~ぎんぎらぎんにさりげなくない編~ ページ5
行き先を指定し、中に飛び込むだけで目的地に到着。とっても便利なお出かけマシーン。でも子供のうちは、中に飛び込むのが少し怖かったりするんだって。すこし大人になってから「昔は飛び込むのが苦手だったんだよなぁ」なんて思い出にふけるのもまた一興。最初は錠剤なんて怖くて飲めなかったのに、今じゃ2,3粒ぐらいへ平気で一気にごっくんちょしちゃったりして、ちょっと寂しくなるのと同じだよ。
そしてこの話が事件解決においての動かぬ証拠や、キーワードになっているのかと問われれば、ゴメンやっぱり関係ないわけで。本編どうぞ。
「仕方ありません。僕達も行きますか」
「ふぅ。そうですわね。あの方のせいでまたわたくしまでとばっちりを受けたくはありませんわ」
「しょーがねぇなぁ…」
やる気ゲージ最低で重い足を引きずりながら。残された三人はおでっかえマシーンに順次飛び込んでいった。
ワープの最中は、なんともいえぬ感覚が襲ってくる。骨が溶けると言うか、体が溶けるというか。まぁチャオだし骨も無ければ体も水で出来てるから、普段と変わらないと言えば変わらないけど。
目の前に広がる光景は、目を瞑った時に見える光景と似ている。何も見えないけれど、なんか見えるみたいな。
そんなあやふやな世界をあやふやに説明しているうちに、隊員達はコスモスカンパニー本社のロビーへ向かっていた。
天井にはシャンデリア、受付では綺麗なお姉さんが極上スマイルでいらっしゃいませ。ちなみにスマイルは売ってません。テイクアウトもお断り。
そんなロビーの隅っこに設置されているお出かけマシーンが、ご飯が炊けた事を必死に知らせる炊飯器みたいにピーピーピーピーなりだした。その直後、マシーンからポンポンポン、とリズムよくチャオレンジャー達が飛び出してきた。
「はっはっは!ココに来るのも久しぶりだな!相変わらず清潔感、高級感に溢れる私のような大物には非常に居心地のよい場所だ!ではさっそく社長室へ向かうとするかな!」
その会社中に響く大声が、現在仕事に精を出している社員達のストレスの増幅に大いに貢献しているコトなど全く悪びれる様子も無くいや気が付かず、レッドは階段を猛烈な勢いで駆け上がっていった。ちなみに社長室は50階、ココ1階。
「…ま、僕達はエレベーターで行きましょう」
グリーンもピンクもブルーの提案を速攻で可決し、トコトコとエレベーターに乗り込む。
30秒後。
チーン、と言う音とともにエレベーターの扉が開く。
「やぁやぁ、やっと来たのかね!」
開いた扉の先にブルーたちが見つけたものは、何故かレッド(+イエロー)の姿であった。
「速いですね。どんなイカサマを使ったのですか?」
「はっはっは!コレもすべて常日頃の鍛錬の成果なのである!さて行くぞ皆の衆!社長室へ突撃ィ!」
レッドは社長室の扉を勢いよく蹴り飛ばす。こら。
「うぉっ!?なんじゃあ!?」
社長室で一人色々な書類に目を通していた社長は、そりゃもうびっくらこいた。歳が歳だけにぽっくりいってしまうのでは無いかと他の隊員達はひやひやしたが、何とかお元気な様子で。
「なんじゃいきなり!…ってレッド、おまえか!」
いきなりドアを蹴破られて怒り心頭のこの老人。彼こそチャオレンジャーを筆頭に(?)多数のチャオが暮らしているガーデンの所有者であり、コスモスカンパニーの社長である。名前はリーガル。82歳。真っ白な白髪と、同じように真っ白の立派な口髭がトレードマーク。
いつもは温厚でとても優しい人柄で人望も厚いが、いまは顔を真っ赤にしてカンカンに怒っている。い、一体どうしたって言うんですか社長!?
「仕事中にドア蹴破られて怒らないヤツがいるか!」
「まーまー社長殿!どうか落ち着いてくだされ!」
「お前が言うな!」
…
「うーん…。お前らだけではちと不安だが、まぁいいじゃろ。体育館を使わせてやろう」
「おぉ!感謝するぞ社長殿!」
「ただし、お遊戯が終わったあとじゃからな。お遊戯の進行を邪魔するような事は絶対するなよ?」
「わかっておる!よーし今度こそ不安要素はすべて撃退した!かえって早速練習だ!行くぞ皆の衆!」
三度猛烈な勢いでダッシュし、先ほど駆け上がってきた階段を今度は駆け下りていく。
以前何度もリーガル社長に迷惑をかけてきたレッド、恐らく印象は最悪を極めていると思われる。
なので交渉は非常に難航、いやむしろ交渉決裂でリーダーに付き合う必要がなくなるのではないかとブルー以下隊員たちは淡い期待を抱いていたのだが、案外あっさり交渉成功してしまった。
「あの、社長?」
取り残された3人の中の一人、ブルーが聞いた。
「なんじゃ?」
「あの、別に無理して体育館の使用を許可してくださらなくてもいいのですけれども…」
「なんじゃ、お前はやりたくないのか。ヤツが言ってた劇を」
「まぁ、あまり乗り気ではないのは確かです。恐らく他の皆さんも」