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私は、村の入り口に腰を落とした。
そして私の目の前では、それは多くの小動物達が集まりざわついている。人間が珍しいのだろう。
私は、この村の村長であるというフェニックスから話を聞いた。
小動物が人語を話すことには非常に驚きを覚えたが、それはすぐに感動に変わり、私は素早く順応できた。
(ちなみに現在街に溢れかえる小動物達は、野良だったり、愛玩用に飼われてたり、チャオにキャプチャーされてたりする)

フェニックスによるとこの村は大昔に、自分達を捕まえようとする人間や、キャプチャーしようとするチャオから逃げ延びた小動物達が集まって出来た村で、
以後長い年月をかけ、発展してきたのだと言う。
家を作り、自然の恵みを受けて生きていく…。人間となんら変わりない生活。
まさか小動物が人里離れた森で、このような文明を築き上げていたとは。驚愕であり、感動である。

人間である私を快く受け入れ、村長は好意的に接してくれた。
そしてそれは村長だけでなく、他の小動物達にも当てはまることだった。
では、私が村に足を踏み入れた時、トラ君が叫んだのはなぜか。

「むにゃむにゃ…ぐうすかぴぃ」

原因は、私の傍らにあった。
私が背負ってきた大きなリュックの中に入り、顔だけ出してぐうすかと寝息を立てるコイツのせいだった。

紹介が遅れた。大変遅れた。
傍らで夢の世界を謳歌中のコイツ。
常に私と行動を共にする相棒の、全身淡い桃色が鮮やかなノーマルヒコウタイプのチャオ。名をクリストファー・ルーズベルトという。

名付け親は私だが、長いので呼ぶ時は縮めて『スズ子』と呼んでいる。

コイツとは成り行きでともに旅をしているが、今までありとあらゆる状況において『コイツがいてよかった』と思ったコトはただの一度も無い。
コイツの人生の8割は、『食べる・寝る』で占められていると思う。とどのつまり役立たずなのだが、一緒に旅をしている。

で、トラ君が叫んだ理由に戻る。
つまり、スズ子にキャプチャーされてしまうのではないかと思ったわけだ。
私は『安心してくれ、コイツにキミたちをキャプチャーさせたりはしない。放っておけば夕方ぐらいまで起きないから』と説明した。
こうして私とスズ子を信用した小動物達は、私にいろいろ教えてくれたと言うわけだ。すぐに信用してもらえたのは、まぁ私の日頃の行いの賜物だろう。

ところで、私はふと疑問に思った。
キャプチャーされると言うのは、そこまで嫌なものなのだろうか。私は尋ねてみた。

「命に関わるようなことは無く、された後しばらくは衰弱して動けなくなりますが、時間が経てば回復します……。しかし…なんというか、魂を吸い取られるような…。雑巾から絞り出される水のように体の全てが吸い取られるようなあの感覚は……ぁあああああああああ!!!」

すまない、私が悪かった。もういいよ。本当に悪かった。
どうやら訊いてはいけないコトのようだった。

さて。
見事目的地にたどり着き、小動物達の神秘を垣間見ることが出来た私は、大変今回の冒険に満足している。
そろそろ帰ろう、と腰を上げた時。村長は私を見上げこう言った。

「あなたにお願いがあります。この村を、守ってはくれませんか。」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第216号
ページ番号
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この作品について
タイトル
~冒険家、風間辰巳~
作者
宏(hiro改,ヒロアキ)
初回掲載
週刊チャオ第216号