~god編~ ページ2
誕生日プレゼントに望む事:チャオを飼いたい
誰が調べたのかは知らんが、他にもクリスマスプレゼントに希望するものとか、もし目の前にトラゴンボールが七つあったら何を願う?とか、むしろホルンガに何を願う?とか色々書いてあったのだが、その全てがチャオだった。
チャオに会いたいチャオと遊びたいチャオを飼いたい、チャオを食べたいなど。最後違う。
この少年はチャオといっぱい遊んでみたかったのに、信号無視のトラックのせいでと突如命を奪われてしまった、かわいそうな少年なのだ。
他にも色々かいてあった。友達がチャオを飼っているコトをこの少年は常に羨ましく思っていたこと、親もソレをわかっていた事、少年の親が今年の誕生日にはチャオの卵をプレゼントしてやろうと内緒で計画していた事、少年の通う学校の階段が実は夜中に一段増えているコトなど。
――…グスッ、グスッ。
あっ、神様泣いてる。
――だって可哀想じゃないかぁ。何の罪もない純粋無垢な少年が、コレからやりたい事もたくさんあっただろうにわずか11年で生涯を終えてしまったんだぞ?あと一ヶ月で、念願のチャオに会うことが出来たと言うのに!
まぁ、しょうがないッスよ。他にもそんな子たくさんいますって。
――まったく…。神様もなぁ、こういう少年少女の命を救うぐらいの慈悲があってもよかろうに。神様なんだからそのぐらい出来ないんかなぁ?
神様は貴方ですよ。
――おぉ、そうじゃったそうじゃったわはははは!
このボケジジィが。
――よし決めたぞ!
何を?
――ワシがこの子の願いを叶えてやる。
ほぇ?
――この子の魂を地上に戻して、チャオと遊ばせてやる。
えぇぇぇぇ?
――なんじゃその反応は。
ダメっスよ。魂を勝手に地上に戻すなんて。違法ですよ違法。
――任せておけ!ちゃんとバレないようにするから!わしに任せておけばだいじょうブイ!
ちがーう。そうじゃなくて…。大体なんでこの子に限ってこんなことするんですか?
――だって今日七夕だし。願いを叶えてあげるには絶好のシチュエーションじゃないか。織姫と彦星はいちゃついてばっかりで人間の願いなんて叶えてくれないし。おっ、これからラブホテルに入る模様ですな。
何を覗き見してるんですか。いや、入る方も入る方だと思いますが…。
――それにさ、この子の誕生日8月7日だって言うから、一ヶ月早い誕生日プレゼントと言う事でいいじゃない。うん、そうだ。こういう日に亡くなった子のこの運がよかったんだ。命日は七夕、一ヵ月後には誕生日が控えているとあれば、なんかプレゼントを渡すしかないじゃないか。
そんな無茶苦茶な。
――いいのいいの。たまたまワシの目に止まったこの子の運がよかったんだ。そういうことにしておけ。
でも、同じような条件に当てはまる人って、いっぱいいると思いますよ。不平不満の嵐だと思うんですけど…。
――だぁかぁらぁ、バレないようにするって言っておるだろうが。
あ、もしかして神様、まさかそういう趣味をもっているんじゃ…。
――バカモン!そんな趣味は持っておらん!ワシが好きなのはナイスバデーの水着の姉ちゃん…えぃい、何を言わすか!もうお前なんか消えてしまえ!
うわあぁぁーーーーー……。
――…さて。じゃあこの紙はどこかバレないトコロに大切に隠しておかねば…。本棚の裏でいいかのう?
エロ本じゃあるまいし。そうつっこむ者は周りには誰もおらず、神様は桜井涼太少年の死亡リストに判を押さないままリストを隠そうとイスから立ち上がった。
しかし。
――うーむ…。
神様は部屋を見渡し、本棚の裏に隠す事は断念した。なぜなら、この書斎の本棚は壁に接着してあるため動かせないのだ。
仮に動かせたとしても、半端じゃない本の重量に神様の力など叶うはずもなく、どちらにせよ動かせなかっただろう。
候補一、本棚の裏は消滅した。
――どこに隠そうか…。
誰にもバレず、最近物忘れの激しい神様の頭でも容易に記憶できる都合のいい隠し場所。
――…そうか、ココに隠せばよいではないか。
神様、書斎入り口のすぐ左にある本棚の本を一冊取り出す。分厚い本で、なんだかよくわからない文字がびっしり書き綴られている。
しかし神様が用が有るのはこの本ではなく、その奥に隠すように置かれている、
――あったあった、コレじゃ。
暑さは100ページほどの、周りに置かれている本に比べるとずいぶんと薄い、ひ弱な本。
黄土色の表紙には、これまたどこの国の言語だか想像も付かない奇怪な文字が書かれている。
一見わけのわからない本だが、いざページを開けてみると。