~続々・木枯らし編~ ページ2
といって歩き出したそのとき。ずぼっ!という間抜けな効果音を残し、グリーンの体が消えた。
遠目から見たらそう見える。しかし、すぐ後ろにいたピンクとレンにはそうは見えず、彼が地面に突如現れた大きな穴に吸い込まれたのだと、どこの誰よりも早く理解した。
「…なんで俺はこうも落とし穴に好かれるんだ?」
穴の中から情けない声が聞こえる。そして這い出てきたグリーンに向かい、落とし穴の製作者名と、作成理由を説明した。リーダーが泥棒捕獲のために作りました。
「…」
聞いたグリーンは、無言でリーダーに復讐する方法を考え出した。マスクの奥でぶつぶつ呟きながらジメジメオーラを放出するグリーンを筆頭に、三人はヒーローガーデンを後にした。
―幼稚園・教室―
「そうですか…失礼しました」
他を当たるといってもチャオガーデン、ダークガーデンはすでにレンが探したという。
もしかしたらレンが探し損ねた場所があったのかもしれないという不安はあったものの、グリーンたちは未開拓の地の一つ、チャオ幼稚園でユキの手がかりを探す事にした。
そして今、幼稚園内の教室にて幼稚園の先生に対して聞き込み調査を実行、あえなく撃沈した所である。
撃墜されたピンクは教室入り口のドアへ向かう。ドアを開けると、そこにはグリーンとレンが壁にもたれかかって待っていた。
「どうだった?」
教室から出てきたピンクにグリーンは作戦の成否をたずね、ピンクは
「ダメでしたわ、ユキちゃんは教室には来ていないそうです」
と答えた。そして逆に、占いの館&闇の取引所へピンクと同様の作戦を敢行していたグリーンとレンに自分がされた質問と同じ質問をぶつけ、そして返ってきた答えは自分の物と同じだった。
残るは保健室と園長室。保健室へは今朝の事(前々回参照)もあって多少行きづらかったが、大胆にも三人で突入。
しかし残念ながら今回執行された作戦は人数が多ければ有利という内容の作戦ではなく、保健室でも収穫を得る事は出来なかった。唯一得た物は、患者チャオ達からの白い視線だった。
そして最後、園長室へも三人で突入し、あっけなく落胆の表情を浮かべながら出てきた。
今回の聞き込み調査結果:聞き込み対象人物(チャオ物?)の証言は全員例外なく「そんな子知らないよ、ココへは来てないよ」といった内容。つまりは収穫ゼロ。手がかりなし。意味なし。無駄足。骨折り損のくたびれもうけ。撃沈。沈没。
「いったいどこにいるんだよ~。ゆ~きこちゃ~ん」
ふ~じこちゃ~ん。
人の名前を勝手にゆきこに改名し、気の抜けた声で天井を見ながら園長室前でまだ見ぬゆきこを呼ぶグリーン。
「あ、あの…。ゆきこじゃなくて、ユキちゃんなんですけど…」
律儀につっこむレン。
そんなことは一切無視し、今まで背中で壁にもたれかかり、少しうつむいて考え事をしているような様子のピングだったが、
「とにかく」
と、顔を上げる。
「もうココにはいないとわかったのです。他を探しまょう」
「他っていっても、どこをさ…ゴホッゴホッ」
ココで、今まで鳴りを潜めていたウィルスが再び活動を開始する。まずは挨拶程度のジャブ攻撃。
グリーンの言葉は咳の攻撃によって途切れたが、何を言いたいのかはピンクに伝わった。
「他…そうですわねぇ…」
他を探すとはいったものの、ピンクにも何かあてがあるわけではなった。顎に手を当て、数秒考え込んだ後、
「幼稚園の…裏にある林の中…なんかはどうでしょう?というか、そこぐらいしかもうありませんわ。隠れそうな所は」
「…あ、今俺賢い事思いついた。チャオレースのコース内に隠れてる、ってのは?」
「それはありません。チャオレース受付にユキちゃんがエントリーした形跡はありませんでしたから」
「いつの間に調べたんだ…」
自らの意見はあっさり否定されたグリーンは肩を落とし、幼稚園の裏庭へと歩を進めるピンクとレンについていった。
そしてこの頃グリーンの体内では、ウィルスの長がグリーン隊員へ総攻撃を仕掛ける準備を整え始めていた。
グリーン体内に宿る抗体がそれをいち早くキャッチし、グリーン本人へ熱、あるいは体のだるさといった形で警報を発したのだが、彼のつまらぬかつ無意味な「意地」が、それを無視させた。
―幼稚園・裏の林―
幼稚園正面玄関の両側の柵を越えると、幼稚園の裏側に出る。
ここは普段はあまり人が立ち寄らない場所である。裏側には庭があり、その奥は林となっている。
グリーンもピンクもレンも、ココに来るのは初めてだった。