~続・木枯らし編~ ページ1

―チャオガーデン・お昼―

「さぁーて!せっかくのいい天気だ!何か特訓でもして汗を流さないともったいないとは思わんかね?」
「汗を流すことはともかくとして、リーダーの言う特訓には同意しかねます。まだ懲りてないんですか?」

チャオガーデンに着くなりすぐにまた、赤と青という対照的なボディカラーの二人が喋りだす。

「何を懲りる必要がある?私は何か懲りる必要があるようなことをした覚えは無いぞ?」
「あります。社長さん、他のチャオたち、そして僕たちに多大な迷惑をかけました」
「全く覚えが無いな!」
「コレでもう何度目でしょう、正確な数字はわかりませんが言わせていただきます。覚えていてください」
「無理だ!…しかし暇だ。チャオレンジャーを結成してはや一ヶ月になるが、一度も依頼がこないとはどういうことだ!」
「僕たちのような怪しい集団に依頼を頼む奇特な人なんて、そうそう現れないでしょう。僕はその怪しい集団に属しているという僕の運命を呪います」

その後数秒沈黙が訪れたが、レッドの発する声によって、すぐに去っていった。

「うむ、皆の衆は最近、我らのガーデンに泥棒が出入りしているという噂を聞いた事があるかね?」

それに返事を返すのはやはりブルー。

「なんですかいきなり?…そういえば最近そんな噂を耳にしますね。園長室にある何十万リングもする絵や、闇の取引所にある高価な品物が盗まれたとか」
「そうそうそれだ。その他にも色々被害が出ておる。その盗人もなかなか賢いようでな、手がかりが少なく捜査は難航しておるようだ。そこでだ!その盗人を我らで
「『捕まえよう』なんていわないでくださいよ?」
「…ブルー君、私のセリフを盗むのはいただけないな!その通り!我らでその盗人をとっ捕まえてやろうぞ!」
「やめてください、迷惑なだけです。…というか、もしやリーダーが犯人なのでは?」
「何をバカなことを!私は世界の平和を守る者、窃盗などしとる暇は無いのだ!」
「暇があればするのですか?」
「キミはどうしていちいち人の揚げ足を取るんだ!私はそんな子に育てた覚えはないぞ!」
「育てられた覚えはありません」
「私も育てた覚えは無い。そんなことはどうでもいい!私はその盗人を捕まえるために先手を打っておいたのだ!初回先頭打者本塁打だ!」
「あまり聞きたくは無いですが、また何かしたんですか?」
「フフフ、聞いて驚け!ガーデン中、あるいは園内の庭中に大量に落とし穴を掘っておいたのだ!」

それを聞いて、ブルーがお出かけマシーンのほうに目をやる。マシーンの脇で、数匹のチャオが地面に開いた穴に向かって何か叫んでいた。
なにやら必死に手を伸ばしたり、穴の中に身を乗り出している。そこで何が起きたのか、今のレッドの台詞を聞いた後では容易に想像できた。
ブルーはそれを指差し

「もしかして、アレがそうですか?」

と、お出かけマシーンの方角を指さしながら訪ねた。レッドはそれを見ると

「おぉ!早速掛かっているではないか!でかしたぞブルー君!盗人め、いまとっ捕まえてくれるぞ!」

そう叫んで、自らの掘った落とし穴まで全力疾走で駆けていった。そして罠に掛かったのが目当てのモノでないとわかると、すぐに戻ってきた。
レッドが戻ってきた後、落とし穴から、何の罪も無い子供のチャオが羽を使って自力で脱出してきた。

「うーむ、残念ながら掛かったのは盗人ではなかったようだ。全く!関係のない者は落とし穴に落ちないでもらいたい!」
「ご自分がとんでもなく無茶苦茶なコトを言っているという自覚はありますか?」
「無い!」

誰かこの漫才に終止符を打つものは現れないものか。そんな事をピンクが考えていると、なにやら小さい子供のチャオ―人間の年齢で言うと5歳ぐらい―がチャオレンジャー達の元に近づいてくる。
それに気づいたピンクが、子供に話しかける。

「あら?どうしました?」
「あっ…。えっと…」

子供は何か言いたげにちろちろとチャオレンジャー達の顔をみる。レッドとブルーも子供の存在に気づき、会話(天然漫才)を中断する。

「どうしました?迷子になってしまったのですか?」

チャオレンジャーのメンバーを相手にするときとはうってかわり、優しく丁寧に子供に応対するピンク。
今、目の前の子供に見せている微笑みは普段メンバーに見せている冷徹な無表情からは考えられない物である。

「うむぅ、我らと話す時もあのような優しい微笑みを見せてくれればよいのだが」
「無理でしょう」

レッドが言って、ブルーが返した。

「あ、いやっ、そうじゃないんです…ちょっと頼みたい事が…」
「頼みたい事…ですか?」
「はい…」

ピンクは文字通り頭上にハテナマークを浮かべる。ブルーも同様の反応を見せた。グリーンとイエローは寝てた。いままでずっと。
頼みたい事とはなんでしょう?ピンクは必死に心当たりを探したが、見当たらなかった。

「ふむふむ、結成以来記念すべき最初の依頼だ!一体どのような内容の依頼かな?」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第103号
ページ番号
4 / 11
この作品について
タイトル
チビッコ戦隊チャオレンジャー!~木枯らし編~
作者
宏(hiro改,ヒロアキ)
初回掲載
週刊チャオ第91号
最終掲載
週刊チャオ第111号
連載期間
約4ヵ月21日