第二章 十四話 「闘技場

「わぁーーーーーーーー」(いつもこう始まるなぁ
試合が始まって、数十分がたとうとしていた。両者、共に動く気配はない。なので、何も変かはないのだ。しかし、両者の体力は、徐々に削られている。何故か、今は、日が照っているのだ。そんなゆるいレベルではないが、多分、火の遺跡と同じくらいの気温になっているのだろう。そんな中、最初に変かを見せたのは、観客だった。汗を流していない者はいない。アイスを買っても、冷蔵庫から出した瞬間にとけてしまう。その暑さに耐えかねて、倒れる者もいた。そしてようやく、行動したのがズークの方だ。言い忘れたけど、対戦相手のクロスケは、真っ黒のニュートラルノーマルタイプのチャオで、手足にイノシシパーツ。そのほかには、特に目立つ物はなかった。いかにも弱そうであり、いかにもなぞめいているチャオである。
「そっちから来ないなら、こっちから行かせてもらうぜ!疾風(ハヤテ)!」
ズークは、矢を引き、放つ。この繰り返しを、手を素早く動かし、素早く繰り返す。そして、無数の矢が、クロスケに襲いかかる。そして、ズークは腕を下げ、弓をおろした。その額には、ものすごい汗をかいている。両者とも、最初から、体力が、限界に近くなっていた。そして、ズークの放った矢が、クロスケに接触する。その、直前だった。
「やっぱり、遠距離型なのか。武器を見て分かったけれど、本当にそうだったとはね。リフレクト・・・!」
そして、矢とクロスケは、ぶつかった。この状況だったら、もうズークが勝ってもおかしくなかった。だが、そんなに甘いことはない。矢は、一瞬でクロスケが作り出したCAOSの壁に、吸収された。
「何っ、吸収した!?」
ズークは驚きの表情を現した。そして、驚きのあまり、その場に立ちつくしてしまう。そして、
「これが僕の能力」
CAOSの壁が、まぶしい光を放ち、
「カウンターだ!」
壁から、ズークの放った矢が、ズークに向かって飛んでくる。まるで、ハチの大群のように。ズークは、そこを動かなかった。いや、動けなかった。あまりのショックで、その場に、磁石で吸い付けられたように。だが、その矢は、ズークには当たらなかった。一本たりとも当たらなかったのだ。しかし、
「今のははったり、降参しないのならば、今度は当てるからね。」
「くそっ、攻撃をはね返すのか。これじゃぁうかつに攻撃できない。」
ズークは、とても困った表情を出し、悩み込んだ。
「どうしたんだい?。攻撃してこないのか。」
「うるさいっ、少し黙ってろ。」
クロスケの挑発に、ズークはプチンと来てしまい、クロスケに怒鳴りつけた。けれど、ズークも少しは冷静になった。そんな挑発には断じて乗らない。冷静、それは最大の防御手段なのだ。そして、攻略の、鍵なのだ。それは、深い意味を持っていた。意味は、そのとおりのこと。戦いの、鍵なのだ。
そして、ある欠点に気がついた。相手は、攻撃してこない、それは何故か、すなわち、相手の攻撃手段が、カウンターの他に、何もないのだ。そして、ズークは、さわやかな笑顔をうかべた。
「お前の弱点、分かったぜ!。お前の、最大の弱点がな!」
「何?僕の防御に、穴があるというのか。」
首を傾げるながら、平凡な声を出す。だが、ズークには焦りも見えていた。
「お前、攻撃できないだろう」
ズークの言ったことには、どうやらクロスケは図星らしい。なぜなら、クロスケの汗が一気に噴き出したからだ。
「でも、僕が攻撃できなくても、君も攻撃できないんじゃないか。」
クロスケは、訪ねかけるように、焦りととまどいの混じった声で言い放った。それでも、ズークは、
「その分、練習をおこたって来たっつぅー事だよな。」
と反論する。
「ふ、ふん。それがどうした。」
このままクロスケは、徐々にズークの言葉に、動揺していくのだった・・・

このページについて
掲載号
週刊チャオ第149号
ページ番号
66 / 73
この作品について
タイトル
CHAO  OF  STORY
作者
ポトッチ(ぽと)
初回掲載
週刊チャオ第131号
最終掲載
週刊チャオ第152号
連載期間
約5ヵ月11日