【2】

そう、俺はチャオに裏切られた。
俺はチャオを飼っていた時期があった。
ダークノーマルチャオで名前はオウル。
オウルは生まれたてのアビリティオールS。要するに天才だ。
俺は彼を鍛え上げ、チャオカラテやチャオレースに参加させていた。
オウルは期待通り優勝し、俺は多額の賞金を得た。
そのため俺は一人暮らしの大学生にしては金持ちだった。
そして、一年に一回開催されるチャオカラテの大きな大会。それにも参加する予定であった。
しかし、その前日。オウルはいつの間にか消えていた。
寿命ではない。俺が朝目覚めた時に閉めておいたはずの窓が開いていた。
おそらく彼はそこからどこかへ行ってしまったのだろう。
結局オウルは今現在も見つかっていない。俺も既に諦めていて探す気は無い。
おそらく一生見つからないことだろう。


と、そこまで考えた時に小太りの男はまた喋り出した。

「でもよぉ、チャオだって結構いいぞ?」
「どこが」
「かわいいじゃねぇか」
俺は男を睨み付ける。
男には俺が「だからなんだ」という反応をしたということがわかったようで、
慌てて付け足そうと何か考えているが結局何も思い浮かばなかったらしい。

「まぁ、とにかくよ。なんつうか、まぁ、頑張れ」
そう言って男は公園から出て行く。
おそらくチャオか自分の今日食べる物を買いに行くのであろう。
話し相手がいなくなった後も俺はすることがなかったのでずっと公園にいた。
暗くなってくると人間達はチャオを連れて家に帰り、
いつの間にか公園の中には俺以外誰もいない状態になっていた。

さすがに公園で徹夜というわけにはいかないらしい。寒くなってきたし腹も減ってきた。
さて、コンビニで何か買って家に帰るとするかな。
そう思った瞬間、何かがもの凄いスピードで公園の外から飛んできた。
その何かは滑り台の斜面にぶつかり、ゆっくりと滑っていく。
その何かはチャオだということがわかった。
そのチャオはチャオカラテでも見せない、
チャオなのにどこか寒気がする威圧感を発しながら自身を飛ばした敵を睨んでいた。
俺はチャオが睨んでいる方向を見る。
そこにもまた、チャオがいた。
そのチャオは両腕がゴリラのようなパーツがついており、
笑みを浮かべているがこっちもまた寒気がする、
チャオが放つとは思えないほど恐ろしい空気がそこにあった。
そして、飛ばされた方のチャオは何も小動物パーツがついていないはずだったのだが
いつの間にか両腕がクマのパーツになっていた。
いや、あれは本当にクマのパーツだろうか。爪が異様に長い。
その爪で刺されたらチャオは勿論、人間でさえ当たり所が悪ければ死んでしまうだろう。
そして、チャオはその爪で戦おうとしているようだ。

「待て!」
今にも戦いが、それもおそらくどちらかが死んでしまうようなのが始まろうとした時、
公園の外から大声で誰かが叫んだ。
その声の主は15歳前後くらいの少年だった。
髪は真っ白で革の手袋をしていおり、右手には赤のカオスドライブを持っていた。
少年は走ってチャオ達に近づいていく。
公園の中に入ってすぐ赤のカオスドライブが光り始めた。
その光は大きくなり少年を包み込む。
そしてチャオ達の所へたどり着いた時には光は収まっていた。

光から出てきたのは少年ではなく、
赤半透明の大きな剣を右手に持った白いダークカオスチャオだった。
チャオ達は突如現れた白いダークカオスチャオに攻撃をする。
その攻撃はチャオカラテでチャオがするようなかわいらしい行動ではなかった。
確実に相手を殺そうとしている。
白いダークカオスチャオはその攻撃を後ろに飛び退いて避けながら赤半透明の大剣を振るう。
その攻撃を避けられなかった二匹のチャオは灰色のマユに包まれ消えていった。

白いダークカオスチャオの体はさきほどと同じように光に包まれ、
今度は少年の姿となり、ゆっくりと俺に歩み寄ってくる。
これは夢なのだろうか。というより、今のは現実に起き得ることなのだろうか。
全く状況が把握できてない俺に少年は声をかけてきた。

「あんた、乱橋って人だろ?」
「そうだが」
「ちょっと来てくれないかい?話があるんだ。どうせ暇だろう?」
「……。あぁ、いいだろう」
断る理由はない。
彼の言う通り俺は暇だ。
どうせ仕事もなければ家で帰りを待っているチャオもいない。
それに、俺の頭はあることでいっぱいだった。

彼は一体何者なのだろう。それに、あのチャオ達は一体…?

このページについて
掲載号
週刊チャオ 聖誕祭記念号
ページ番号
2 / 11
この作品について
タイトル
「Beam of Hope」
作者
スマッシュ
初回掲載
週刊チャオ 聖誕祭記念号