第四話 ページ6
「な、な、な、な、な」
壊れたぜんまい式玩具のように、短く息を吐くように『な』を連発するカトレア。今度は、
虚を突かれた金剛力士像のような顔で。
「これで機嫌直して、ね」
果たしてこの言葉が届いているのか、カトレアはただただ、僕を見上げるだけだった。
それともう一つ、僕はカトレアに言わなければならないことが——。
「にゃあ」
「あ、タマ。ちょうどいい所に」
僕はカトレアをひとまず床に降ろし、階段を上がってきたタマを呼び寄せる。
「あのね、カトレア。タマはね、オスだよ」
「は?」
おあつらえ向きに、タマが尻尾を立てている。僕はタマのお尻を、カトレアに向ける。
「ほら、猫はね、お尻の下に……」
「そ、それを早く言え! ってか、見せんなー!」
そう叫ぶと、僕の横をダッシュですり抜けるカトレア。そして、部屋を出る前に一言。
「死ね! とにかく死ね!」
物騒な言葉を吐き捨てて、階段を羽を使って滑降していった。
それを見て、タマがものすごいスピードで、カトレアを追って階段を駆け下りていった。と
にかく素早かったので、階段の途中で転んだりしては一大事だと一瞬ヒヤリとしたが、一階か
ら聞こえてきた「ついてくんなー!」の叫び声を聞いて一安心した。
誰もいなくなった自室を後にし、僕も階段を下る。早く、かき氷を作ってあげなくちゃ。