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珍しくピンクが先頭を歩く。モニターには丸い木の実が表示されているが、それを無視して歩く。
「よよ!?ピンク隊員、丸い木の実を忘れてあるぞ!」
「五月蝿いですわ。こんなもの無視してさっさと進んでしまえばよいのです」
ピンクが仕掛けの範囲外に出ようとする。すると。
パカッ。ドザーッ!
「……」
ずぶ濡れのピンク。範囲外に出ようとした時、天井が開いてそこからコントよろしく大量の水が降ってきたのだ。
それを見て馬鹿笑いのレッド。
「はっはははーッ!いやなんと!水が降ってきたではないか!こんな仕掛けを考えた人物はたいそうお茶目でユーモアのセンス溢れる人物だと思わんかね!」
しばらく硬直していたピンクだっただが
「わたくし堪忍袋の緒がぶち切れましたわ。悪いですけど、抜けさせていただきます」
そういうとピンクは、洞窟の岩の陰に隠れていた、マンホールのような形の簡易ワープ装置を起動し、上に乗った。
「むッ!ピンク君、途中リタイアは認めんといったはずだぞッ!」
「ごきげんよう」
ワープ装置の上に乗ったピンクは、その姿をゆっくりと透けさせ、やがて見えなくなった。
「うむぅ、行ってしまった」
「出来れば僕も途中リタイアさせていただきたいのですが」
「認めん」
「何故です?」
「私が寂しいではないか」
ブルーとレッドは洞窟を抜け、湖まで来た。ココを渡ればあとはもうゴールまで一直線だ。
「この湖にはピラニアはいないでしょうね?」
「うむ、大丈夫だろう。安心して渡るがよいぞ!」
「では……」
ブルーは湖に向かって飛び込む。通常ならそのまま湖を泳いで渡るところだが、やめた。湖底に巨大な影を発見したからだ。
ブルーは水面ギリギリのところで急上昇。それに釣られるように、湖から巨大な蛇っぽい細長い生き物が出てきた。
そのままブルーは高度を上げ続け、それを追って蛇も首を伸ばす。やがて蛇のほうが音を上げ、湖に帰っていった。
「はぁっはっはっはーッ!ブルーよ、無事か!」
ブルーの耳が下品な笑い声をキャッチ。高度をゆっくり下げながら
「やっぱりココにも何かありましたね……。リーダー、今のはなんです?」
「今のはいわゆる未確認生物というヤツだ。とある湖から拝借してきた。うん、確か名前はネッシーとか何とかいっていたな」
ブルーはもう一度湖を見る。なるほど、湖全体に黒い影が映っている。さっき蛇だと思った部分は、首の一部分だったわけだ。
「ずいぶん凶暴な生き物でな、ココまで運ぶのに苦労したぞ。何度も食われそうになった」
「そのままリーダーがネッシーの肥やしになってくれていればダイヤモンドコースも平和だったのでしょうね」
「何をいう。平和すぎてうんざりだといっていたのはキミ達のほうではないか」
「僕らはリーダーのくだらない遊びにうんざりしていたのです。ダイヤモンドコースにネッシーを連れて来るよう要求した覚えはありません」
「私も受けた覚えは無い」
「それより今の会話はちゃんと記憶しておいてくださいよ?ようやくこのコースに起きた異変の原因はリーダーの仕業だということを自ら自白してくれたんですから」
「私のシュレッダーはせっかちだと言ったはずだ。故にそのようなことを発言したという記憶は無い」
「僕のコピー機でしっかりコピーしておきました。テープレコーダーで録音もしておきました。僕の脳内でしか閲覧、再生できないのが残念ですが」
「そのようなものは当てにならん」
「ですからリーダーのコピー機でコピーしておいて欲しかったのですが」
「私はコピー機を持っておらん。コレも言ったはずだ。ついでに購入する気も皆無だ」
「周りの社員がぜひコピー機導入を実現して欲しいと訴えてます」
「断る」
「何故です?」
「必要な文書は私の脳内にしっかりと刻まれておるからだ!」
「それこそ当てになりません、というか当てにならないからコピー機を欲しがっているのです」
そんな不毛な会話をしていると、いつの間にやら湖を渡り終えていた。後はゴールまで走るのみ。