第四話『歯車』
えっと・・・俺は黒保音彰祐十八歳。
彰祐でいい。
俺は仕事でこのイギリスに来た。
え?何の仕事か?どうでもいいだろ、そんなこと。
俺は道に迷ってしまい、この裏通りに迷い込んだ。
いや、問題はそんなことじゃない。
本当に問題なのはこの状況。
この裏通りで出会った少年。
名前は城嶋アルトと言うらしい。
この裏通りの不良達にからまれたが、それも別にどうでもいい。
俺は目を疑った。
いや、自分自身を疑った。
自分は気は確かなのかも疑った。
彼・・・アルトが二人に増えたのだ。
しかも双子ではないと言う。
一卵性双生児よりもそっくりだ。
身長、顔、体つき、全てが同じだ。
そしてその分身のアルトの力、それこそ目を疑った。
手も何も使わずに不良を吹き飛ばした。
俺は出会ってはならないものに出会ったのかもしれない・・・
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{アルト}「君は結局何者なんだい?」
僕はそう言い放った。
結局のところ、あの説明では何も分からない。
それに何が起こっているかもまだ信じられない。
目の前には自分自身。
―鏡を見ているようだ。
しかし自分とは似ても似つかないその性格。
周りからよく大人しいと言われる僕に対し、
彼―ノヴァ―は感情を激しく表面に表す。
怒り、憎しみ、嘲り、いずれも負の感情だ。
でも僕は羨ましい。
感情を全て表に出せるその人格が。
{ノヴァ}「俺は・・・幻覚だ」
一瞬、僕は彼が何を言っているのか分からなかった。
{アルト}「え?君が幻覚・・・?
じゃあ何で皆に見えてるの?
幻覚なら僕にしか見えないはずだよ。
それに・・・意思も持たないはずだよ」
{ノヴァ}「前にも言ったが俺は『ANITHER』による
幻覚性多重人格現象だ。
分かるか?ただの多重人格じゃない。
『幻覚性』
『現象』
つまり実像として現れる。
貴様の人格が変わるわけじゃない
しかし、物質ではない。
試しに触ってみろ」
とりあえず僕は言われたとおりに彼に触れてみた・・・すると。
{アルト}「通り抜けた!?」
{ノヴァ}「そう。俺はこの世の生物ではない」
{彰祐} 「ちょっと待った。
それは矛盾していないか?
『この世のものじゃない』のに
『生物』なんておかしいぞ」
あ、彰祐さんのことすっかり忘れてた(汗
でも確かに彰祐さんの言うとおりだ。
この世のものじゃない生物ってちょっとおかしい。
{ノヴァ}「ふん・・・いかにも人間の考えそうなことだ。
いいだろう。教えてやろう・・・」
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また会ったか。
何?名前を忘れただと?
・・・まあいい。
我が名はチャリオットだ。
やばい。
この状況はまずい。
アルトが見つからない。
アルトが見つからないとどうなるか。
アルトが見つからない→『ANOTHER』発病→大変なことになる
だ。
しかしそれ以前の問題が起きた。
大問題だ。
私が迷った(泣
第四話完
第五話へつづく