~god編~ ページ1

ココは天上世界。地上から、遙か遙か上の方にある世界である。大気圏、宇宙を越え、そのまた上にある世界である。
見渡せば周りは雲だらけ。宇宙をも越えるような高さにある世界だけれど、ちゃんと空もある。今日はカラリと晴れた見事な快晴。しかし今は夜中のため、日は沈み空はその色を黒に変え、無数の星達が暗闇の空を飾り立てていた。天上世界のそのまた上にも、宇宙空間が広がっているのかもしれない。
昼間は見事なまでの快晴と地平線まで続く雲河を見渡し、夜中は暗黒の空に浮かぶきらきらと輝く無限大の光を数える…。
いるだけで心が洗われるような、そんな天上世界のど真ん中にでで~んと建っている超巨大建造物。地上の、エベレストぐらいの大きさを誇るそれは、黄金に眩く輝く巨大な宮殿であった。
この天上世界において唯一無二の建造物のとある一室から、お話は始まる。コレは、間違いなくチビッコ戦隊チャオレンジャーです。ご安心ください。

7月7日、午後11時。

――あ~、めんどくせ~。

真っ白な、立派に蓄えられた髭に覆われた口から、愚痴とともにため息も吐き出された。口ひげと顎髭がつながって、サンタクロースのような感じ。
その人物はゆったりとした、ロングスカートのような丈の長さの真っ白なローブを着ていて、座る場所を赤、周りを金で丁寧に塗装した豪華な椅子に座っていた。
椅子に座っている人物の頭部には毛は無かった。褐色の豆電球…に見える頭部の上空には、黄色く発光している直径30センチほどのわっかが浮かんでいた。

この人物こそ、地上、そして天上世界を統治する人物、神様なのである。

神様は、一人書物だらけの書斎に篭り、とある書類に目を通していた。

書類、枚数にして100枚程の枚数の紙全てに、人の顔写真が左上の方に載っていた。
その下には、生年月日と思われる数字や性別、住所、家族構成などなど。好物の食べ物や、好みの異性のタイプ、生涯瞬き回数などがこと細かく記されていた。
それらは当然、顔写真の人物の情報である。そんなものに神様が目を通している理由とは。

――あら、このおばあさん飲酒運転に巻き込まれて死んじゃったんだ、可哀そ。…コインランドリーで女性の下着盗もうとしたら見つかって逃走、途中で車にはねられ死亡?何やってんだこのオヤジは。

神様が目を通している書類の正体。それは、この日死亡した人間のリストだった。
神様は目を通した書類に次々と判子を押していく。判子を押された書類の人間は、その瞬間正式に死亡が確定する。
そのあと死んだ人間の魂が天国へ行くのか地獄へ行くのか閻魔様が判断して、天国の判断を受けた魂は天国での第二の人生をスタートし(死んでるけど)、地獄の判断を受けたものは地獄での第二の人生をスタートする(だから死んでるけど)。ちなみにさっきのオヤジはかなりの高確率で地獄行きと思われる。
判子を押されない限りその魂は閻魔様からの判決が受けられず、黒とも白ともつかない全くの無の世界で宙ぶらりんの状態になってしまう。そのような事は絶対許されない。

つまり神様は今、とぉ~っても大事な仕事をしているのだ。

内容から言えばただ紙に判子を押していくだけなのだが、コレを毎日続けるとなると、神様もちょっとめんどくさい。
しかしいくらめんどくさかろうと、サボり、押し忘れなど許されない。死者の魂を扱っているのだから。…以前書斎の掃除中に判を押していない死者リストを発見して、あわててその場で判子を押した事があると言う事実は、神様の心のタンスの中にそっと封印してある。

――ふぅ、あと少しだ♪

右手に判を持ち、慣れた手つきで次々とリストにポンポンと判を押し付ける。
押した紙は神様から見て左側へ重ねていく。右に見える紙の枚数も残りわずか。
ラストスパートれっつごー。眠い目をこすって次の紙を手に取る神様。

――……ん?

手に取った紙の、左上の顔写真に目が止まった。小学生ぐらいの男の子の写真だった。どこにでもいそうな、普通の少年だ。
ただ『コレ』に載ったということは今日この少年は死んでしまったのだと言うこと。可哀想に。神様はその下に書いてある詳細事項を声に出さずに読んだ。

名前:桜井 涼太(サクライ リョウタ)
年齢:11歳
性別:男
生年月日:8月7日



他にもいろいろな事が書いてあったが、神様が気になったのは以下の項目だった。

死亡原因:交通事故。
死亡時刻:7月7日午後2時56分。
死亡時の状況:横断歩道を歩行中、信号を無視したトラックにはねられ死亡。

その下にはこんな事が書いてあった。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第124号
ページ番号
6 / 14
この作品について
タイトル
チビッコ戦隊チャオレンジャー!~ぎんぎらぎんにさりげなく編~
作者
宏(hiro改,ヒロアキ)
初回掲載
週刊チャオ第121号
最終掲載
週刊チャオ第124号
連載期間
約22日