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あのひとのしたいことをしたらよかった。
そしたら、今もあのひとのとなりにいられたのに・・・。

もう仲直りはできないのかしら?
あのひとは、遠くへ行ったままになってしまうのかしら?

悲しい考えがヒーローチャオの胸をしめつけます。

そのせいでしょうか、ヒーローチャオは急に歩きたくなくなってしまいました。
なんだか、全身のちからが抜けていくような気がして、その場に座り込んでしまいました。

しばらくすると、ヒーローチャオのまわりを取りかこむようにしてお花が咲きはじめました。
だれかを誘うような、ふしぎな感じのするお花にかこまれたまま、ヒーローチャオは眠るようにその場に座りつづけました。

偶然、そこを通りかかったダークチャオが、ヒーローチャオに近づいていきます・・・。


そのころ、ニュートラルチャオは、森の中をオサンポしていました。

ナイツチャオといっしょにお空を飛んでみたり、ソニックチャオと競走したりしました。
飛び入り参加したすもう大会では、あっさりとオニチャオに負けてしまいました。

たまには、別のおともだちとあそぶのもいいなぁと、ニュートラルチャオは思っていました。
でも、なんだか心のそこから楽しめないような気もしていました。

そんな気持ちのまま、ニュートラルチャオは小川にやってきました。

この小川は、海まで流れてるんだ。
行ってみたいなぁ。
海まで泳いで行けるかな?

そんな風に思ったとき、ニュートラルチャオは心から楽しい気持ちになれなかったわけに、やっと気がつきました。

ひとりで海に行きたいと思ったことは一度もありません。
いつもいっしょにいるあのコとふたりで行きたいと思っていたのです。
ずっといっしょにいようねと約束したヒーローチャオといっしょに行きたかったのです。

そのヒーローチャオは、今はとなりにはいないのです。
ケンカして、わかれてしまいました。

今ならまだ間に合うでしょうか?
ニュートラルチャオは、あわててヒーローチャオといっしょにいた場所へ走っていきました。

でも、そこにはヒーローチャオは、もういませんでした。
ただ、ヒーローチャオが描いたニュートラルチャオの絵があるだけでした。

ニュートラルチャオは、タマゴをだっこしているじぶんの姿が描かれた、その絵を見つけました。
そして、そのとなりにだれも描かれていないことを、とてもかなしいとおもいました。

だから、ニュートラルチャオは、じぶんのとなりに絵を描きたしました。
今でも、いつもそばにいてほしいと思っているあのコの絵を。

絵を描きおわると、ニュートラルチャオは、ヒーローチャオを探しに行きました。
今、完成した絵を現実のものにするために、ニュートラルチャオは走りだしたのです。


チャオのまわりにお花が咲いたときを、「はんしょくき」といいます。
お花が咲いている短い間だけ、チャオはタマゴを産むことができるのです。

今、ヒーローチャオのまわりに咲いているのが、「はんしょくき」に咲くお花なのです。

ずっといっしょにいて、とっても仲の良かったニュートラルチャオとケンカしてしまったこんなときに「はんしょくき」になるなんて、なんてタイミングが悪いのでしょう。

ふたりのあいだに、こどもがほしいとおもっていました。
ずっと、「はんしょくき」がくるのを待っていました。
やっと、「はんしょくき」がきました。

なのに、あのひとはとなりにいないのです。


このまま「はんしょくき」が、おわってしまうのでしょうか?
つぎに「はんしょくき」がくるのは、いつになるのでしょう?
もしかしたら、もう2度と「はんしょくき」がこないかもしれません。

タマゴを産めるのは、今だけなのです。
でも、だいすきなあのひとはきてくれそうにありません。

ヒーローチャオは、かなしい気持ちのまま、お花にかこまれて座りつづけていました。

そこへ、ダークチャオがやってきました。
手に一輪のお花を持って、ボクといっしょにおどりませんか?と、ちょっとおどけながらヒーローチャオに近づいていきます。
ダークチャオは、手に持ったお花をヒーローチャオに差し出して、返事を待ちました。



つづく

このページについて
掲載号
週刊チャオ第31号
ページ番号
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この作品について
タイトル
チャオの森の恋人
作者
懐仲時計
初回掲載
週刊チャオ第31号