【6】
しばらくぼおっとしながら歩いていると
気付いた時には公園の前まで来ていた。
どうやら俺は勝手にここに来るようにプログラムされてしまっているらしい。
どこか他に行く場所はないのか。ここと家以外で。
しばらく考えたが全く思いつかない。
「お前、ここが好きなのか?」
と、後ろから声。
振り向くとそこには白い髪の少年が缶ジュースを片手に立っていた。
少年の顔はなぜか少し赤い。理由はすぐにわかった。
少年の息がなんとなく酒臭い。
「姿が子供なんだから、酒を飲むのを我慢したらどうなんだ」
「大丈夫。酒には強い方だから」
「そっちの心配はしてない」
「とりあえずベンチに座ろうぜ」
どうやら酒を飲むのをやめる気はないようだ。
とりあえず、俺達は公園に入りベンチに座る。
少年は缶ジュースの入れ物に入った酒を飲もうとした。
が、どうやらもう無くなっていたらしい。
残念そうな顔をして小さな穴から真っ暗な中を見た。
「お前、そんな街中で酒なんか飲んで警察に捕まったらどうするんだ」
「大丈夫。捕まる前にチャオになって逃げればいい」
「本来の使い方と間違ってるぞ、それ。しかも外部のやつに見られていいのか」
「いいんだよ。どうせあと一週間なんだからよ。便利なものはとことん利用しないと」
「そんなことをしてるからそこまでチビになったんじゃねぇのか」
「ま、それもある。とりあえず、そこの自販機でジュース買ってきてくれ。俺の方が年上で先輩なんだから従えよ」
そこの自販機、と言っても都合が悪い事に
この公園から一番近い所にある自動販売機までは歩いて片道1分もする。
俺は仕方が無く自動販売機の方へと歩いていく。
自動販売機に100円玉を入れ、ボタンが光った時に公園の方から悲鳴が聞こえた。
俺は金を自動販売機の中に置き去りにして駆けだした。
公園の周りで大勢の人間が中の様子を見ている。
公園では大勢のチャオによる戦いが起きていた。
主に戦っているのはさきほどまで公園で遊んでいたチャオだが、
明らかにさきほどまでいなかったチャオが一匹。
それは赤半透明の大剣を持った白いダークカオスチャオ、
さきほどまで俺の隣で酒を飲んでいた少年がチャオになって戦っているのだ。
少年・・・ホワイトは俺の姿を確認すると、大声で叫んだ。
「お前もとっとと戦え!」
ホワイトはチャオの攻撃を避けると同時に
緑のカオスドライブを取り出し、俺の方へ投げる。
ゆっくりと飛んでくるカオスドライブに向かって俺は走り、
掴むと同時にキャプチャーをし始めた。
光に包まれ、視界が一瞬真っ白になる。
そしてニュートラルハシリチャオになったことを
色が変化した自分の手を見る事で確認し、再び走り出した。
実際にチャオと戦うのは初めてな上に
チャオの体で動く事にまだ慣れていなかったのだが、
戦っていくうちになんとなくコツを掴んできた。
次第にちょっとした動作のみで避けて攻撃ができるようになっていった。
俺の徐々によくなっていく動きを見ていたホワイトは
戦闘後にお前は天才だ、などととにかく俺を誉めていた。
どうやら、ホワイトはそれなりに戦えるようになるまでに
かなりの時間がかかったようで、
彼にとってみれば一回の戦闘だけで動きがなめらかになるどころか戦闘にまで慣れてしまった俺はかなりすごいようだ。
「ちょっと、よろしいかな」
俺達の後ろから声がした。
そこには怖い顔をしたチャオの飼い主達がいた。
そして、彼らは俺達になぜ自分のチャオを殺したか、と問いつめてきた。
だが、俺達は事実を彼らに教えるわけにはいかない。
とにかく俺達は黙っていた。
俺は途中小声でチャオになって逃げようかとホワイトに提案したが、
ホワイトはカオスドライブをさっきの戦闘で全て使ったからチャオになれないと残念そうに言った。