~木枯らし編~ ページ1

―チャオガーデン内幼稚園前―

「ふむ!今日もすがすがしい朝だ!今の空の色は私の心をそっくりそのままコピーした色である!」
レッドが叫ぶ。
「はて?リーダーの心の色はてっきり濁ったミミズの体液のような色だと思っていましたが?」
ブルーが言う。
「お前ら、少しは静かにしててくれ…ゴホゴホ!」
グリーンが咳き込む。
「ふぁ・・・洗顔の時間をいただけますか?」
ピンクが質問する。
「Zzz・・・」
イエローが寝てる。

彼らは今、五人仲良く幼稚園に向かっている最中である。ちなみにイエローはレッドに引きずられている。

「何をいうグリーン君!大事な仲間が風邪を引いたのだぞ!それを黙って無視するリーダーがどこにいる!?」
「まさかとは思いますが、グリーンさんが風邪を引いた原因はリーダーの落とし穴にあるということをお忘れになってはいないでしょうね」
「うん?グリーン君はブルー隊員とピンク隊員が救出したのではなかったのか?」
「僕たちは確かに断りました。リーダーはそれを無視して行ってしまったのです」
「仮にも正義の味方に属するものが大事な仲間を見捨てるとは!恥を知れ!」
「大事な仲間をワナにはめる行為のほうこそ正義の味方に属したものの行為とは思えません。それに僕たちは志願して正義の味方―というよりは悪の秘密結社ですけどね―に属した覚えはありません」
「お前ら少し黙ぁってろ!…ゲホッゲホッ!」

この360度どの角度から見ても抜群のチームワークとはお世辞にもいえない彼ら。彼らこそ悪人から世界を守るために結成されたスーパーチャオの集団(特殊な能力は全くないが)
自称チビッコ戦隊チャオレンジャー!人呼んでただの近所迷惑である!

彼らは普段はチャレンジレースの番人として活躍しているのだが、それに飽きたリーダーのレッドがダイヤモンドコースをレッドいわく楽しさいっぱい夢いっぱいのワンダーランドへと改造。
その結果多数の犠牲者を出してしまった。ちなみに利益と呼べるものは皆無。損害しか手に入らなかった。例えば、レッドがネス湖から捕獲してきたネッシーの暴走により破壊されたダイヤモンドコースの修復費用等が挙げられる。
その犠牲者の一人がチャオレンジャー隊員の一人、グリーンである。
彼は様々な困難(全てリーダーの仕組んだ無意味なワナ)の末に、風邪を引いてしまったのである。ちなみにグリーンを救出したのはこのチャオガーデンの所有者である老人だった。
しかし、アレだけ苦痛を受けても最終的にただの風邪ですんだのは、それは彼の持つ驚異的な生命力の賜物であろう。故に彼にはこれからも「理不尽な苦痛を受けるかわいそうなキャラクター」という立場の元行動してもらう。
そんなキャラクターに勝手に任命されたグリーンが、診断してもらおうと保健室へ向かったのをレッドに見つかり、レッドが他の隊員を緊急招集。何故かみんなで保健室に向かおうことになった。

「ふぁ…ふぁ…ファーックション!」
「ちょっとグリーンさん?私に向けてくしゃみをしないで下さる?うつったら困りますわ」
「…だからこうしてマスクを…フェーックション!」
「あぁもう!こちらを向かないでください!向くのならリーダーのほうを向いてください。そうですわ、リーダーに風邪をうつせば直りが早くなるかもしれませんわよ?」
「それはどういう意味かなピンク隊員?」
「そのままの意味ですわ。リーダーにうつせばグリーンさんの風邪が治りリーダーも寝込んでわたくし達は平安を取り戻せる。一石二鳥ですわ」
「私にとっては得でもなんでもないようだが?一石二鳥どころか二兎を追うもの一兎も得ずではないか!」
「わたくし達にとっては一石二鳥なのです。リーダーの損得などわたくしにとっては無関係です」
「お二人さん、危ないですよ」

ブルーの忠告むなしく、二人は幼稚園入り口のドアにぶち当たった。
ピンクはその場にうずくまり額を押さえ、レッドは何事もなかったかのように仁王立ちしている。

「痛た…。こんな男との会話に夢中になって前方への注意を怠るとは、わたくし一生の不覚です」
「はっはっは!いやいや、心配にはおよばんよ!私の体は丈夫だからな!」
「誰もリーダーの心配などしてません。それより早く保健室へ行きましょう、グリーンさんが倒れそうです」
「ぜー、はー、ぜー、はー……」

ブルーはそういうとドアをあけた。なかに入ると、水色のドアの前に数匹チャオが列を作って並んでいた。
水色のドア――保健室の前に。

「…混んでいますねぇ。みんな用があるのは保健室のようです、風邪が流行っているんでしょう」
「わたくし人ごみは嫌いです。並んで待つのもキライです。帰らせてもらってもよろしくて?風邪を引いているのはグリーンさんのみですし」
「何をいうピンク君!君は仲間を思いやる気持ちが無いのか!グリーン隊員が診察を受けるまで誰一人として帰ることは許さん!」
「…俺としては帰ってもらったほうがいいんだがな…ゴホッゴホッ…」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第91号
ページ番号
1 / 11
この作品について
タイトル
チビッコ戦隊チャオレンジャー!~木枯らし編~
作者
宏(hiro改,ヒロアキ)
初回掲載
週刊チャオ第91号
最終掲載
週刊チャオ第111号
連載期間
約4ヵ月21日