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私は詳しく話を聞いた。
「実は最近、この村はチャオの盗賊に脅されているのです。彼らは私たちが一生懸命育てた作物を奪っていきます。彼らは、『逆らうヤツはキャプチャーする』と言って脅してくるのです…」
だから、私にチャオの盗賊を追い払って欲しい、というのだ。
私が役に立てるのなら喜んで引き受けてもいいが、話によると彼らは別に命までとろうとしているわけではないという。
キャプチャーされても命に別状は無いと言うし、私に頼らなくても自分たちで何とかできるのでは…?
「キャプチャーされた時のあのおぞましい感覚は……ぃひああああああああああ!!!」
わかった。何とかして見せましょう。
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「あぁっ、来ました!」
村長が叫んだ。どうやら盗賊団が来たらしい。
私は、小動物達にどこかに隠れるように言った。ついでに、コイツも持って行ってくれと、ゴリラ君にスズ子が入ったリュックを渡した。
村長が去り際、
「彼らは銃を持っています、気をつけて!」
と教えてくれた。
出来れば最初に教えて欲しかった。
銃か。逃げよっかな。
敵前逃亡を視野に入れ始めた私だったが、どうやらそんな暇も無いようだ。
盗賊団が、私の前に姿を現した。全員ダークチャオだった。数は10匹ほど。結構多いな。
しかしまぁ、所詮はチャオ。何匹集まろうが質量の差で私の勝利は揺るぎないだろう。身長180cm超の力を見せてやる。
「あ?ボスー、何か変な人間がいますよ。デカイっすー」
「チャオー、人間初めて見たチャオー」
「ふん、大方あいつらが用心棒でも雇ったんだろう。だが、俺たちにはコレがある」
なにやらごちゃごちゃ相談している。
私の放つ圧倒的なオーラの前には、何人たりとも、いや何チャオたりとも怖気づいてしまうというコトか。
……ん?今何か悲鳴のようなものが聞こえたような気が。気のせいかな。
「人間、そこをどけ。さもなくば撃つ」
盗賊団のリーダーと思われるチャオが、私に向かって拳銃を向けてきた。
チャオサイズだけあって滅茶苦茶小さいが、本物だったらやばい。やっぱり逃げときゃよかったかな。
私がおとなしく両手を上げようか、それともイナバウアーでスパイ映画みたいに華麗に避けようか迷っていると、
「面倒だ、撃つ」
リーダーは引き金を引いた。
私は慌ててイナバウアーを敢行したが、見えた景色は真上の晴れた空だった。案外、曲がらないものだな、と思った。
すぽんっ。
私がその間抜けな音を聞いたのは、空を見ながらだった。
音が聞こえた後、何かが私のおなかに当たった。
恐る恐る体勢を戻し、視線を下に向けてみると。
そこには、一つのコルク弾が落ちていた。
「な……コイツ、コルク銃が効かねぇ!」
コルク銃に耐えたコトでココまで驚愕されたのは、生涯初だ。
リーダーらしきチャオは、見ていて面白いぐらい驚いていた。
「ボス、コイツを使えば!」
そう言って部下らしきチャオがリーダーに手渡したのは、マシンガンやガトリングガンと呼べるような大きな銃。
今度のはやばそうだ。ココで私は死ぬのか。そういえばマシンガンとガトリングガンの違いって何だろう。
「くらえ!」
リーダーらしきチャオは引き金を引いた。
今度こそ終わりか。せめてマシンガンとガトリングガンの違いを知りたかった。
すぽぽぽぽぽんっ。
マシンガン(というコトにしておこう)から連続射出されたのは物を壊し生物を殺める凶弾ではなく、可愛らしいコルク弾だった。
私のおなかは、それを全て受け止めた。弾かれたコルク弾が、私の足元に散らばる。
「き、効かねぇっ!」
今度は盗賊団全員が驚きの声を上げた。私は呆れ果ててしまっていた。まったく、何もわかっていない。
コルクは銃で撃つモノではなく、バットに仕込むモノなのに。
それより、あのマシンガン欲しいなぁ。
…
…
さて、そろそろ目的を果たさなければ。
私はそこら辺に転がっていた木の枝を拾い、しっしと猫を追い払うようにして右手に持って振り回す。
チャオの盗賊団は、慌てふためいて逃げていった。任務完了である。
私は、大声で小動物達に呼びかけた。もう大丈夫ですよ、と。
しかし、返事は来ない。確か、大きな(といっても私から見れば小さいが)集会場の裏に隠れたはずだが…。
不審に思った私が集会場に近づくと、陰から何かが出てきた。
スズ子だった。
何だ起きたのか。
ぷよぷよコチラに向かって飛んでくるスズ子を抱き寄せる。…ん?
スズ子は、明らかに変わっていた。何がどう変わったかというと、つまり……!
私は慌てて駆け出した。嫌な予感を引きずりながら。
集会場の裏に回りこみ、見つけたものは――あーあ。
集会場の裏では、小動物達が全員ぐったりした状態で呻いているのだった。
私の腕の中で、スズ子はきゃっきゃとはしゃぐ。
その度に、ココに来るときは付いていなかったウサギの耳やオウムの羽、チーターの尻尾などが、
ぴょこぴょこと揺れるのであった。