-残念だったな、俺-
うわっと!危ない危ない・・・
どうやら敵の攻撃手段は“鉾”。今も、空中に避けて身動き取れないときに、素早く攻められた。
ビギがいなかったらアウトだったな・・・
戦闘技術は中の上ってところか?スピードを上げて、攻め込んでくる・・・から、そこを狙うんだ。
小武海とスラン、俺とビギの四対一。勝てるぞこの作戦なら・・・名づけて!!“不意打ち”!(作戦じゃあないだろう・・)
Night of M-A-S-K Sean,9 「卑怯と呼ばないで」
小武海 「ようし!月見里!なんかいい方法は思いついたか!」
早速来たな・・・待ってたよ、その質問。俺はあらかじめ用意していた応えを出す。いくぜ!
ビリード 「何か企んでるな・・・ま、水の泡になるのがオチだ。これだけ間合いが開いていては、相手も手を出せまい。」
屋根の上で(迷惑だー!帰れー!)風に服をなみかせながら、ビリードは自分に言い聞かせた。
先に手を出したのは、スラ。自慢の足で屋根の上まで飛びあがり、ビリードに向けて、右腕を振りかぶった。
もちろん、ビリードは鉾で防ごうとする。そこが狙いだ。
スラ 「フェインティングだよ、下級指導者。」
右手から発された橙色の球体が、ビリードの手足に付着し、爆風を散らす。
空中に吹き飛ばされることで、反動を最小限に抑える筈―小武海、出番だ!
小武海 「へっへい!待ってたッスよ!」
ビリード 「それはよかった。待っててくれて。」
しまった。先読みされた。―なんてね。
予想通り、ビリードは空中に「壁」を作って、小武海との間を塞いだ。
だけど、小武海の攻撃はその「壁」を貫く。いや、避ける?
目に見える―風。色で表せと言われれば“透明”。形で表せと言われれば“水”。
流れるような透明の水が、ビリードを包み込んで、くもの巣みたいに、空中へと押さえつける。
鉾は地面に落ちて、スピード作戦は使えない―とどめだ、ビギ。
ビギ 「天等烈火!」
・・・ウソ・・・だろう?
・・・マジ・・・かよ?
薄い桃色が、黒い色に変わっていく・・・術の“失敗”じゃない。影響だ。
・・・何をしたんだ?
ビリード 「下級指導者といったが・・・これが下級指導者の実力だ。」
くもの巣の風までも、黒く染まる。ビリードの顔も、黒くなり、くもの巣に同化した黒い物体・・・のようだ。
月見里 「面倒なことになったなぁ・・・」
“助けて・・・!!”
・・・え?誰か何か言ったか?
いや、違う。俺は即答した。この感覚は以前、エベレードに入った直後に、勉強の出来ないグループ(不良だったんだな。)から暴行を受けていた時。
頭の中で、“やめて”と声がして、・・・それから・・・映像が流れた。
豪雨と暴風の中―血だらけの少年にすがるようにして立ち尽くす、少女の姿―
ビギ 「焉!」
その声で、俺は現実世界に戻される。「くもの巣」から伸びてきた鋭い【黒い鉾】で、俺は危うく突き刺さるところだった。
小武海 「何だ、あれは?書物の中にあった、伝説の生物、「龍」?」
スラ 「【剣龍】だよ。まさか、過去の遺物を生み出す技術を、作ったとはね・・・僕も驚いたよ。」
へえ・・・剣龍。覚えてるよ。先生が、「過去に、何度か首都を破壊されかけたことがあります。それは、剣龍と呼ばれる・・・」(ここで俺は睡眠状態に陥る。)
うん。やばそう。
ビリード 「降参しろ。したとしても、逃しはしないが。」
月見里 「ビギ・・・右175度、座軸転移だ。今すぐに!!」
ビギ 「!」
俺の声を、黒い鉾が貫いて、俺らはなんとかさけた。でも、これじゃあ近づけない。
俺の指示を確実に受け取って、ビギが座軸転移を連発する。さすがは自称、世紀末の大天才。早い。
けれど、捉まるのは時間の問題だろ。そうなったらお仕舞い。チャンチャンだ。
ゲームオーバーにはまだ早い。諦めは愚者の結論。ここは俺に任せとけ!
スラ 「硲、突破口を開こう。」
ビギ 「お願いしていいチャオか?」
スラ 「僕はあなたのファンでしたから。“ウォルトゥルス”に入ったのも、あなたを追ってのことです。」
ファン?ウォルトゥルス?なんのこったか?
処で、俺とビギが出会ったのは去年だ。(余裕綽々というイメージを持たせようと思ってね。)
小武海 「任せるぞ、月見里!」
月見里 「任せとけ、小武海!」
ほぼ同時に、声が重なった。いつもの状況なら、「はもるなよ!」「お前だろ!」っていうツッコミが入る。
月見里 「ビギ!剣は!?」
ビリード 「隙があるぞ。」
まずっ―ヒュー、危ない危ない。これで危機になったのは三度目。
次で終わりだろう。仏の顔も三度まで、っていうしね。
スラ 「至極四方に散る頭の炎、地、水、風の神々よ!」
ビギ 「あいつの上空に移動するチャオ!焉!」
字数制限のバカヤロー!