中編
中編
急いで彼はそのツリーに対し「おめでとう」のレスを返す。
発言して更新する。一番乗りかと思ったら、3番目のレスだった。
【少年】「すごい・・・みんな、いるんだ・・・」
さらに、週刊チャオに各種企画ツリーが次々と立つ。
レスも次々とついてくる。更新ボタンを押す度に、何か新しい発言がある。
彼にとって、初めての体験だった。まるで、異次元にいるような感覚。
だが、彼も黙ってみている訳にはいかない。各種企画に次々とレスを返していく。
気がつけば、1時になってしまっていた。
そこで彼は、11月に仕上げていた聖誕祭記念読みきり小説を、コピーして書き込んだ。
【少年】「とりあえず、これでおしまいっと。」
これ以上続けていると、明日に響くし、親が怪しむ。
パソコンのスイッチを切ると、ベッドに入った。
翌朝。
起きて、カーテンを開けると、雪だった。
【少年】「雪、か・・・」
だが、どうやら積もりそうにはない。積もると雪かきに忙殺されるため、好都合。
聖誕祭を祝福するのに、ちょうどいい降り具合だった。
さっさと朝食を食べ、自分の部屋へ。
パソコンをつけて、彼は驚いた。
1時に見た「それ」とは、全く別だったのだ。
まるで、1週間見なかったかのように。
そこには、最大の衝撃が、待っていた。
【少年】「こ、これは・・・半年前に突然姿を消した大物レギュラーの『天城』さんっ!?
聖誕祭に復活して、週チャオに記念読みきりを・・・」
聖誕祭は、人を惹きつける。そういう力があると、知った瞬間だった。
そう思っている間にも、書き込みは増えるのだ。これが、分刻みの衝撃。
【少年】「うそ・・・」
とにかく、レスを始めた。自分も、参加しなければ。
彼はひたすらレスを続けた。その間にも、返さなきゃいけないレスが増える。
こんなことは、初めてだ。
しかし、苦にはならなかった。とても、楽しい。これが、聖誕祭。
何より、自分の小説にたくさん感想が来てたのが、一番うれしかった。
ひととおりレスが終わったところで、時計を見ると、既に昼。
昼食を食べるために、一旦休憩することに。
午後。思い切って、記念チャット会に入ってみることにした。
アドレスを打ち込むと、そこには錚々たるメンバーが。
【少年】「みんな・・・喋ってる・・・しかも、生で・・・!」
意を決し、入室ボタンを押す。
「こんにちはー!」
「お、○○さんだ」
「いらっしゃ~い」
「どうも!」
みんな、出迎えてくれた。
チャットは初めてではないが、これだけ大人数でやるのは初めての経験。
話題についていくのがやっとだったが、とても楽しかった。
彼には、メンバーの知識が無限にあるように見えた。チャオやチャオBの話から、ソニックそのものの話、関係ないゲームやアニメの話まで。
それがほとんど同列に語られていくのだ。これが、チャットの醍醐味。
気がつくと、空は暗い。
そろそろ出る事にして、メンバーと別れを告げた。
「また、チャットやろうよ」
その言葉を、噛みしめながら。
夕食を食べて、夜。
昼過ぎに少し落ちた発言ペースも、夕方になって再び加速。
聖誕祭は、まだ終わらない。終わらせたくない。みんな、必死だ。彼も、必死だ。
しかし、時は残酷なまでに過ぎていく。後、1時間。30分。15分。
そして、時が来た。12月24日、クリスマスイヴ。
普通の人にとっては、これからが楽しい一日かも知れない。でも、チャオラーは違う。これで、終わりなのだ。
しばらく彼も、脱力感と共に、ただボーっとチャオBを見ていた。
そして、12時半。今日は学校。もう寝なければ、起きられない。
そこで、最後の「更新」ボタンを押した。
そこには、聖誕祭を引っ張った大物レギュラーによる、「聖誕祭終了記念」のツリーが。
そしてその中には、こう書いてあった。
「聖誕祭は、終わりました。
でも、チャオも、チャオBも、終わった訳ではありません。今日も、明日も、あります。
そう、僕らは、ここで、いつでも会えるのです。」
脱力感は、一気に吹き飛んだ。
一つのものをやり遂げた爽快感が、代わりに体の中に流れ込んでくる。
そのまま、彼は寝た。寒い夜だったが、よく寝れた。
<後編に続く>