その4
<その4>
『チャトル大学付属高校』
そう書かれたプレートの目の前で、俺は必死に昔暇つぶしで読んだ週チャオの作品の設定を思い出していた。
確か、あのマッドサイエンティスト・向島きょうじゅがいるチャトル大学の付属高校で、稀代の天才アイドル・ルーティア=リネージュが3年生で通ってるって高校だろ?
・・・となると俺達は、よりにもよって第1期週チャオ世界って奴にワープしちまったのかよ!!
【月島】「チャトル大学付属高校って、あれ・・・ですよね?」
月島先輩も俺に確かめる。
【俺】「ああ、多分・・・」
ということは、もしや。
と思い、上を見上げる俺。するとそこには予想通り、チャオが数匹飛んでいた。
・・・来た。っていうか、来ちまった。チャオに出会って9ヶ月、本物のチャオに会っちまったよおい。
って事は、さぞかし北川部長は・・・って、あれ?
北川部長の方を見ると、彼女はプレートの前で震えていた。それは、俺の目にもハッキリと「震えている」と分かる程の震え。
【北川】「う・・・ウソ・・・嘘・・・でしょ・・・!?」
どうやら、色んな意味で相当な衝撃らしい。チャオ暦9ヶ月の俺でこれだ、DC時代からチャオを育ててるんだもんなぁ。
俺と月島先輩もしばらくそのままじっとしていると、突然大人の女性が声をかけてきた。
【女性】「あなた達・・・ひょっとして、この世界の人間じゃないんじゃない?」
【俺】「!?」
いきなり核心を突いてきた。驚く俺達3人。
【女性】「あたしは霜月麗香っていうの。多分、あなた達と同じ世界の人間よ。」
へ?同じ世界?・・・ってコトは、俺達以外にも週チャオ世界にワープした人間がいるってか?
【俺】「でも・・・なんで分かったんですか?」
【霜月】「そりゃ、チャトル大付の制服じゃないのにここで驚いた様子で立ってりゃ、そう思うわよ。」
チャトル大付・・・あ、チャトル大学付属高校のことか。ってか、そりゃそうだよなぁ。こんなところで違う制服で立ってたら、変に見られるよなぁ、普通。
【霜月】「立ち話もあれだし、あたしの家にいらっしゃい。ついでに、しばらく面倒を見てあげるわ。」
【月島】「いいんですか?」
【霜月】「人の好意は、素直に受け取っておくものよ。さ、こっち。」
と、彼女は校門前の道を歩きだした。ついていく俺達。
・・・にしても、変といえば、北川部長だよなぁ。あの元気はどこへやら、黙って下を向いたままだ。
あれだけチャオが好きなら、普通しばらくのショックはあっても、はしゃぎまくるはずだよなぁ?俺ならそうするぞ?
20分くらい歩いただろうか。俺達は、ステーションスクエアの一角にあるアンティークショップ、「霜月堂」に到着した。
どうやら霜月さんはこの店を経営して暮らしているらしい。
にしても、なんというか、妙な気分だ。
普段テレビのソニックを操って走る街を、こうやって実際に歩くんだもんなぁ。本当に見覚えある景色が出てくるし。
俺達が中に入ると、1匹のチャオが出迎えた。
【チャオ】「おかえりなさい。」
【霜月】「ただいま。」
【チャオ】「その人達は?」
【霜月】「あたしと同じ世界の人間みたいなの。チャトル大付の前にいたんだけどね。
しばらく面倒をみるわ。」
【チャオ】「分かりました。・・・夕食の準備が忙しくなりそうですね。」
ちゃ、チャオが喋った。いや、週チャオ世界だったら当然の話なんだけどさ。そもそもプチガーデンでは普通に喋ってるか。
【霜月】「紹介するわ。あたしのパートナー、アンナ=バルドルよ。」
【アンナ】「よろしくお願いします。」
【俺】「よ、よろしく・・・」
【月島】「よろしくお願いしますね。」
とりあえず挨拶を交わす。そんな中でも、北川部長は少し頭を下げるだけだった。
・・・にしても、「パートナー」か。確か、人間とチャオが1対1で組むものだったよな?
別世界の人間でもありなのかよ。本当になんでもありだなぁ。
客間のようなところに案内された俺達は、霜月さんと話をする。
まず霜月さんは、自分が異世界の人間であることを証明するために、自分が元いた世界で持っていた運転免許証を出した。
【霜月】「・・・で、こっちがステーションスクエアの運転免許。ね?違うでしょ?」
【俺】「ですね・・・」
そして、霜月さんが最初に出した運転免許証は、俺達にも馴染みのあるものだった。有効期限は平成だし、住所は神奈川県。間違いない。
ステーションスクエアの免許証は、当然見慣れないものだ。なんか英語っぽい言語で書かれてるけど。
【月島】「でも、こんなことって、しょっちゅうあるんですか?」
【霜月】「たまにあるわ。ステーションスクエアでは月に1回くらい。決まった時間、って訳じゃないけどね。
あたしらは「次元移動」って言ってるわ。」
【俺】「つまり俺達はその「次元移動」とやらに巻き込まれてしまった、と・・・?」
【霜月】「ええ、そういう事。原因とかは不明なんだけどね。」
【月島】「・・・帰れるんですか?」
【霜月】「それにはまず、次元移動の説明を始めなきゃね・・・」
そう言って霜月さんは、次元移動の説明を始めた。
<その5に続く>