【9】

しばらく走っていると多くのチャオが戦っているのが見えた。
俺の目は他と比べると明らかに弱いチャオが
腕をゴリラのようなパーツのチャオに狙われているのを捕らえていた。
俺は緑色のカオスドライブを取り出し、瞬時にキャプチャーをする。
俺の体はニュートラルハシリチャオとなった。
それと同時にさきほどの弱めのチャオが案の定ゴリラのようなパーツを持ったチャオに殴り飛ばされる。
俺はそのチャオが建物にぶつかりそうだったのを、自分の体を盾にして防ぐ。
そして、戦闘によって建物が壊されないように素早くそこにいたチャオ達を倒し、
ニュートラルハシリチャオの姿のまま再び俺は走り始めた。


戦闘が起こっている所は緑のカオスドライブの効果により走る速度が上がったためにたやすく避けられた。
そうやって時間をかなり消費する戦闘をしないで走っていったために
少し休もうと止まった時にはドームの目の前にあるデパートの所まで来ていた。
デパートはガラスが割られており、簡単に中に入れるようになっている。
道にはビルから出てくる時は無かった無数の穴が開いていた。
これらもチャオの戦闘による影響だろう。
再び走り出そうとした時、強いエネルギーと殺気を感じた。
それと同時に横へ飛びつつ黄色のカオスドライブをキャプチャーする。
俺の真横でドスドスッ、と音がした。
道路には黄色い半透明の針のような物が刺さっていた。
そして、俺の方向へ飛んできたその物体を俺は左腕で受け止めた。
だが、その物体の威力は大きく、
黄色のカオスドライブによって防御力が大幅に上がった俺の体でも
防ぎきれずに吹き飛ばされた。
そのダメージが相当大きかったために、俺の体は人間の体に戻ってしまった。

「なかなかやるね。さっきの人間は一発だったのに」
針のような物体を放ってきたダークノーマルチャオは空を飛んでいた。
さっきの人間とはおそらくホワイトのことだろう。

「だけど、これで終わりさ」
ダークノーマルチャオはそう言うと両手からさきほどの針のような物体を出現させる。
そして、それを放たずにそのまま俺の方へと向かってくる。
至近距離で放つか、剣として使うかのどちらかであろう。
俺はその場で立ち止まってダークノーマルチャオが来るのを待った。

俺には、ダークノーマルチャオが低空飛行をしながら接近してくるのがわかっていた。
なぜならば、俺はそのチャオをよく知っているからだ。
予想通り、ダークノーマルチャオは低空飛行をしながら猛スピードで接近してきた。
俺は少しジャンプし、ダークノーマルチャオを地面に押しつけるように蹴り飛ばす。
そして、返り討ちにされるとは思っていなかったのか、
ダークノーマルチャオは目を丸くしてこちらを見ている。

「久し振りだな。オウル」
「な、お前は……。…まさか!」
「お前、随分と物騒になったな。そんな物持ってチャオカラテで戦ったら即反則だぞ」
「黙れぇ!!」
ダークノーマルチャオ…オウルは針のような物体を数十本同時に飛ばしてきた。
俺は紫のカオスドライブをキャプチャーし、
ニュートラルヒコウチャオの体になると同時にその攻撃を回避する。
俺が回避をしている間にオウルは俺との距離を縮めていた。
オウルは針のような物体を放ち、俺はそれを横に飛び退いて避ける。
その間も走り続けていたオウルは針のような物体を右手と左手に一本ずつ持ち、振るう。
受け止めることはできないので、
とにかくオウルから離れすぎないように気を付けながら攻撃を避けて反撃のチャンスを狙う。

「ぐっ!」
突然、拍動が激しくなった。
最初にカオスドライブをキャプチャーした時とよく似た激しすぎる変化だ。
その影響で動きが鈍った俺をオウルの振るった針のような物体が切り裂こうとした瞬間、
建物から何匹かのチャオが飛び出し、そのうちの一匹がオウルを殴り飛ばす。
おそらく、戦いを感知してやってきたのだろう。
運良く稼げた時間の間に俺の拍動は普通の状態に戻る。
そして、俺に襲いかかってきたチャオの攻撃を横に回転しながら避け、
その避けた時の勢いを利用しつつ回し蹴りで倒す。
すると、倒したチャオの体からチャオが小動物をキャプチャーした時に現れる小さな光の粒が出てきた。
その光は俺の体に吸収される。
キャプチャー能力の進化。
それが起きたと考えていいだろう。
普通のチャオのキャプチャー能力を「Lv1」、
今回問題になっている進化したキャプチャー能力を「Lv2」とすると、
倒したチャオのキャプチャーした小動物をキャプチャーできる今の状態は「Lv3」ということになる。
そして、「Lv4」はオウルのように小動物のエネルギーを体外に出せる、
ということになるのだろう。
そう考えると、オウルと戦って勝つのは無謀だ。
とにかく時間を稼いでもう一度進化しなくては。

俺は真横にあるデパートの2階ぐらいの高さにいるチャオに向かって飛んでいく。
相手の蹴りを上昇しつつ避け、相手の頭を踏んでジャンプする。
そして、3階の窓を回し蹴りで割りながらデパートの中に入る。
俺は階段を登って駐車場となっている屋上へ向かった。

このページについて
掲載号
週刊チャオ 聖誕祭記念号
ページ番号
9 / 11
この作品について
タイトル
「Beam of Hope」
作者
スマッシュ
初回掲載
週刊チャオ 聖誕祭記念号