その3

<その3>


≪12/20(水)≫

・・・全ての始まりは、この日の放課後だった。

北川部長、今日は特別授業はないらしい。
そういう時は家に帰って勉強しろ・・・って言っても無駄か。あーあ、部室に来ちまったよ。

【北川】「それでは、本日もチャオ同好会の活動を開始します!」
そう宣言だけしといて、後は北川部長がひたすらチャオを育てるのみ。後ろで俺と月島先輩が見る。


・・・だが、今日は1つだけ違う点があった。いや、「あったかも知れない」というのがこの時点では正確な表現だ。


北川部長がゲームキューブのスイッチを入れた瞬間、部室の窓を一瞬だけ青い光が覆った。ような、気がした。


俺はどうせ目の錯覚か幻覚が何かだろう、と思って北川部長にも月島先輩にも言わず、黙ってソニアド2バトルが起動していくのをそのまま見ていた。


【北川】「ん~、やっぱりチャオは相変わらず可愛いわね~・・・」

今更な話だが、確かにチャオは可愛い。俺もそこは認める。
だが、北川部長の溺愛っぷりは異常だ。いや、1人でやってくれるんなら別に構わないしアリだと思う。それを否定するつもりはさらさら無い。
問題は、月島先輩や俺といった関係無い人を巻き込むところであって。

おかげであの時は・・・ああ、思い出したくもない。

・・・とにかく。

そんな事を考えながら、今日も北川部長のチャオ育てを黙って見ている。ま、あの騒ぎに比べりゃこうしてる方がよっぽどマシか。


・・・にしても、聖誕祭は何をやるつもりなんだろうか。
何しろ、ライカ記念日やソニアド2発売記念日であの始末だ。それこそ学校全体を使うような気がする。よりによって休日だし。


【北川】「・・・よし、キリもいいし、今日は終わり!」

と、突然北川部長が声を上げた。・・・妙に早いなぁ。いつもなら下校時間ギリギリまでチャオ育てを続けるのに。
思い切って、俺は聞いてみた。

【俺】「え?まだ下校時間まで30分ありますよ?」
【北川】「聖誕祭の準備よ。23日にはあっと驚くことを用意してあげるから、期待して待ってなさい!」
・・・はぁ。たぶん、「あっと驚く」んだろうけど、期待できねぇ。っていうか怖い。


北川部長がゲームキューブのスイッチを切り、それぞれかばんを持って、俺達は部室を出た。・・・が。



・・・おい、ちょっと待て。周りの景色が違うぞ。


確かにそこは学校のようだが、俺達が通ってる高校とは全く違う。建物の配置も違うし、なんというか、校舎が新しくて豪華だぞ。
俺達の通ってる高校は公立校だから、お世辞にも豪華な校舎とは言えないんだが・・・

【月島】「ど、どうなってるんですか!?」
・・・どうやら俺だけではないらしい。助かった。月島先輩がいればどんな世界でも生きていける気がする。気がするだけだとは思うが。

【北川】「あたしらがチャオを育てている間に・・・ワープしたっていうの・・・!?」
北川部長も一緒か。というか、よく「ワープした」って冷静に状況を判断できるなぁ。確かにこの状況だと、「ワープした」っていうのが妥当な結論だろうけど。


【俺】「とりあえず、一旦部室に戻ってみる?」
その俺の一言で、俺達は後ろを振り向いた。そこにチャオ同好会の部室があれば、あるいは・・・

ないぃっ!?

【俺】「じょ、冗談抜きでヤバくねぇか、これ・・・」

後ろにあったのは、部室は部室でも「文芸部」という看板がついていた。見慣れたチャオ同好会の看板ではない。
へぇ、この学校、文芸部なんてあるんだ。ウチには確か無かったなぁ・・・って、俺もやけに冷静だなぁ。北川部長と月島先輩のおかげだな、こりゃ。

【月島】「とりあえず、外に出てみません?」
【北川】「そ、そうね・・・この学校の名前が分かれば、どこにワープしたのか分かるかも知れないわ。」
という事で、俺達3人は歩き出した。


時間は変わってないらしい。空は夕暮れで、俺の腕時計の時間とほぼ一致する。
そして、同じように寒い。時間移動はして無さそうだ・・・って、100年後の12月20日夕方の可能性もあるのか。

移動していると、俺達とは違う制服を着た、この学校の生徒だろう学生を何人か見た。
なんつーか、制服もオシャレだなぁ。私立校か?

とりあえず、他人に見つからないようにこっそり移動すること5分程度。見つかったらただの不審者だ。

【北川】「あったわ!あれが校門よ!」
そう北川部長が叫ぶと、真っ先に走り出した。慌てて追いかける俺と月島先輩。
こんなところで逸れて[はぐれて]たまるかよ!というか今までこっそり移動した意味は!?

北川部長は校門を出て外に回り、学校名が書いてあるプレートを見た。・・・瞬間、動きが止まった。

あの北川部長が凍りつくぐらいだ。とんでもないことになっているに違いない。
沖縄?北海道?50年後?100年後?それとも別の惑星とか?ええい、もう何でもかかって来やがれ!

半分ヤケになりながら、俺も月島先輩と校門を出て、プレートを見た。



・・・へ?



・・・ウソだろ?



・・・その校名は、俺がさっき想像していたのよりもさらに斜め上をいく、とんでもない校名だった。



『チャトル大学付属高校』


<その4に続く>

このページについて
掲載号
週刊チャオ第249号&チャオ生誕8周年記念号
ページ番号
4 / 12
この作品について
タイトル
聖誕祭記念特別読み切り「チャオ同好会Forever(フォーエバー)」
作者
ホップスター
初回掲載
週刊チャオ第249号&チャオ生誕8周年記念号