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「あ・・・またやられちゃったよ・・・ふぇ~ん・・・。」
佐奈はいつもの泣き癖で、また涙目で浩輔に抱きついた。
どうやら、空き巣にまたまたやられたらしい。
「はいはい・・・泣くな・・・。俺の服が濡れる・・・。」
無論、浩輔に佐奈を慰める気持ちはさらさら無い素振り。
その後、さらにうるうるになる目がかわいいらしい。
「うぅ、浩輔が虐めるぅ・・・。」
「そんな言い方するな。書いている作者が恥ずかしいだろ。」
「・・・?・・・誰よ、それ。まさか、女?」
佐奈は泣くのを急に止めて、笑顔で浩輔を見た。
だが、それはまさしく凶器の笑顔だ。
浩輔はこのままだと何されるか分からないと感じたので、
正直に言うことにした。
「おかまだ。」
刹那、右フックが飛んできて、浩輔の意識はとぎれた。
『∀LSOK 1』~チャオを空き巣から守る会社~
「∀LSOK?なんだそのふざけた会社は。」
約3時間くらいして浩輔が目を覚ました後、
佐奈が何かのチラシを持って来たのだ。
「だからね、チャオを守ってくれる会社なんだって。」
「へぇ、どんなシステムなんだ?」
「なんか、配属された人が泊まり込みで守るらしいけど。」
「成る程、チャオガーデンに取り付ける訳か。」
「そ♪頭の悪い浩輔も分かってくれたんだ~。」
浩輔はまだ怒っているのかと思ったが、
今言ったのはちょっかいだと判断して、突っ込んだ。
「おまえの方が頭悪いジャン。ばーか。」
刹那、佐奈の左アッパーが浩輔の顎に直撃した。
どうやら、まだ怒っていたらしい。
薄れゆく意識の中で、浩輔はやっと気付いたのだった。
それが、後の祭りだったのは言うまでもない。
・・・翌日・・・
「う・・・う~ん・・・。」
「あ、おはよ、浩輔♪」
「あ、おはよ・・・って、一日経過しているじゃねえか!おい!」
「怒っていることも分からずにいた浩輔が悪いだよぉ、うぅ」
浩輔は怒鳴ったことに、あ、しまったと思ったが、
佐奈の目からはぼろぼろと涙がこぼれていた。
「あ・・・ごめん、ホント、何でもするから!」
すると、佐奈はニヤリと笑って、こういった。
「なら、∀LSOKの料金浩輔のへそくりから全部払ってね♪」
佐奈は最上級の笑顔を浩輔に見せたが、
浩輔は遠くまで続いていく青い空を見ていた。
ガーデンに風が吹き、浩輔の顔に、
「代金120万円」と書かれた紙が張り付いた。
「お・・・俺の・・・へそくりが・・・あぁぁ。」
「ふん!か弱い女の子を、しかもよりによって新妻を泣かせて、
しかも怒鳴ってタダで済むはずがないでしょ。」
「・・・うぅぅぅ。」
浩輔はうるうるで泣くことはさすがに出来なかったので、
低い声でうめいた。
しかし、目の前にいる鬼には通用しなかった。
どうやってへそくりを見つけたのだろうか。
「ぉぃぉぃ、どうやって冷蔵庫のへそくり見つけたんだよ。」
佐奈はさらににたにたとしていった。
「今浩輔が教えてくれたよ。ホントにへそくりしてたんだ~♪」
浩輔は呆然として、逃げるようにガーデンへと向かった。
そして、そこで彼はチャオといる5人の人間に、
さっきよりも疲れてしまうことになるのだった。
続く。