【10】
    屋上に出ると同時に黄色い半透明の物体が飛んできた。
俺はそれをジャンプして避ける。
その際、赤のカオスドライブを取り出してキャプチャーする。
すると、俺の右手から赤半透明の剣が出てきた。
「残念だったなオウル。これで互角だ」
階段で上っている最中、運良く俺のキャプチャー能力は進化した。これでオウルとまともに戦える。
オウルはさきほどと同じように二刀流だ。
お互いに接近し、それぞれの武器を振るう。
実力は俺の方が上のようだ。どんどんオウルが退いていく。
オウルは一度大きく飛び退いて左手で持っていた針のような物体を放つ。
俺はそれを走りながら少しだけ横に動いて避け、
赤半透明の剣をオウルが右手で持っている針のような物体に叩きつける。
針のような物体ははじき飛び、オウルは何も持っていない状態になった。
そして、もう一度剣を振るってオウルを倒そうとした時、再び拍動が激しくなった。
その隙にオウルは回し蹴りをして俺の赤半透明の剣をはじき飛ばし、さらに俺の顔を殴った。
俺はその攻撃によって飛ばされ、さらに人間の体に戻る。
そして、黄色半透明の針のような物体を再び出現させたオウルは今度こそ俺を殺そうと、
俺の腹を目掛けて飛びながら接近してきていた。
俺は横の方に素早く姿勢を低くし、オウルが攻撃をする直前に横に飛んでそのまま転がる。
転がりながらカオスドライブをオウルのいる方とは逆の方向に1色につき1個、
合計4個をなるべく遠くにいくように投げる。
そして、姿勢を整えながらデパートの外へ飛んでいくカオスドライブの方へと走る。
どれをキャプチャーするか?
そんなことは考える必要がなかった。
俺はそのままビルから飛び降りる。
すると、4つのカオスドライブが一斉に光り出して俺の周りに集まる。
4つの光がまるで燃焼して酸素と化合されるマグネシウムのように激しく真っ白に光り、俺の体が光に包まれる。
光が収まると俺の体はニュートラルノーマルチャオの体に変化していた。
おそらく、また「レベルアップ」したのだろう。
これによって周囲にある物をキャプチャーできるようになった。
このことを頭より先に体で把握していたとなると我ながら素晴らしいと思う。
これで、「詰み」が見えた。
俺はドームの天井へ降下しつつ移動する。
後ろからオウルが針のような物体を放とうと俺を狙っているのがなんとなくわかる。
俺は再び4色のカオスドライブを全て1つずつキャプチャーする。
すると、白く僅かな光を放っている長い棒のような物が俺の前に出現した。
俺はそれの中心を右手で握る。
俺はドームの天井に着地すると同時に
棒を振り回してオウルが放った針のような物体を全てたたき落とす。
俺を狙ってオウルが突進してきたが、その攻撃を後ろに大きく飛び退いて回避する。
俺は着地をすると同時にオウルの方へと走り、自分の体を反時計回りに回転させながら
棒も両手で同じ方向に回してオウルに攻撃をしかける。
攻撃に耐えきれないと判断したオウルはすぐに飛び退き、
それだけではすぐに接近されると判断したようでもう一度飛び退いた。
だが、その行動は自らの攻撃のチャンスもまた奪う。
頭の中でオウルの取った行動をそう処理すると、俺はその場でキャプチャーを試みる。
小動物までキャプチャーできるかどうかはわからないのだが、俺には何故かキャプチャーできる自信があった。
それは根拠が全くない頼りない自信であったが、自信がどうという問題ではない。
これは成功しなくてはいけない。
俺の、そしてこの街の未来のために。
俺の周辺から大量の光の粒が溢れ出す。
どうやら、キャプチャーに成功したようである。
俺は持っていた棒を上に放り投げる。
光の粒はその棒に集まり、一つの大きな球となる。
オウルがその球を破壊しようと必死に飛んできていたが、
俺はオウルよりも速いスピードで飛び上がり、球を真下に蹴り飛ばした。
球はドームの天井を突き破り、ドームの中へと急降下していく。
次の瞬間、視界が真っ白になった。
どこを見ても白で、どこが前なのか後ろなのか全くわからない。
俺を包んでいる何かは微かに暖かい。
俺はどうなってしまったのだろう?

 タイトル別
タイトル別 作家別
作家別 タグ別
タグ別 掲載号別
掲載号別