その6
<その6>
≪12/21(木)≫
翌日。
霜月さんに確認したが、こっちの世界でも12月21日だそうだ。あのシーン、真冬だったのか・・・ソニック冷たそう。
まぁ、ソニアド1の発売日が12月23日だからなぁ。ある意味そうといえばそうだよなぁ。
全員で朝食を終え、アンナは店番。俺達はのんびりテレビを観ている。北川部長は相変わらず無言だ。
【月島】「そういえば、なんでこっちの世界にずっといるのに、この世界がゲームの世界、って分かったんですか?」
月島先輩が霜月さんに質問する。そういえばそうだ。何でだ?
【霜月】「あたしがこっちに来てからしばらくして、ある少年がやっぱり次元移動してきて。その少年があっちでソニックのゲームを持ってたのよ。」
【月島】「なるほど、そういう事なんですね。」
【霜月】「さて・・・あたしはちょっと買い物に行ってくるけど、どうする?ついてきてもいいわよ?」
【俺】「あ、それじゃ行きます。」
【月島】「私も行きます。」
こっちの新聞でテレビ番組表を見たが、昼間がワイドショーばかりなのはどの世界でも同じらしい。
さすがにそれを見ながら丸一日過ごすのは辛いし、何より時間の無駄なような気がしてたまらない。そういえば引きこもりやニートって、毎日あんなん見てるんだろうか?
だったら、買い物に出た方がいいって結論だ。ま、リング持ってる訳じゃねぇから実際に物を買うことはできねぇけど。
【北川】「・・・・・」
やっぱり北川部長は黙って座ったまま。俺達は3人で買い物に出た。
買い物に行く途中、俺達はステーションスクエアの駅前の海岸に寄った。
当然本当に見るのは初めてだが、ある意味見慣れた海岸・・・って、えええっ!?
またしても俺は、そこでとんでもないものを見てしまった。
俺達と大して年の変わらない女の子2人が、魔法らしき不思議な力で戦ってるんだぜ?目の前で。
しかも、ギャラリーが集まるわけでもなく。これがこっちの日常かよ!
・・・ってここ、「何でもあり」の第1期週チャオ世界だっけ?納得・・・したくないがするしかないか。
【少女A】「さすがにやるわね・・・なら、これでどう?」
すると赤い髪の少女は一気にダッシュして、
【少女A】「ヘヴンクラッシャーっ!!」
バカデカい剣を魔法で作って黒い髪の少女に斬りかかる。って、ヤバいんじゃねぇのか!?
【少女B】「今日は早いわね・・・フレイムポール!」
すると黒い髪の少女は炎を纏った杖のようなものを魔法で出して受け止めた。
そのまま黒い髪の少女が右腕一本で対抗している間に、左腕で、
【少女B】「ファントムバスター!」
いくつもの光球を放つ。
だが、赤い髪の少女は素早く剣をしまってそれを全て避け、再び距離を詰めると、
【少女A】「スマッシュ・・・ナックルっ!!」
至近距離で魔法をブチ込んだ。
黒い髪の少女は吹っ飛ばされ・・・って、そっち海じゃねぇかよ!こんな冬に海なんて、大丈夫かよおい!?
という俺の心配をよそに、彼女は海上を吹っ飛ばされながらも体勢を整え、
【少女B】「グラビティ・・・ブレイカーっ!!」
黒くてデカい魔法球を放った。海面すれすれを突き抜け、きれいに波が立つ。
そのまま黒い髪の少女は海中に倒れたが、赤い髪の少女も油断していたらしく、直撃して倒れた。どうやら引き分けだな、こりゃ。
幸い海は浅く、溺れることは無かったが・・・冷たいだろうなぁ。というかここって遠浅だったんだ。
・・・勢い余ってバトルの様子を事細かに書いてしまったが、とにかく物凄ぇバトルだった。これがこっちの日常か・・・改めて目の前で見ると怖いなぁ。
でも、こんなキャラって第1期週チャオにいたか?いかにもどっかのキャラです、みたいな感じだが。
そもそも人間の少女って時点で第1期週チャオだとルーティア嬢しかいなかったような・・・まぁいっか。
すると、俺の後ろにいた霜月さんが、パチパチパチ、と軽く拍手をした。
【霜月】「元気でやってるみたいね、2人とも。」
【少女A】「ええ、おかげさまで。」
って、この人知り合いだったの!?
【霜月】「残りの2人も元気にしてる?」
【少女A】「もちろん。今は買い物してるみたいだけど。」
【霜月】「そう。それじゃ、よろしく伝えておいてね。それと、ちゃんとカゼひかないようにしなさい。」
【少女B】「そうね、そうするわ。・・・さすがに寒っ・・・」
っていうかヤバすぎだろ。早く着替えないとマジでカゼひくぞ?・・・って全くの他人の心配するのもなんか変だが。
【少女B】「ところで・・・この2人は?」
【霜月】「昨日次元移動してこっちに来ちゃった人なのよ。今はあたしが面倒を見てる。」
【俺】「ど、どうも・・・」
とりあえず挨拶する俺。
【少女A】「へぇ、そうなんだ・・・それじゃ、また会うかも知れないわね。よろしく!」
そう言うと、2人は去っていった。
【俺】「・・・今のは?」
【霜月】「不思議な魔法を使える、ちょっとした知り合い。敵同士って訳じゃなくて、今のは手合わせよ。」
【月島】「す、凄いですね・・・」
【霜月】「そうね、初めて見たらそうでしょうね・・・でも、こっちじゃよくあることよ。」
バトルの余韻がまだ残る中で、俺達はその日の日中を買い物に費やした。
<その7へ続く>