かな自然の地にある!」
と、その場でくるくる回りだす我らがリーダー。その姿はどう見ても変質者だが、確かに彼の言うとおり周りは大自然に囲まれている。
大きく切り立った崖、その上からは美しく透き通る綺麗な水が絶え間なく流れ落ちる。実のなる木も豊富に、そして大きく育ち、圧巻なのは眼前に広がる雄大な大海原である。
そんな自然に恵まれたこの地は、いつも彼らの活動の拠点となっていたシティエスケープのチャオガーデンではない。ここは――
「この地はそう!ミスティックルーイン奥深くに眠る神秘の地!誰も足を踏み入れたことの無い未開の地なのだ!」
――そう、ここはミスティックルーインに作られたチャオガーデンである。別に未開の地でもなんでもない、きちんと作るべくして作られたチャオガーデンである。
彼らがなぜこんなところにいるのかというと。
「社長はきっといまだ謎が深く残るココミスティックルーインの調査を我々に任務として任せてくれたのだろう!我らを信頼できる調査隊として認めてくれたに違いない!」
「そんなんですか?僕はてっきり迷惑集団の僕らを辺境の地に追いやってシティエスケープガーデンの安全平和を確立するためだと思っていましたよ」
果たしてどちらが正しいのか、それは永遠の謎である。謎である。
「さて!ここミスティックルーインでの記念すべき初任務初仕事二十日鼠はなにかというと!…だぁからまだ何も決まっておらんのだよ!君たち何か考えそして言いたまえ!このままだと私の喉が干からびてしまうぞ!」
「そのままリーダー自身が干からびてしまえば僕たちにとっては喜ぶべきことなのですが」
「貴様何ということを!私を第2765代チャオレンジャー隊長、国民栄誉賞&ゴールデングラブ賞&最優秀主演男優賞&最優秀剛毛賞受賞その名もレッドと知っての暴言か!地に頭をめり込ませて謝れ!」
「尽きることなき貴方の虚言にはほとほと感心します。ただし、たとえ地球が突如逆回転をし始めても尊敬の念は抱かないでしょうけど」
「褒め言葉として受け取っておこう!」
そう叫びながらギュルギュルとその場で土埃を上げながら無意味な右回転。
回転が終わると同時に右手を突き上げ左手を腰に回し膝を曲げてこれまた無意味かつ意味不明な謎のポーズ。そして叫ぶ。
「仕方ない!やる事がなければコチラからアクションを起こすのみだ!行くぞ皆の衆!」
現在位置が人のいないミスティックルーインガーデンでよかった。公共の場であれば即座にその身は拘束されていただろう。いや寧ろそうしてくれた方が…。
そんな他の隊員の気持ちなど知る由もなく、レッドはダッシュでトロッコに向かう。しかし、ついてきた(というより引きずってきた)のは、相も変わらず純粋無垢にて無邪気な寝顔で、誰にも邪魔できない順風満帆な爆睡Lifeを謳歌し続けるイエロー隊員のみだった。
他の隊員達は。