その１

≪１２／１８（月）≫

クリスマスまであと１週間な月曜日。
街はクリスマスのイルミネーションで飾られ、テレビも特番ばかり。クリスマスムード全開だ。
だが、高校３年生にとっては関係ない。受験を直前に控え、そんな事で騒いでいる暇はない。
（無論、進学する人は、の話ではあるが、いずれにせよ大変な時期なのには変わりがない）


聖誕祭記念読みきり・チャオ同好会Forever（フォーエバー）


さすがの北川部長も、チャオ同好会に遅れてやってくる日や、顔を出さない日が増えてきた。
３年生だけの特別授業が増え、進学希望の北川部長は欠席するわけにはいかないらしい。
（ちなみに第１志望はやはりと言うべきか、京都にある大学だそうだ）


で、そんな時のチャオ同好会はといえば、適当に部室で月島先輩とお茶を飲みながら雑談をしているくらいだ。わざわざチャオを育てたりはしない。
北川部長のスケジュールを把握している訳ではないから、いつ部室にやってくるか分からない。
その時に俺達が部室にいなかったら、北川部長がどうなるか分からないからな。
第一、これはこれで俺にとっては幸せだ。学校一のアイドルと２人っきりで雑談だぜ？

【月島】「へぇ、そうなんですか・・・」
【俺】「ああ、映画研究会とは名ばかりで、実はオタクの集団らしい。映研入って３日で辞めた友達が言ってた。」
【月島】「そういえば、あの会長さんと副会長さん、どうなったんでしょう？」
【俺】「さあ？部長に聞いた方がいいんじゃないっすか？聞けるかどうかは別として。」

と、そこに、俺の至福のひとときをエミーのピコハンで叩き壊すかの如く北川部長が現れた。
【北川】「ヤッホー！皆の衆、元気にしてたか？」
・・・つくづくこの人のテンションが分からないが、まぁいいや。もう慣れちまった。

【北川】「やっぱりあたしがいてこそのチャオ同好会よねぇ。早速本日の活動開始っ！」
と、ゲームキューブの前に正座し、スイッチオン。いつものようにチャオを育て始めた。それを後ろで眺める俺と月島先輩。


・・・と、ここまでならいつものチャオ同好会。
ところがしばらくした後、北川部長は突然叫び声をあげた。
【北川】「ああーっ！！受験ですっかり忘れてたわ、もうすぐ聖誕祭じゃない！！」

せ、セイタンサイ？

あっけに取られる俺。それを救ったのは月島先輩だ。
【月島】（１２月２３日は、チャオの誕生日なんですよ。毎年大騒ぎするんです）
女神様、俺の耳元で囁くなんて、俺もう・・・じゃなくって、チャオの誕生日かぁ。
ライカ記念日やソニアド２発売記念日であの騒ぎだったから、どうなるのかサッパリ想像がつかねぇ。

いや、待てよ？１２月２３日って、天皇誕生日じゃん。つまり、絶対に学校は休みだ。しかも今年は土曜日。ラッキー！
・・・という俺の一縷[いちる]の希望を一瞬で再びエミーのピコハンで叩き壊すのが北川部長である。
【北川】「もちろんみんなには朝から登校して部室に来てもらうわよ！
　　　　　受験対策の特別授業も、この日だけはサボるわ！そう、全ては聖誕祭の為、チャオの為にっ！」

っていうか、テンション高っ。何かあったのかよ。ひょっとして、聖誕祭が近いってだけでこれか？
はぁ、早く受験本番が来ねぇかなぁ・・・さっさと京都の大学に進学して聖地でのキャンパスライフを満喫して下さい。心から願ってます。いやマジで。

そんなこんななうちに、本日のチャオ同好会は解散。
とりあえず、冬で下校時間が早い上に特別授業で北川部長が遅く来たため、この部室にいる時間が短いのには助かったが。


家に帰って俺は、ネットで聖誕祭について調べてみた。チャオの誕生日って、そんな設定でもあんのか？

なになに・・・？１２月２３日は、チャオが初めて登場したゲームソフト、「ソニックアドベンチャー」、通称ソニアド１の発売日、と。だからチャオの誕生日なのか。
そして、一部のチャオラーはこの日を盛大に祝う習慣がある・・・ふむふむ。つまり『あれ』が「一部のチャオラー」の具体例だな。

ちなみにどうでもいい話ではあるが、チャオ同好会の部室にはネット環境も整備されたＰＣも完備されている。
デスクトップは無論チャオＢだ。あの黄色い背景が毎日飛び込んでくる。

そしてその横にはＧＣとテレビ。周辺はチャオグッズで埋め尽くされている。こんなとんでもない同好会、それがチャオ同好会だ。
一回誰もいない時に友人を部室に入れたが、入って０.２３秒で逃げた。お前が「見たい」って言い出したんだろ。今ここで言っても意味ないが。

さらに北川部長の家にはどうやって手に入れたのか、ドリームキャストまである。恐れ入るよホント。
生産中止から何年経ってると思ってるんだよ・・・って、あれ？

・・・そういえば、北川部長っていつチャオに出会ったんだ？

そんな感じの話、１回も聞いた事ないなぁ。
ＤＣ時代からのチャオファンだったらＤＣがあって当然だけど、１９９８年１２月だと・・・北川部長は小学４年生かぁ。
小学４年生の女の子がＤＣ（というかゲーム機）を買うのかなぁ。それとも、兄弟が買って、ってパターンなんだろうか。でも、北川部長は一人っ子だったはず。

・・・そんなことを考えているうちに、俺はすっかり寝てしまっていた。

＜その２に続く＞