~ぎんぎらぎんにさりげなく編~ ページ3

そしてブルーとピンクも、麗かな午後をぶち壊された被害者の一人なのである。

「そうです、まさにそうなのですよリーダー。僕は今、まさにリーダーの言うとおりお昼の穏やかな時間を満喫しているのです。そして僕はこの素晴らしい瞬間をできる限り長く、有意義に感じていたいのです。ですから、ココは一つリーダーには大人しく退いてもらいたいと思う所存でございます」
「まてまてまて!何故そこで私が退かにゃならんのだ!こういう場合は爽やかな笑顔で『リーダーも一緒にどうですか?』とお誘いするべきだろう!」一人より二人、二人より三人だ!」
「ソレはリーダーが正の数である場合でしょう。残念ながら僕にとってリーダーとは負の数であるわけです。マイナス10ぐらいでしょうか」
「バカモン!私のどこがマイナス10だ!ゆうにプラス8はあるぞ!私の出かける日は常に晴れだ!運動会も遠足も雨で中止になった記憶はない!」
「誰が晴れ男雨男の話をしましたか。勝手に路線変更するのはやめてください」
「いやなに、巷を賑わす爆弾犯が線路に爆弾を仕掛けたと言うでな。緊急に路線変更したわけだよ」

おぉ神よ。もしわたくしの願いを叶えてくださるならば、今目の前で行われている言葉のPK合戦とでも言うべき、意味不明かつ不毛かつ哀れですらあるこの会話(?)に終止符を。ハルマゲドンの一つでも落としてやってください。
ピンクは聞きたくもない会話を傍らで聞いていて、そう切に願った。黙々と木の実を胃袋に押し込みながら。

さて、そんなピンクさんの願いも先のブルーの場合と同様、天上の神の元へ全速力で走っていった。
と言う事は、神様の機嫌さえよろしければピンクの願いは叶うはず。…しかし残念ながらピンクの願いは叶わなかった。
何故って。そりゃあ、さ。神様だって人の子だし。欲求の三つ四つ五つぐらい持ってるよ。
そんな欲求の中の一つ、『睡眠欲』が現在、神様の心をばっちり支配しているのであった。ぐーすかぴー。
神様が寝ているんじゃあ、そりゃあしょうがない。結局ピンクの願いは神様には届かず、その後チャオガーデンにハルマゲドンが落ちてきたと言う歴史はない。

「さぁーて皆の衆!今回キミ達の元を訪れたのは他でもない!」

ふっ、とピンクの意識を現実へ引き戻したのは、黒板を爪で引っかいた時に出る音と同等以上に聞きたくない、レッドの声だった。自動耳栓きでもあれば以下略。

「皆の衆!一ヵ月後に、我がガーデンの可愛い園児達が織り成すお遊戯会が控えているのは当然知っているであろう?」
「はい」
「勿論知っていますわ」

お遊戯会は体育館で行われ、そこにはガーデン管理に携わっている人間や、シティエスケープに住んでいる人なんかも訪れる(このガーデンはシティエスケープに建設されているのだ)。
シティエスケープに住んでいる人たちが訪れる理由は、単純にチャオの可愛い姿が見たいと言う人もいるし、引き取り主になってもいいかなぁと思った人がやってくる場合もある。
お遊戯会は、このガーデンにおける数少ないイベントの一つなのだ。
そんな大事な日に、この男は何をしようというのか。

「そこでだ!私は考えた!そのお遊戯会に、我らも参加しようじゃないか!」

大声で、あくまでも真剣にレッドは言い放つ。
一応言っておくと、お遊戯会に参加するのは勿論、子供のチャオのみである。
そのほかの、つまりチャオレンジャーたちのように「園児」と呼べる年齢を過ぎたチャオは、人間と同じようにお遊戯を見学するのがほとんどである。
つまり、レッドの発言は全く持って理解不能なものなのである。

「リーダー?リーダーが常に冷静さを欠いているということは僕も重々承知しています。それでも言います、落ち着いてください。いきなり何を言い出すんですか貴方は」

そういいながらブルーは、残り数センチほどの大きさとなった『地中海風木の実』を口にポイッ、と放り込んだ。
ピンクはまだ食事の途中だが、終えるのに数分とかからないトコロまで食べ終えている。
レッドは何もない真上を指差し、落ち着いてくれと言う要望など完全無視して続ける。

「実はな!ついさっき、ホントに先ほどの出来事なのだが、疑わずに聞いてくれたまえ!私が気持ちよく夢幻の世界に入り浸っていた時、いやつまり昼寝をしていたわけだが、突如として神が私にお告げを残していったのだ!」

そこまで言い終えた時、ピンクが木の実を食べ終えた。そしてそそくさとその場を離れようとして、立ち上がろうとする

「待ちたまえピンク君!最後まで話を聞いてくれたまえ!」
「お断り申し上げます」
「キミにとっても重要な話なのだ!」
「…ま、食休み程度に聞いて差し上げますわ」

ピンクは再びその場に座り込んだ。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第121号
ページ番号
3 / 14
この作品について
タイトル
チビッコ戦隊チャオレンジャー!~ぎんぎらぎんにさりげなく編~
作者
宏(hiro改,ヒロアキ)
初回掲載
週刊チャオ第121号
最終掲載
週刊チャオ第124号
連載期間
約22日