~続・木枯らし編~ ページ2

レッドがピンクを押しのけ子供にずんずんと歩み寄る。子供は半歩後ずさりするが、何とか踏ん張って口を開く。

「え、…えと…。と、と…」
「ふんふん?」

レッドが耳に右手をかざし、聞き漏らさないよう無駄に神経を集中する。

「と、友達が…い、いなくなっちゃったんです…!」

それを聞いてレッドは目玉が飛び出んばかりに目を見開き、顎が外れんばかりに口を開ける。その一秒後、子供から飛び退き四肢をばたつかせながら叫ぶ。

「なッ、なッ!なんとッ!ゆ、ゆゆゆゆ、誘拐事件だッ!皆の衆、大変だぞッ!」

一体どこから発生しているのか疑問に思わずにはいられない大音量でレッドが叫ぶ。その叫び声は、グリーンを夢の世界から現実の世界に引き戻すのには十分だった。

「ん…?んぅ…?…うるっせーな…なんだぁ?」
「Zzz・・・」

しかし、イエローを引き戻すには不十分だった。

「やぁグリーン君お目覚めかね?しかしながら、今は君の相手をしとる暇は無いのだよ!さて少年よ、続きを聞かせてくれたまえ!」
「は、はい…えっと…」

子供は、おどおどしながら続きを話し出す。グリーンは今の状況を全く把握する事ができず、頭上にハテナマークを浮かべている。
寝起きのグリーンにブルーが近づき、子供が、いなくなった友達を探して欲しいと自分達に依頼してきた事を説明する。

「ぼ、ぼくとユキちゃんでヒーローガーデンで一緒にあそんでたんです。そしたらユキちゃんがいなくなっちゃって…」
「ふむ、実にわかりやすい説明だ、感謝する!ちなみにいついなくなった事に気づいたのかね?」
「えぇと…い、いつのまにか…」
「ふむ、まぁいいだろう。とにかく!まだこの近くに犯人がいるかもしれん!まずはヒーローガーデンをくまなく調べようぞ!行くぞ皆の衆!」

レッドは拳を突き上げ声を大にして叫ぶ。そこに割り込んでくるのはやはりブルーだった。

「待ってください、話を勝手に進めないでください。というか進めすぎです。まだ誘拐と決まったわけでは無いでしょう、遊んでいる途中でいなくなったというだけです」
「何をいう!我らチャオレンジャーに依頼するほどだ、きっと誘拐に違いない!というわけで少年よ、いくつか質問に答えてくれたまえ」
「滅茶苦茶な事を言わないでください、というかこれからヒーローガーデンに調べに行くのではなかったのですか?」
「では答えてくれたまえ」

ブルーの事を完全無視し、レッドはメモをとる仕草をする。あくまで仕草である。メモを、筆記用具も手には無い。つまり無意味。

「まず、キミとユキちゃんはヒーローガーデンで遊んでいた。そして遊んでいる最中にユキちゃんは連れ去られた。キミとユキちゃんは一体何をして遊んでいたのか教えて欲しい」
「えっと…かくれんぼして遊んでたんです」
「待て待て待て!ストップストップストップ!」

レッドそう叫びながら、散らばった生徒を呼び集める教師のように両手を叩く。その後数秒硬直していたが、すぐに口を開く。先ほどまでよりトーンは低い。

「…ブルー隊員、今この少年はこの事件を解決するに当たってもっとも重要な鍵を所持していると思われる言葉を口にした、わかるかな?」
「…まぁ、多分わかっていると思います」
「ふむ…少年よ」
「は、はい…」
「今君は『かくれんぼをして遊んでいた』、と言ったな?」
「はい…」
「ふむ、なるほどよぉくわかった!皆の衆喜べ!この事件の謎は全て解けた!まさに電光石火の解決劇だ!というかそもそもコレは事件ではなかった!」

ふぅ、と一呼吸置いてからレッドは落胆と謎が解けた事に対する喜びとを両方顔に出す。

「少年よ、そういえばまだ名前を聞いてなかった。教えてくれたまえ」
「れ、レンです…」
「ふむ、レン君よ。キミはかくれんぼという遊びの趣旨を理解しているかね?うむ、そうだ。鬼に見つからんよう隠れる事だ。レン君、キミは恐らく鬼の役を演じていたのだろう違うかな?」
「そ、そうです…」
「ふむ、つまりだ。この場合キミは逃げ隠れたユキちゃんを探す役目、ユキちゃんはキミから隠れ逃げる役目を担うわけだ。そうじゃないと成り立たんからな。つまり!遊んでいる最中にユキちゃんがいなくなってもなんら不思議な事は無いのだよ!なぜならそれがユキちゃんの役目だからだ!うむつまり、ユキちゃんは今もどこかで隠れているという事だ!」

レンはレッドのいう事を理解するのに数秒の時間を要した。その数秒の間ポカンと口をあけて間抜けな表情で突っ立っていた。そして今聞いた文章の意味を理解し終えると、手をばたばたさせながら反論する。

「…ち、違うんです!そうじゃなくて、本当にいなくなっちゃったんです!アレだけ探したのに…」
「当然だ、先ほども言ったようにそれがこのゲームの趣旨だからな!きっとユキちゃんはかくれんぼの名人なのだろう!うむ、ユキちゃんに世界チビッコかくれんぼ大会への出場を勧めるといい!優勝間違いナシだぞ!そんな大会があるかどうかはしらんがな」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第103号
ページ番号
5 / 11
この作品について
タイトル
チビッコ戦隊チャオレンジャー!~木枯らし編~
作者
宏(hiro改,ヒロアキ)
初回掲載
週刊チャオ第91号
最終掲載
週刊チャオ第111号
連載期間
約4ヵ月21日