第四話 ページ5
どれくらいの時間が経過しただろう、お互いに喋らなくなってから。
実際には十分も経過していないだろうが、部屋に充満する重苦しい空気が、それを一時間分に
も二時間分にも感じさせる。
カトレアには見えていないだろうが、僕は、苦笑いを浮かべていた。
これからどうしようか。カトレアにどうしてあげたらいいのか。
それらを、考えた結果である。
「カトレア、おいで」
僕は目の前の、ピンク色をした小さなチャオを拾い上げる。
不意に後ろから抱き上げられて、ばつの悪そうな顔をしてじたばた暴れるのをなだめるよう
に、僕は頼んだ。小さな声で。
「ちょっと、目を瞑(つむ)っててくれない?」
そういいながら、体をこちらに向き直させる。
「なんで」
「ま、いいからいいから」
ほんの少しだけ、と後押しして、渋々承諾してもらった。
口を尖らせ、妙に力を込めて目を瞑る、というよりは必死で閉じているといった方が正しい。
僕は、怒り心頭の恵比寿様のような顔をしたチャオを顔の高さまで持ち上げた。
そしてその——頬を、すっと抱き寄せた。