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ブルーがレッドに冷静に対応するのを、チャオレンジャー以外の他のチャオたちは目を真ん丸くしてみている。なかにはびっくりして泣き出しているチャオも居る。
それを見てブルーは
「・・・とりあえず場所を移動しましょう。ホラ、みんな怖がって泣いてますよ?」
「それは嬉し涙だろう、皆悪人から解放されて喜んでおるのだ。うん、そんなに感謝せずともよいぞ。私は当然のことをしたまでだからな」
「ドアを蹴破って子供達を泣かすことのどこが当然のことなんでしょう?それに、どう見れば子供達が喜んでいるように見えるのでしょう?どう見ても怖がっているじゃないですか、震えてますし」
「ははは、キミはまだ観察力が足りないな。目で見るのではない、心の目で見るのだ」
「足りないのはリーダーの視力と人の話を聞く耳ではないですか?」
「私はこの世界に現存するチャオの中でもナンバーワンの視力と聴力を有していると確信している。五十メートル先の綿棒に書いてある文字も読めるし、百メートル先で落ちた小銭の音も聞き分けるぞ!」
「その話の真偽はこの際置いておきます、とりあえず移動しましょう」
「ふむ、よかろう」
こうして嵐は去っていった。残ったのは泣きはらしているチャオと、崩された積み木と、吹っ飛ばされたドアだけだった。
―チャオガーデン―
「ふう……結局ガーデンに戻ってきてしまいました」
「さて、皆の衆が帰ってきたところでそろそろ特訓でも開始しようではないか!」
「その特訓に嫌気がさしたから僕たちは逃げたのです、というよりリーダーが勝手にどこかへいってしまったのですけれど」
「さぁ皆の衆!レース会場へ向かおうぞ!」
「人の話を……もういいです」
ブルーがあきらめていたところで、今までずっと放置プレイ三人集の一角を担っていたグリーンが、ようやく会話に参加。
「あのなぁリーダー。俺達ゃ、もううんざりなんだよ。同じところをぐるぐる走ってるだけの特訓内容には」
「まぁ、かといって僕たちに他に暇をつぶす手段があるかといえば答えはNOですが……」
「うむ!君たちがそういうだろうと思って、今朝私がダイヤモンドコースをよりスリリングに、よりエキサイティングに改造しておいた!コレなら文句あるまい!?」
「今朝?今朝の何時ごろに改造を施したんですか?」
「早朝四時に忍び込み、約二時間で作業は終わった。いやなに、私にかかればあんなもの、缶ジュースのプルタブを開けるに等しい作業なのだよ」
「リーダーはプルタブを開けるのに二時間以上もかかるのかという突っ込みはおいておきます。すると、今は十一時ですから……六時から十一時までにダイヤモンドレースに挑戦した人(チャオ)は、多大な迷惑を被ったのではないですか?」
「何が迷惑なものか、皆私に対する感謝の念でいっぱいだろう!平凡で単調だったコースが翌朝になってみるとアラ不思議!楽しさいっぱい夢いっぱいのワンダーランドに変貌していたのだからな!」
そのとき、チャオレンジャー達の居るガーデンの洞窟から担架でチャオが運ばれてきた。
「どいてどいて!」
一匹のチャオを乗せた担架は、チャオレンジャーの横を走り抜けていった。そしてガーデンから出て行く。保健室に向かったのだろう。
さらに洞窟の中から四匹のチャオが出てくる。担架の後を追おうとしたそのチャオ達の一人を、グリーンが引き止める。
「おい、なにがあったんだ?」
「お、俺達ダイヤモンドコースでレースをしてたんだけど……。トップのヤツが崖を上るところで川に落ちたんだよ。そしたら……」
「そしたら?」
「か、川にピ、ピラニアが居たんだよ!それも一匹や二匹じゃない!十匹以上は居たぞ!」
「・・・・・・」
「その、トップだったチャオというのが・・・先ほど担架に乗せられた?」
「そうだ。仲間と一緒に何とか川から引き上げたんだが・・・・・・あぁ、アイツが心配だ。俺も行かなきゃ」
そういって彼も、担架の後を追っていった。