その2

<その2>


≪12/19(火)≫

今日も北川部長は特別授業で遅れるらしい。律儀にもケータイにメールよこしやがった。
北川部長、なぜかそういうところだけは律儀なんだよなぁ。ま、おかげで不意打ちされずに済むってもんか。
で、とりあえず月島先輩と2人で雑談開始。

【俺】「そういえば先輩、北川部長っていつチャオに出会ったのか知ってます?
    部長の家にドリームキャストがあったのをたまたま思い出したんですけど・・・」
【月島】「それなんですけど・・・私が聞いても答えてくれないんです。
     何か大きな秘密を隠してるんじゃないか、って思わせるくらい、その事だけは喋らないんです・・・」
【俺】「そうなんですか・・・」

なんでそれを隠さにゃならんのだろうか、俺にはサッパリ分からない。
まぁ正直どうでもいいや。俺は無関係な話題を振って、この話題を終わりにした。これ以上この話題をしても無意味だからな。


【俺】「あ、ちょっとトイレ行ってきます。」

話の途中、俺はトイレに行きたくなったので部室を出た。いや、逃げた訳じゃないっすよ。月島先輩から逃げる訳ないじゃないっすか。

・・・とにかく。

トイレから部室に戻る途中、俺は見知らぬ女子生徒に声をかけられた。
【女子生徒】「ひょっとして、チャオ同好会の1年生?」
【俺】「あ、はい、そうですけど・・・」
とりあえずここで否定する理由はないのでうなずく。

【女子生徒】「あたし、佑香・・・あ、北川さんの幼馴染なんだけど、北川さん知らない?」
【俺】「なんか、特別授業があるみたいな事言ってましたけど・・・?」
【女子生徒】「そう、ごめん。」
そういえば、北川部長の名前は「佑香」だったなぁ。平凡な名前だし、すっかり忘れてた。月島うらら先輩は印象に残って覚えやすいが・・・

【俺】「あのー、ちょっと聞いてもいいっすか?」
【女子生徒】「いいけど、何?」
【俺】「なんで俺のコト知ってるんすか?」
【女子生徒】「佑香がしょっちゅう話すのよ、2年の月島さんや君のことも。」
【俺】「そうなんですか・・・」
まさか変なコト喋ってないだろうな、北川部長。変な噂広げられてたら困りますよ、本当。

・・・そうだ。さっき、幼馴染っつったよなぁ?
ひょっとしたら、北川部長がチャオに出会った経緯を聞けるかも知れねぇ。

【俺】「あと、幼馴染って、いつぐらいからなんですか?」
【女子生徒】「うーん、確か幼稚園の年長さんぐらいの時だったかな?あたしが引っ越してきてこの街の幼稚園に入ったら、佑香がいたの。」
【俺】「へぇ・・・あと1つ、いいですか?
    北川部長がチャオにハマったのって、いつだか知ってます?」
【女子生徒】「いつどうやってチャオに出会ったかは知らないけど、あれは小5の冬休み明けだったかなぁ・・・
       それまでゲームなんて全然興味無かった佑香が、突然チャオがチャオが、って騒ぎ出したのよ。
       あれは今でも謎よ。冬休みの間に、何かあったんだろうけど・・・」
【俺】「分かりました、ありがとうございます。」

そう言って俺は、女子生徒と別れた。

・・・小5の冬、つまり00年の始め?
また微妙な時期だなぁ。発売から1年ちょいかぁ。そんな時期に何があったんだろうか?
でもこれで1つ分かったのは、北川部長はDC時代からのチャオファン、という事だ。

そんな事を考えながら部室に戻ると、北川部長が部室にいた。最悪のタイミングじゃねぇかよ。

【北川】「何やってたの!?トイレにしても長すぎるわよ!」
【俺】「ごめんなさい、なんか部長の幼馴染って人が話しかけてきて・・・」
そう言うと、北川部長は突然、
【北川】「ウソ!?あ、あたしちょっと行ってくる!」
と言ったきり、部室を飛び出してしまった。

あっけにとられる俺と月島先輩。
【月島】「部長、何があったんでしょう?」
【俺】「さぁ・・・?」

ついでに俺は、さっきの事を話した。北川部長はDC時代からのチャオファンだという事実。

【月島】「そうだったんですか・・・DC時代から知ってるなんて、むしろ誇りにしてもいいはずなんですけど・・・」
確かにそうだ。今のチャオBでもDC時代からチャオを知ってる人はほとんどいないって言うし、何より北川部長の性格からして誇りにしそうなもんなんだが。

あ、一応言っておくが、北川部長に無理矢理付き合わされているおかげで、チャオの歴史なんかもとりあえず頭に入ってしまっている。
・・・全く役には立たないがな。「実生活で役に立たない」って言われてる数学や世界史や化学の方がよっぽど実生活で使えるっての。勉強嫌いの俺が言うんだから間違いねぇ。

【俺】「やっぱ、何か秘密でも・・・?」
【月島】「どうなんでしょう?
     ・・・とにかく、部長の前でこの話はしない方が良さそうですね。」
【俺】「だな。」


・・・結局その日、下校時間になっても北川部長は再び姿を見せることは無かった。

下校時間になった少し後に、「解散していいから鍵かけて職員室に返しといて」ってメールが来た。
俺と月島先輩は2人で鍵をかけ、職員室に鍵を返して帰った。先輩と2人っきりの幸せな時間を過ごしながら。

<その3に続く>

このページについて
掲載号
週刊チャオ第249号&チャオ生誕8周年記念号
ページ番号
3 / 12
この作品について
タイトル
聖誕祭記念特別読み切り「チャオ同好会Forever(フォーエバー)」
作者
ホップスター
初回掲載
週刊チャオ第249号&チャオ生誕8周年記念号