その5
<その5>
次元移動。ただし、それは便宜的な名称で、実際は微妙に違うらしい。
俺達が元々いた世界と、週チャオ世界とは元々別の空間だが、何らかの力が加わることによってその空間同士を繋ぐ「トンネル」ができる。
そのトンネルをくぐって別の世界に移動することが次元移動、だとか。
【霜月】「・・・つまり、トンネルができた時にトンネルができた場所にいれば、元に戻ることができるの。確率は低いけどね。」
【月島】「戻れるには戻れるけど、難しい、と・・・」
そこに、アンナが。
【アンナ】「夕食、できました。コロッケをどうぞ。」
【霜月】「お疲れ!とりあえず、みんなもご飯にしましょう?」
【俺】「そ、それじゃあ・・・いただきます。」
アンナさんも加わり、全員で夕食を食べる。
アンナさんのコロッケは・・・まぁ、普通かな。食べれるだけ幸せか。
食べながら、話を続ける。
【霜月】「チャオ同好会、ねぇ・・・その集まりなのね。
あたしは最初こっちに来たときチャオを知らなかったから、随分と苦労したわ。
この世界があっちのゲームの中の世界だって知ったのも、結構経ってからだったし。」
【俺】「へぇ・・・」
まぁ、正確にはゲームっつーか小説の世界だけどな。それを説明し出すととてつもなく長くなるからしないが。
そして、すっかり夜になった、食事の後だった。まだ話は続く。
【霜月】「一回ねぇ、あたしの目の前に「トンネル」が現れたのよ。・・・でも、あたしは戻らなかった。」
【俺】「えっ!?」
【月島】「なんで・・・ですか?」
【霜月】「正直、あっちの世界じゃつまらない毎日を送ってたし、霜月堂でこっちで生活できるようになっちゃったし。アンナもいるしね。」
【俺】「なるほど・・・」
【霜月】「そうだ、この辺散歩してみない?」
霜月さんは突然そう言うと、家の外へと出て行った。とりあえずついていく俺と月島先輩。
だけど、北川部長は黙ったまま席を動かなかった。本当にどうしちゃったんだ?
霜月さんに連れられて着いたのは、カジノポリス前の広場。あ、「CHAO IN SPACE」の看板だ。
でも、変だなぁ。妙に人だかりが多いぞ。
霜月さんと月島先輩と俺、3人で人だかりをかき分け、最前列に出た俺達は、また衝撃的なものを見てしまった。
それは、二尾の子狐・テイルスが、あのエッグマンのメカ・エッグウォーカーを破る瞬間。
【テイルス】「ボクにだって・・・できるんだ!」
そうか、週チャオ世界はソニアド1の世界に準拠してるから、こういう出来事も普通にあるんだよなぁ・・・
【霜月】「なかなか面白いものが見れたわね・・・これも、あたしがこの世界から戻る気にならなかった理由ね。」
【月島】「なんとなく・・・分かるような気がします。こっちは「なんでもあり」の世界ですからね・・・」
俺もだ。そりゃ、昔の人からすれば俺達の住んでいた世界は夢のような世界かも知れない。東京から博多まで飛行機で2時間の時代だ。
だけど、人はさらに科学の進んだ世界に憧れるもんだ。だからSFだとかロボットアニメだとかがある訳だし。
(そして、そういう世界に憧れた人達がこの世界を「生み出した」訳なんだが・・・ま、それは別の話か)
そういえば、この後ってどうなるんだっけ?
確か敗走するエッグマンをソニックが見て、ミスティックルーイン奥にあるエッグマンの基地に潜入してファイナルエッグ。
んでエッグバイパーを倒したらソニック編クリアだったよなぁ?
そしたら、スーパーソニック編が・・・って、ちょっと待ったぁっ!!!
・・・ってコトは、後数日で、この街はパーフェクトカオスに呑まれてしまうってコトじゃねぇか!!どうすんだよ!
いや待てよ、スーパーソニックになる前に人々のソニックコールが聞こえたから、少なくとも上手く立ち回れば生き残れるはずだ。
とにかく、生き残れるようにしないと・・・さすがに異世界でオダブツなんて勘弁してくれよ、まったく。
カジノポリス前の広場は、まだテイルスの勝利の余韻が残り、雰囲気が熱くなっている。
そんな中、俺は別の意味で熱くなっていた。どうする?どーすんの俺!ライフ●ード!続かない!伏字になってない!
・・・こんな感じで錯乱状態になりかけていた俺に、月島先輩が声をかけてくれた。ああっ、救いの女神さまっ。
【月島】「もしかして、この後って、まさか・・・」
・・・って、同じコト考えてたのかよ!
でも、1人よりは2人で考えたほうが、正しいカードが引ける可能性が高いだろう。って、そのCMネタはもういいか。
【俺】「ああ、多分、大洪水に・・・」
【月島】「ど、どうするんですか・・・?」
【俺】「今思いつくのは、その時になったら高いビルに逃げるってぐらいだなぁ・・・」
【月島】「ですよねぇ・・・」
と、そこまで話したところで、霜月さんが、
【霜月】「それじゃ、そろそろ帰るわよ。ゆっくり休みなさい。」
【俺】「あ、はい。」
そんな訳で、俺達は霜月堂に戻ることにした。
近くでは、俺達と同年代ぐらいの男女が歩いている。高校生カップルか?
【少年】「す、凄ぇもの見たなぁ・・・」
【少女】「そうね・・・こんな時間にこんな場所で、こんなものを見るなんて・・・ねぇ、啓。」
<その6に続く>