前編
とある年の、日本。
今もたくさんの人がチャオBに現れ、発言し、消えていく。
そのスパンが長ければ、「レギュラー」と呼ばれる。要は、それだけの話である。
(中には、「ほっぷすたあ」とかいう何年も張り付いている偽善者もいるが)
そしてここにも、そんな中の一人が。
【少年】「チャオB、チャオBっと。」
だが、彼はちょっとした事情がある。
彼は中学3年生。『受験生』、なのだ。
~チャオ聖誕祭記念特別読み切り Birthday・バースデイ~
【少年】「お!週チャオに『夢島』さんの新連載だ!
『ホワイト』さんの『ゴージャスチャオの大冒険』はいよいよボス戦!」
小説の発言を開いて、読む。週末は、これが日課だ。
【少年】「すげぇ・・・やっぱ、みんな上手いよな・・・」
幻想的な世界。迫力のバトルシーン。笑えるギャグ。そこには、全てがある。
昔は、自分も小説を書いていたが、今は受験勉強という事もあり、連載は休止中。
もちろん、高校に受かった後は書く気満々だ。
授業中ですら、そのネタが浮かんでくる。
【少年】(あ、あそこであのキャラが出てきたら面白いな・・・よし、メモっとこう!)
【隣の女子】「・・・ねぇ、いつも何書いてんの?」
【少年】「・・・いや、ちょっと、ね。」
・・・なんてことも。
さて、少年の自宅に戻る。
【母親】「ちょっと、勉強やってんのー?」
台所から、声がする。これも、いつもの話。
当然、
【少年】「やってるよー!」
と、返す。
今日は、12月20日、土曜日。
チャオラーにとって一番大事な日、聖誕祭の3日前だ。
彼は少なくとも、その日まではここにいたい、と思っていた。
ラッキーなことに、パソコンは自分の部屋にあり、ネットにも繋げる。
但し、年が明けたら、受験直前という事でパソコンを合格するまで親に預ける約束だ。
彼にとっては、12月23日にできれば、後は合格しすれば何とかなる。無論、親は知らないが。
もちろん、勉強も怠っていないつもりである。授業はちゃんと受けてるし、家でも勉強時間は確保するようにしている。
でも、友達の話を聞くと、足りないような気がして仕方が無かった。
(概して、「全然やってねぇ」って言う奴ほど勉強してて、一見勉強してるような奴ほど勉強していないものである)
学力的にも、彼の志望校は多少無理をしている。もっと勉強する必要性だけは、分かっていた。
そんな状況なので、何人かの作家に対し簡単に感想を書くと、すぐにパソコンを切った。
12月22日、月曜日。聖誕祭の、前日。
この日彼は、帰ってすぐにはパソコンをつけなかった。
お楽しみは、12時に待っている。
だから、その間にさっさと勉強を済ませておく。どうせ明日は勉強しないのだから。
何とか2日分の分量を終わらせると、11時過ぎだった。
【少年】「危ねぇ危ねぇ、聖誕祭が始まっちゃう。」
ようやくパソコンをつけ、チャオBを見る。
ところが、何か変だ。
昨日から、ほとんど変化がない。
荒らしやサーバー落ちでも無さそうだ。
しばらくして、彼は直感した。
【少年】「嵐の前の・・・静けさってやつか・・・?」
そうこうしているうちに、11時半。
そして、運命の時間がやってきた。心の中で、カウントダウンを始める。
右手はマウスを握り、左手はキーボードに手をかける。横には、秒まで表示される電波時計。
5、4、3、2、1。
その瞬間、彼は「更新」ボタンを押した。
12月23日、午前0時0分0秒。
そこにあったのは、チャオ聖誕祭スタートを知らせるツリー。
それは、神業である。
「WRITE」ボタンを押した後、どのタイミングで発言時間が記録されるのか。
実際の時間と、チャオBで記録される時間にズレはあるのか、どのくらいなのか。
それらを全て完璧に把握していないと、狙って発言するのはほぼ不可能なのだ。まさに、神業。
その「神業」を目の当たりにしつつ、聖誕祭の幕は切って落とされた。
<中編へ続く>