EX-A
★ NGシーン集
没にしたシーンの中で、それなりに面白そうなものをピックアップ。
・04-A
ふうりんは急いでいました。
自宅から編集部への道のりを、全力疾走で向かいます。
まさか明日がエイプリルフールだとは・・・ふうりんはうっかり失念していたのです。
出かける直前、ふうりんは千晶にパンを押しつけられていました。
「なにこれ・・・?」
右手のパンを見て不思議がるふうりんに、千晶は説明します。
「晩ご飯食べてなかったでしょ。とりあえず、食べときな。」
そんなわけで、ふうりんは口にパンをくわえつつ、公園の横の道を走り抜けます。
その先のT字路から通りへ。
日中は往来の激しいそこも、この深夜には猫の子一匹見あたりません。
通りを奥まで行って突き当たりで、右に曲がろうとしたふうりんに、思わぬ何かがぶつかりました。
ばたんきゅう。ぶつかった何かに倒されて、道に転がるふうりん。
一瞬何が起こったのか分からないまま、ころころと道の脇に倒れ込みました。
「痛たたた・・・」
何とか体を起こしてみると、目の前には派手に転がった自転車。
そして、ふうりんと同じように、痛そうにしながら起き上がってくるオモチャオが一人。
すぐにふうりんは、何が起こったのかを把握しました。
「だ、大丈夫ですか!?」
「だいじょぶだああああ・・・」
そう言いながらも、ちょっと挙動のおかしなオモチャオです。
ふうりんは、そのオモチャオが起き上がるのを手伝いながら、妙に心に引っかかる物を感じていました。
「・・・もしかして、以前どこかでお会いしたことが・・・」
「ん?」
きょとんとするオモチャオ。
その誠実そうな顔に見つめられて、ふうりんは思わずどきりとしてしまいました。
心臓の鼓動が早まっていくのが、自分でも分かります。
「んじゃ、ボクは急ぐから、さよなら!!!!」
ふうりんがぼうっとしている間にも、そのオモチャオは自転車にまたがって、もうその場を去ろうとしていました。
「あっ、待って!」
ふうりんの言葉が、届いたのか届かなかったのか。
そのオモチャオは軽く手を振ると、猛烈な勢いで自転車をこぎ、やがて、見えなくなってしまいました。
「・・・またいつか、会えるかな。」
そんな2人の姿を見ていたのは、側にあったカーブミラーだけでした。
・・・と、いうのは嘘で、ふうりんには何の出会いも起こることなく、普通に編集部に到着しました!
エイプリルフール!
・11-C
「やった・・・?」
爆発の焼け跡から、灰色の煙が漏れてきました。
徐々に晴れる視界。
しかしそこにヒーローチャオの姿はなく、あるのはただ、壁にあいたチャオ一匹が通れそうなぐらいの穴でした。
「しまった!妙に行動が遅いと思ったら、あいつ、壁の向こう側に逃げる準備をしていたのか!」
地団駄を踏むスモーチャオ。
「追いかけないと!」
フェニンの言葉に、ふうりんたちは互いにうなずき合います。
「・・・さて。」
「お約束ですね。」
「詰まりましたね。」
「そんなことを言っていないで、早くなんとかしてくれないのか?」
一番乗りで穴をくぐろうとしたスモーチャオの体が、見事に詰まっておりました。
ふうりんたちは力を合わせ、スモーチャオの体を押し込もうとするのですが、中々動きません。
くくくと、笑いをこらえる声が聞こえました。
穴に詰まったスモーチャオから見えるのは、ふうりん達にとって壁の向こう側。
そう、声の主はウークです。
「とんだ醜態だな。」
スモーチャオは敵を目の前にしながら、苦虫を噛み潰したような顔しかできません。
「Let me do it!」
ふうりんの近くにいたゴキ吉が、不意に言葉を発しました。
内部をきらりと輝かせると、おもむろに呪文を呟きます。
「Physical control.」
すぽんと、スモーチャオが吹っ飛びました。
目の前にいたウークも、当然合わせて吹っ飛びました。
・13-C
「で、どこで情報がリークされたんでしょうね?」
ふうりんに追求され、慌てるチャピル。
「な、何のことでしょう??」
どう考えても、ぼけてかわせる雰囲気ではありませんでした。
「まさか、広報部室のどこかに隠しカメラか盗聴器でも?」
「いやいや、そんなものは仕掛けてないですよ!」
「じゃあ、どうやって・・・」
ふうりんは考え込みましたが、答えは出てきそうにもなく。
「ジッチャンの名にかけて、その方法を自分の口から漏らすことはできません!!」
「立場、逆じゃないですか?」
「すみませんすみません。」
ふうりんはため息を一つついて、立ち上がりました。
「まあ、方法を画策しても仕方がありません。反省してもらえれば、それでいいです。」
「はーい。」
チャピルは頭を下げて、めいっぱい謝罪の気持ちを示しています。
消灯される会議室。
溶けるような暗闇の中からひっそりと、姿を現す生き物が一匹。
それは一度にゃあと鳴くと、軽く跳躍して去っていきました。
夜の編集部での出来事です。
・13-C
【チャピル】「・・・というストーリーはどうでしょう?」
【ふうりん】「ねぇよ。」