~木枯らし編~ ページ2

「グリーンさんもこういっています。それにこんなところにいたら、健康なわたくしたちまで風邪をうつされてしまいます。わたくしがココにいなくてはならない理由は何一つありません」
「探せばよかろう」
「見つからないものを探しても見つかるわけがありません」

レッドは数秒考えてから

「ふむ。確かにただココにいるだけでは病人が増えるだけだな」
「おや、リーダーにしては珍しくまともな意見ですね。明日は大雨が降るという警報ですか?それとも地震ですか?」
「よしわかった!要はうつる前にココを出てしまえばよいのだ!」
「そういうことです、ではわたくしは先に失礼させていただきます」
「待て待て、誰が帰ってよいといった」
「ココを出るのでしょう?」
「その前にグリーン君の診察が先だ!というわけで君たちには悪いが先に診察させてもらうッ!」

そういうとレッドは脇で寝転がっているイエローの両足をつかみ、振り回し始めた。
そして、自分達の前に並んでいたチャオたちを次々となぎ倒してゆく。ぐはぁっ。とか、うがぁっ。という叫び声が部屋中に響き渡る。数秒後、保健室の前に並んで立っていたチャオたちはみな、床に転がっていた。
イエローは。寝てる。

「皆の衆、道は開けた!急ぐぞ!」

そういってレッドは保健室のドアを前蹴りで開けた。両手にイエロー隊員とグリーン隊員を持って。
取り残されたブルーとピンクは。

「前言撤回いたします」
「確かに病人は出ませんでしたわね。怪我人なら多数出ましたけど」
「おや?それはリーダーの行為に賛同するという意味ですか?」
「まさか」

そういって、ブルーとピンクも保健室へ入っていった。床に転がったチャオたちの気持ちを代弁させていただく。酷でぇ。

―園内・保健室―

「さぁ先生殿!彼を診察してやってくれたまえ!」
「はいはい、わかりました」

ブルーとピンクが保健室に入ると、すでにグリーンが椅子に座らされていた。その傍らでレッドが無意味に大きな声を出している。他の患者の冷たい視線など気にせずに。

「エッへッへッへ…う~んどうでしょう?…なるほど…コ、コレはッ!」

眠そうな目に怪しい光をたぎらせ、完璧なまでに白い歯をむき出しにして常時ニタァッ、と笑っている。おとなしく椅子に座っているかと思いきや突如メトロノームのように椅子の上で左右に激しく体を揺さぶる。
そんな疑わしさ百二十パーセントの彼、医者チャオ―本名など詳しいこと一切不明、ますます疑わしい―は、グリーンの胸に心音機を当て、なにやらぶつぶつ呟いている。

「グリーンさん…でしたかね?」
「はぁ…」
「非常に残念なのですが、貴方の病気は…」

医者チャオがそこまで言いかけて、レッドが割り込んでくる。

「なッ!?な・・・なんとッ!グリーン隊員はそんなに重い病気なのかッ!な、なんと言うことだ…。先生!そのようなことは本人のいないところで、家族にこっそり言うべきことではないのかね!?グリーン君の心中を考えてみろ!目の前で死期を宣告された者の精神的ダメージを考えてみろ!コレは許されることでは無いぞ!ドクハラだ!訴えてやる!行列の出来る何とかだッ!」

レッドがそこまで言い終えると、医者チャオは続きをしゃべりだした。

「ただの風邪です、よかったですね。お薬を出しておきますお大事に」
「はぁ…ズルズル…ありがとうございます…ズルズル…」

そういって医者チャオは薬をグリーンに渡した。

「はっはっは!だから私は大丈夫だといったのだ!グリーン君ほどの生命力ならそのような重病にかかる確率など皆無だと!全く、誰がグリーン君は重病だなんて言い出したのやら」
「お願いです、少し黙っていてくれませんか?」
「何故私が黙る必要がある?仲間の病気は軽い風邪だということが判明したのだ!みんなで喜ぶべきだろう!」
「時と場所を選んでください。他の患者さんに大大大迷惑です」

保健室にいる他の患者からは、お前ら早く出て行けオーラが大量に放射されていた。ついでに、さっきレッドに吹っ飛ばされたチャオからも殺気が伝わってくる。

「うん?そういえば先ほどからなにやら視線を感じていると思ったら、そうか。キミ達の視線であったか。はっはっは、私の顔の造形はそんなに魅力的かね!」
「彼らの発する殺気の、どこをどう変換すれば魅力的なものを見つめる眼差しになるんですか?」
「変換など必要ないだろう!私は私に集められている視線をそのまま、ありのままに受け止めているぞ?」
「リーダーにとってのありのままとは、事実とは180度反対のコトを指すのですね、よくわかりました」
「ブルーさん、この男の不可解発言にいちいち反応する必要などありません、無視することを自信を持ってオススメさせていただきます。そうです、この男の発言など無視してしまえばよいのです」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第91号
ページ番号
2 / 11
この作品について
タイトル
チビッコ戦隊チャオレンジャー!~木枯らし編~
作者
宏(hiro改,ヒロアキ)
初回掲載
週刊チャオ第91号
最終掲載
週刊チャオ第111号
連載期間
約4ヵ月21日