-危機一髪は、御定番?-
ビギ 「焉ぅ・・・こんな高く飛ぶと、座軸指定に困るチャオ!」
さいですか。・・・俺は無関心に頷いた。というか何言ったか聞こえなかった。
座軸指定。何度も言うが俺は目立つのが大嫌いだ。なので、仕事を終えたらすぐ姿をくらます。
その時につかうのが、ビギの術。といっても、剣と魔法の世界だとしたら(ではないが)すぐばれるな・・・正体。
ビギの術は精巧で、自称「世紀末の大天才が使うに相応しい術。だから天術」とかふざけたことを言っている。
姿をくらますのは簡単だ。瞬間移動すればいい。
・・・え?そんな事出来るのか?
失敗したことはないぞ。例え今みたいな状況でも。
Night of M-A-S-K Sean,3 「どうすりゃいいか、この状況。」
世紀末の大天才が使用する瞬間移動。術名は・・・忘れた。つーかどうでもいい。
それで、俺たちは医務室へ移動した。
月見里 「ふぅ。今回も手に汗握る大格闘だった!」
ビギ 「全く!どうするチャオか!医務室に先生がいたら大変チャオよ!」
月見里 「座軸設定したのはお前じゃねぇか。」
座軸設定。瞬間移動するには、まず、「移動する物の範囲を指定」して、その「移動する物」の体積以上の場所を指定する。
それが座軸設定。
今回の場合は、校庭の上空―俺の周囲の一範囲が「移動する物の範囲指定。」医務室が「移動する物の体積以上の場所。」となる。
センスのないランキング第一位を記録する服をビギに渡すと、俺は早々にバッグへ(ビギを)しまい、教室へダッシュ。
「すっげー!見たか?」
「ありゃ人技じゃねーよな。」
休み時間中の教室では、大盛り上がり。こっそりとビギが、「正体が焉だと分かったら、人気は格段落ちチャオね。」と指摘する。
にやりとにやつきながらも、一人でにやついてるのも気色悪いので、無理矢理顔を仏頂面に戻す。
その時―(俺にとって)驚きべき事態が起こった。
栃野 「あの・・・月見里君?えっと・・・どこにいってたの?」
ミスター俺、大ピンチ。つーかそんなことを俺に聞くな。正体・・・ばれてないよね?
とりあえず俺はそっちの確認をとることにする。
月見里 「ど・・・どど、どうして?」
栃野 「?・・・だって、月見里君が授業に出ないなんて、珍しいし・・・」
うん。ばれてない。これでも一応、成績は良い方だ。
右腕の近くから「色ボケ・・・」という声が聞こえたので、機械の音量をゼロにする。
月見里 「い、いぃむしつにイッテマシタ。」
駄目だ。棒読みだ。落ち着け・・・俺。
栃野 「そっか・・・ところで、漆黒仮面さん、見た?」
・・・俺なんだが。鏡でも持ってこないと見れないッス。でも、そんなことを考えてると彼女に迷惑がかかるしああもうどうしたらいいのかぜんぜん分からなくて仕方なく適当に応えておけば何とか鳴ると思うし・・・
月見里 「うーん・・・カーテンが閉まってたし・・・みなかったよ。」
今回は大丈夫か?
栃野 「お姉ちゃんがね、漆黒仮面さんと電話で話してるの聞いてたんだけど・・・」
月見里 「・・・?」
分からない。なんでそれを俺に話す必要があるんだ?もしかしてばれた?いやまさか・・・ね。
俺の思考回路は段々と、元の形に戻ってくる。いや、明らかに動揺しているのは見え見えだ。
栃野 「月見里君は・・・やっぱいいや。じゃあねっ!」
そういうと、栃野は俺に背を向けて、席に戻ってしまった。
今の俺の顔、にやついていなかっただろうか・・・確認を取るべく、機械の音量を上げる。
ビギ 「分かるわけないチャオ。僕はバッグの中で寝てるチャオ。」
打って変わって、場所は放課後の下校道。家の(といっても苦学生なので、ボロアパート)手紙受けを開ける。・・・と。
一枚の「招待状」と書かれた紙が、はらりと落ちた。俺の耳には、大きな崩れる音が。
ビギがバッグから飛び出し、機械からはアラームのような音がピピピッと鳴る。
ビギ 「妖獣チャオ!」
月見里 「位置は!?」
紙を拾って、家の中に入り込んだ後、俺は急いでパンを一枚、焼いた。
ビギ 「・・・学校・・・チャオね。」
月見里 「・・・またか」
あー、もう!この足はもっと速く走れないのか!?俺は一所懸命に脚を振り、腕を振る。
もうイラついてきたので、周りの目を省みず、術を使ってしまおうかな・・・
俺が使える魔術、聖術は限られてるけど(初心者なんでね)、ビギ曰く威力は高い。
術力を足元に高め―マントを翻し―一気に駆け抜けた―
待ってろよ!みんな!
霧々 「来るな!」
教室にて。居残りしている連中の中に、霧々の姿がある。
相手の姿は・・・黒い狼。大して強そうではないが、クラスに勝てる人がいるとは思えない。
教室には、まだほとんどいた。女子全員と、男子数名。
霧々が後ろの生徒をかばうように、立ちはだかっている。
「うぐるるるる・・・うぉおおおおおん!」
叫び声が響いたところで、続きへ!(つまりは字数制限に引っかかったんだな。)