第二章 十三話 「闘技場

ぽと2005/01/20 22:50
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目の前が、もやもやする。
その時トビワンは、控え室のソファーに、横になっていた。目の前には、パワンの大きな角が、頭をのぞかせている。ふと、トビワンは、試合をしていたことを思い出した。そして、起きあがる。意識ははっきりしていたが、体のあちこちが痛む、そして、その時、全てをさとった。
「負けた、チャオか。」
トビワンは、少し、暗く、どんよりとした気持ちになった。同時に、悔しさもあふれてくる。
「トビワン!。」
トビワンの耳に、その大声が、聞こえすぎるほど、聞こえた。パワンの声だ。周りを見渡すと、他のチャオは、誰もいなかった。トビワンとパワン、この二人だけが控え室に残っているのだ。そしてトビワンは、目の前にいるパワンに、ゆっくりと訪ねる。
「自分は、負けたチャオね。」
パワンは、その質問に、すぐに答えを出すことが出来なかった。そして、数十秒、二人にとっては、遅すぎる数十秒がたち、パワンはゆっくりうなずいた。一体どの位ねむっていたのか、そんな疑問を抱きながらも、トビワンは、ゆっくり、ソファーから降りて、しっかりと立ち上がる。
「他のみんなは、ズークの試合を見に行っているよ。」
パワンは、トビワンに対して、まるで母親のように、優しい声で言う。
「もう大丈夫チャオ。パワンも、ズークの試合を見てくるといいチャオ。」
その後、パワンは長いこと悩んで、分かったとうなずく。でも、心配そうな表情を一瞬だけ、見せた。
そして、
「何かあったら、警備員さんでも、誰でもいいから、すぐに言うんだよ。」
そんなことは言われなくても分かっている。トビワンは、相手の気持ちを読むという、すごい能力を持っているから。でも本当は、大丈夫なんかじゃなかった。傷はないけど、体力を使いすぎて、へとへとで、今でも倒れそうだし、体中が、ずきずきと痛むのだ。
パワンが去ってから、すぐ、トビワンはこうつぶやいたのだ。
「ふぅ、さすがに長時間やると、体力を使いすぎるチャオ」、と。
その時トビワンの意識に、直接語りかけてくる存在があった。
【いいのか?多少ならお前の体のことくらい分かる。体全体痛むのと、体力が空っぽで、今にも倒れそうなこと。無理して立っているし、大丈夫なんて言っても、全然大丈夫ではないだろう】
その声にトビワンは、むっとして、こう、自分の意識に語りかける。でも、どこか、嬉しそうにも見えたのだが。
【お前から話しかけてくるなんて、久しぶりチャオね。体力を使ったのは、お前のせいチャオよ。出しゃばらなければ良かったチャオ。】
決して怒っているわけではない。優しく語りかけているのだ。自分の意識の中の、”ある存在”に。
え?何故あそこで、”ある存在”を出したかって?それは、読者の皆様に存在を知ってもらいたくて。(マテ

このページについて
掲載号
週刊チャオ第149号
ページ番号
65 / 73
この作品について
タイトル
CHAO  OF  STORY
作者
ポトッチ(ぽと)
初回掲載
週刊チャオ第131号
最終掲載
週刊チャオ第152号
連載期間
約5ヵ月11日