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次の日、メグミはアオバといっしょに町に買い物に来ました。
昨日までは、なんとなく避けていたクリスマスムードの真ん中は、でも、やっぱり気持ちのいい所でした。
アオバといっしょにクリスマスの飾りを選ぶのは、恋人・・・今はいないのですけども・・・と選ぶのとは、また違った楽しさがありました。

素敵なガラスの飾りを見て、メグミは思わずアオバのポヨと見比べてしまいました。
アオバは、小さな宝箱の飾りには、本当にプレゼントが入っているように思いました。
天使の飾りにある羽は、アオバについている羽にそっくりでした。

他にも、リボンや、トナカイ、長靴など、色々な飾りがありました。
メグミは、その中から、いくつか気に入ったものを選びました。

アオバが選んだのは、クリスマスツリーのてっぺんにつけるお星さまの飾りでした。
『スター(星)』と書かれたコーナーの中でも、一番大きなお星さまが、特に気に入ったみたいです。
「そんな大きなお星さまは、うちのツリーには合わないよ」というメグミの言葉にも聞く耳を持ちません。
結局、どうしても欲しそうなアオバに負けて、メグミは大きなお星さまを買うことになってしまいました。

部屋に帰ると、いよいよクリスマスツリーの飾りつけです。
ふたりで選らんだ飾りを、ふたりでつけるのは、なんだかとっても嬉しいことでした。

きらきら輝くライトを飾りつけた時は、他の飾りをつける前に思わず点灯させてみたりして、なかなか飾りつけが進まなかったりしましたけど、そんな時間も大切に思えました。

トナカイの飾りも、リボンの飾りもつけました。
ガラスの飾りも、天使の飾りも光り輝いています。

あとは、アオバが大事に持っている、大きなお星さまの飾りをつければ完成です。
アオバは、ちょっと迷った素振りをしましたが、メグミにだっこしてもらって、ツリーのてっぺんにお星さまを飾りつけました。

てっぺんの大きなお星さまが大きすぎて、ちょっぴり変なクリスマスツリーになってしまいましたけど、ふたりの気持ちのこもった素敵なクリスマスツリーができあがりました。

「アオバのおかげで、今年は楽しいクリスマスになるわね」
メグミが嬉しそうに話しています。
それを聞いたアオバは、ちょっとの間だけ暗い顔をしました。
でも、すぐに、いつもの表情に戻ると、嬉しそうにクリスマスツリーを見ました。
メグミも、そんなアオバを見て、嬉しくなりました。

やっぱり、クリスマスツリーは、みんなを楽しくしてくれます。

そして、何日かが過ぎて、いよいよクリスマスが間近になったある日のことでした。

アオバが、朝からずっと窓の外を見続けていました。
メグミは、最初はいっしょに眺めていたのですが、そのうちに心配になってきました。

「どうしたの、アオバ?」
やさしいメグミの声を聞いたアオバは、なぜか涙を流したのです。

アオバは、メグミといっしょにいた何日かの間、本当に幸せだと感じていました。
でも、その幸せな暮らしを、ずっと続けてはいけないと思ったのです。

メグミを、ご主人さまと同じくらい好きになっていました。
でも、このままメグミといっしょにいたら、ご主人さまが迎えに来てくれた時どうしていいか分からなくなってしまいそうなのです。
今なら、まだ、メグミのそばを離れることができそうです。

「必ず迎えに来るからね」

最後に聞いたご主人さまの声を、アオバは今ではっきりと思い出すことができます。
だから、アオバはメグミの元を去る決意をしました。

そして、同じような境遇の友達のいる森に帰って、ご主人さまが迎えに来てくれるのを待ち続けるのです。
その森でも、みんなでクリスマスツリーを飾りつけることにしていました。

今頃、みんなで、色々な飾りを用意しているはずです。
アオバも、町に来る前に森の中で、いくつかの飾りを見つけてきました。
でも、いくら探しても、本当に欲しい飾りはありませんでした。
だから、思い切って森を離れて、この町まで来たのでした。



つづく

このページについて
掲載号
週刊チャオ聖誕祭記念特別号
ページ番号
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この作品について
タイトル
12月の迷子
作者
懐仲時計
初回掲載
週刊チャオ聖誕祭記念特別号