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「さぁブルー隊員!いよいよ感動のフィナーレだ!涙の用意はできたかね?」
「無事ゴールしても、僕は無感動でしょう。涙の用意もいらないでしょう。断言できます。確信しています」
「うむ!いい返事だ!さぁ行こうではないか!我らを待ってくれている百万人のファンの下へ!」
「それはエキストラの方々ですか?」
ブルーとレッドが鮮やかな虹色に彩色された最後のストレートを渡ろうとした時、後ろから緑色の物体がボロボロになった体で、ほふく前進で二人の下に近づいてきた。グリーンだった。
「これはこれは!グッリーン隊員ではないか!いやはや、キミの生命力には驚愕せざるを得んな!不死鳥の生き血でも飲んだのかね?」
「そ、そんなことはどうでもいい……。貴様だけは一度地獄を見せてやらないと気が済まん……」
グリーンはボロボロの体を無理やり奮い立たせレッドを睨み付ける。
「はははーッ!私に復讐したいのであれば私を追い抜いて見せろッ!」
そういうとレッドは黄色の道を駆け抜けた。ある程度進んだところでひょいとジャンプしたのをグリーンは見逃した。
「どうした明智君!君の実力はそんなものかね!?」
壁に手を突いて激しく呼吸を繰り返していたグリーンだったが、突然うおおおお!、と絶叫しながらレッドの通った道に向かって走り出した。
レッドに向かって一直線、KO寸前のボクサーのようなグリーンは黄色の道を駆け抜け、そして消えた。
ダイヤモンドコースの最後の難関、落とし穴がその役目を果たしたのだった。
ブルーが穴に近づいてみると、その穴は明らかに通常より深くなっていた。
「はっはははーのはーだ!明智君、この勝負は私の勝ちのようだな!うむ、その穴は出血大サービスで深さが通常の十割増になってある。自力では出られまい!」
「グリーンさーん。生きてますかー?」
ブルーの呼びかけに返事が帰ってくることは無かった。
「さぁブルー隊員!ゴールはもうすぐ目の前だ!二人で栄光の扉を開こうぞ!」
「そのような扉どこにも見当たりませんしあったとしてもリーダーと協力して開ける気はありません」
「さぁゆくぞ!」
ブルーとレッドは虹色のストレートの上を前進する。行き着いた先には、いつもと同じ表彰台があった。
レッドはすばやく表彰台の一位の台に上り
「やった!やったぞ!ブルー隊員、ついに我らはこの凶悪化したダイヤモンドコースを制覇したのだ!私は今猛烈に感動している!」
「お言葉ですが、本来の目的はダイヤモンドコースに起きた異変の調査、原因究明にあったのでは?まあ原因は百パーセントリーダーであることに間違いありませんが」
「ではブルー隊員!コレより我らは調査報告のために帰還する!最後まで気を緩めるな!」
「誰に報告するというのです?」
「知らん!」
―チャオガーデン・夕暮れ―
「皆の衆ご苦労であった!貴君等の協力のおかげで無事、任務を終えることが出来た!」
「依頼された覚えはありません。それに無事じゃないでしょう?犠牲者が一人出ています。……あぁ、そういえばオモチャオの集団消失。アレもリーダーの仕業でしょう?」
「全く……。無駄な時間を浪費してしまいましたわ」
「うん?そういえばグリーン隊員とイエロー隊員はどうした?寄り道でもしてるのか?」
「グリーンさんはリーダーの掘った穴に落ちてそのまま。イエローさんは……恐らくスタート地点で寝ているものと思われます」
「ふむ?まったくしょうのない。イエロー隊員は私が迎えに行ってくる。君たちはグリーン隊員の救出に当たれ!」
「お断りします」
「お断りですわ」
「ではたのんだぞ!」
レッドはそう言い残し、レース会場へ通ずる洞窟へと消えていった。
「ふぅ…今日は疲れました。ゆっくり休みましょう」
「いつになったらこの状況は変わるのでしょう。まだ見ぬ白馬の王子様がわたくしに愛の手を差し伸べてくれるのはいつの日なのでしょう」
こうして今回の彼らの任務は終わった。リーダーに振り回されただけだけど。
しかし、悪はいつ襲ってくるかわからない!来ないかもしれないけど。
いつか来るかもしれない巨大な悪と対峙する為に、彼らに休息はない!毎日が休みみたいなもんだけど。
戦えチャオレンジャー!負けるなチャオレンジャー!
その燃える熱い魂で!邪悪な闇を打ち滅ぼせチャオレンジャー!!
ダイヤモンドコース激闘編・完
―ダイヤモンドコース・夜―
「ヒ…ヒーックシュン!…だ、誰かーッ!た、助けてくれーッ!ここから出してくれーッ……」
完