第二章 十一話 「闘技場」
「わぁーーーーーーーーーーーー!」
観客の声で、会場の、全ての音がかき消される。もしかしたら、その声
で、ある声がかき消されたかもしれない。そう。大事な、大事な声
も・・・
「そんな攻撃しか・・・出来ないチャオか」
レイには聞こえない。そんな当たり前のこと、分かっていても、トビワ
ンは、こうつぶやいた。その口元には、ニヤッと、笑っていたのかもし
れない。トビワンは、もう一度立ち上がる。ゆっくり、少しず
つ・・・。その間にも、レイは迫っていた。右手に輝くCAOSの光り
を徐々に大きくさせながら。
「ふん、立ち上がったか。だが貴様には、もう、武器はない。この勝負
は、我の勝ちだな。」
「まだ、終わっちゃいないチャオ。」
レイは、少し立ち止まって、何だと・・・。と、レイは動揺した様子で
いる。聞こえないはずの自分の声が、聞こえたと思ったからだろう。だ
が、すぐにまた歩き出す。少しずつスピードを右手のCAOSの量と一
緒上げて。
「おどろいているようチャオね。でも偶然だと思ってる。けど、偶然で
はないチャオよ。」
トビワンは、レイの心を読んだように言う。でも、あてずっぽでは無い
ようで、レイはかなり図星のようだ。(聞こえないはずでは?と思った
方、それは次回で)
「それと、武器は無いって言ってたチャオね。けど、そんなに簡単に、
あの武器を手放すことはないチャオよ。」
突然、トビワンの角の先、手足の先が、赤色になって、羽根が、とても
大きなフェニックスの翼になり、トビワンの体から、赤い、CAOSの
光りが表に現れる。その場でレイは、立ち止まった。
「貴様、何をしたのだ。」
その声に、トビワンはすぐに答えを出す。怪しい笑みを浮かべて。
「トビワンがやったのではない。私がやったのだ。」
トビワンは、何者かに操られたように、別の人格が頭を出した。声も、
何もかも、全てトビワンでは無かった。まるで、女神のように、美しい
声だ。トビワンは、右手を方の高さまで上げる。そこに、真っ赤に燃え
る炎が、どこからか、まるで空間を移動したように、トビワンの手元に
集まりだした。その時は、すでにレイはすぐ近くに迫っていた。あと
二、三歩歩けばトビワンに攻撃が届くだろう。
「今さら、何をしようと、無駄なことだ。」
右手のCAOSの固まりが、とても大きくなった。そして、トビワンの
目の前に、とうとう来たのだ。その時だ、本当に一瞬だった。右手にあ
ったCAOSが、一瞬で赤く燃える槍の姿に変わった。と、同時にレイ
の右手に、少し深く切り傷が出来た。
「なっ、、」
その瞬間、レイの右手に固まっていたCAOSは消滅した。おどろい
て、まとまっていたCAOSを、消してしまったのだ。レイはそのま
ま、焦りの表情を見せ、一番最初にいた場所へ戻ろうと、後ろに大きく
ジャンプした。その瞬間にも、左手に一つ、傷口が出来た。
「何だ、この程度の相手だったのか。次は、のど元を狙うぞ」
トビワンは槍を構え直しながら、そうつぶやく。その間にもレイは、焦
りを隠せない様子だ。
「何故だ。何故見切れない。何も見えなかった・・・」
時を同じくして、レクス様ご一行~~♪
「どうやらトビワン、本気を出したみたいだね。」
ふとレクスが、その声がした方へ向く。そこにある姿は、切り傷だらけ
の、パワンの姿だ。その姿に、レクス、いや他のおまけも(おまけっ
て・・・ とてもおどろいた様子でいる。
「どこいってたの。パワン」
と、最初に問いかけたのはウキワンだ。
「いろいろあったからね。」
すぐパワンが答えると、おまけもすぐ答える。(またおまけですか
「ふ~んそんなことがあったんだ。」(えっ通じたの?
「ついでに聞きたいことがあるんだけど、トビワンのあの姿って一体。
それにあの槍も」(ついでなのか?
「あぁあれか、トビワンの本性、って言うわけでもないけど、なんて言
えばいいだろう。まあ、中にねむる野獣って所かな。ちょうどそこにい
るレクスや、僕もだけど。」
「僕も?」
レクスはすかさず訪ねる。それでパワンは、あわてて口をふさいだ。だ
がすでに時遅し、ほんの少しだけでも、あのことを言ってしまったの
だ、あれを聞けばレクスは・・・