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人里離れた山の中に、チャオたちの暮らす森があります。
あつい夏がおわったあとの、気持ちのいい風が森のなかを吹きぬけていきます。
チャオたちは、きょうも元気にあそんでいます。

秋がきて、ちょっとすずしくなっても、小川で楽しそうに泳いでいるチャオがいます。
そうです、ミズチャオがのんびりと、でも他のチャオたちにくらべたら、なかなかはやいスピードで泳いでいます。
そのすぐうしろを、こどものチャオが、がんばって泳いでいます。

泳ぐのがはやいミズチャオについていくのは大変なことですけれど、このこどものチャオは遅れないでついていくことができています。
もしかしたら、この森で二番目に泳ぐのがはやいチャオかもしれません。
あんがいミズチャオも、このコに負けないように、ひっしに泳いでいるのかもしれませんね。

森のなかでは、ソニックチャオがいっしょうけんめいに走っています。
いつもは楽しそうに走りまわっているのですが、きょうはみょうに気合がはいっています。

ときどき、「くらうちんぐすたーと」の練習をしたりしています。
これじゃ、なんだか走る特訓をしているみたいですね。
こんど、だれかと競走でもするのでしょうか?

別の場所では、チャオたちが、すもうをしています。
ここでは、やっぱり、ちから持ちのオニチャオが、一番です。
連戦連勝、向かうところ敵なしです。

こんなふうに元気にあそんでいるチャオたちから少しはなれたところに、ふたりのチャオがならんで座っています。
いつもふたりで仲良く寄り添っているチャオたちです。

ひとりはきれいな青い色をしたニュートラルチャオで、もうひとりは白い色がすてきなヒーローチャオです。
きょうも、いつものようにふたりで楽しそうにおはなしをしています。

すずしくなったね。
お空がとってもきれいね。
こんどいっしょに飛んでみようよ。

あの小川はどこまで流れていくのかな?
海まで流れていくのよ。
いつかふたりで海にいきたいね。

ずっといっしょにいようね。
うん。
だいすきだよ。

すてきな恋人同士の会話がつづいています。
いつもいっしょにいるふたりは、いつもとおなじようにおはなしをしていました。
でも、きょうは、ちょっと雰囲気がちがってきました。

空を見上げながら、ニュートラルチャオが、きょうはちょっと遠くまでオサンポしてみようよと呼びかけます。
でも、ヒーローチャオは、地面にお絵かきをしながら、見て見て新しい絵が描けるようになったのよとこたえました。

こんなに気持ちのいいお天気なんだから、オサンポしないともったいないよ。
せっかく、新しい絵を描けるようになったんだから、きょうはお絵かきしていたいのよ。

あらら、大変。
言い争いになってしまいました。

いいよ、それじゃひとりでオサンポしてくる。
ふんっだ。

ニュートラルチャオは、ひとりでどこかへ行ってしまいました。
ヒーローチャオはそのままお絵かきを続けていましたが、しばらくすると寂しそうに、そのばしょをはなれました。

そこには、さっきまでとなりにいたニュートラルチャオがタマゴをだっこしている絵が描かれていました。
その絵のニュートラルチャオのとなりにも、だれかがいるみたいですけど、描きかけなのでだれなのか見分けがつきません。
きっとヒーローチャオは、そこにじぶんを描きたかったのでしょう。
でも、だいすきなニュートラルチャオが、ひとりでどこかへ行ってしまった今では、そこにじぶんの絵を描くことができなくなったのです。

ヒーローチャオは、いろいろなことを考えながら、ニュートラルチャオと反対方向に歩いていきました。

はじめてニュートラルチャオと出会った日のこと。
あの時は、ふたりとも、まだこどもでした。

ニュートラルチャオのことを、すきだと意識しはじめた頃のこと。
同じ頃から、ニュートラルチャオもじぶんのことをすきになってたって、あとで教えてくれました。

いつもいっしょにいるようになったときのこと。
いっしょにいるだけで幸せでした。

そう、いっしょにいるだけでよかったのです。
あのひとといっしょにいられれば、それだけでよかったはずなのに・・・。

なのに、きょうはじぶんのしたいことを選んでしまいました。



つづく

このページについて
掲載号
週刊チャオ第31号
ページ番号
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この作品について
タイトル
チャオの森の恋人
作者
懐仲時計
初回掲載
週刊チャオ第31号